《国語》 設問別分析
【第1問】「評論文」小林秀雄「鐔」→難
今年度の第1問は、小林秀雄(1902-1983)の「鐔」が出典であり、例年のような硬質の評論文ではなく、随筆的評論であった。注も多く、心情や文学的表現を問う問題も出題されるなど、受験生は戸惑ったと予想される。全体が四つの部分に分かれ、「鐔」にうかがわれる実用性と精神性について考察していく文章であり、問6にもあるように、最初に主旨を表し、残りの三つの部分で具体的な話題を提示していく構成になっている。問1の漢字は例年並みのレベル。問2は本文に根拠が薄く、やや難。また、問4や問5は文学的表現や随筆的な心情を問う問題であり、戸惑った人も多かったのではないか。問6は一昨年の形式に戻って「表現と構成」を問う2問に枝分かれした。
【第2問】「小説文」牧野信一「地球儀」→やや難
牧野信一(1896-1936)の小説「地球儀」の全文が出典。牧野信一は第1問の小林秀雄とも交流があった作家で、幻想的な作品を多く書いた。今回の作品は、いわゆる「私小説」であり、父や母に対する「私」のアンビバレントな感情を描いたもの。センター小説としては標準的な内容であるが、主人公のおかれた立場を理解し、心情を的確にとらえるのはやや難しい文章であった。分量的には昨年よりも増加した。問1の語句は辞書的な意味が正解であり、標準的。問3〜5の設問は、本文に直接解答の根拠があるというよりは、選択肢を読み、消去法で解いていかなければ正解できない問題であり、やや難。問6の文章の表現に関する設問も、二つとも正解するのは容易ではなかったはずだ。
【第3問】「古文」『松陰中納言物語』→やや難
本文量は昨年とほぼ同じだが、複数の人物が登場する物語で、心中会話に「」が付いていないこともあり、正しく主語を判断して読み通すことは簡単ではない。問1は単語の知識とともに文脈判断も必要。問2は基本的な識別問題。問3は最終段落にある母親の喜びを踏まえる。問4は直後の表現を踏まえる。問5はA「あひみての後」・B「思ほえず」がポイント。問6は本文との照合を精緻に行ってしぼる。問5・6は選択肢も長く、解くのが大変だろう。
【第4問】「漢文」張耒『張耒集』→昨年並み
問題文は昨年度よりやや減少しているが、198字はほぼ例年並み。随想的な文章で、趣旨がつかみにくかったかもしれない。問1は2009〜2012年度の意味の問題、その前の2004〜2008年度の漢字の読みの問題にかわって、熟語の問題になった。返り点と書き下し文、書き下し文と解釈と組み合わせ問題が2つになり、マーク数は9と変わらないものの、問が8つになり、随想的な内容のせいもあろうが、例年より心情説明の問題が多かった。