《倫理、政治・経済》 設問別分析
【第1問】現代社会分野、青年期分野
現代日本の家族、自我の形成、グラフ読解問題、アーレント、ウィトゲンシュタインについて出題され、リード文・小設問ともに「倫理」単独科目の第1問と共通であった。青年期の心理については問2の1問にとどまった。
【第2問】源流思想分野、日本思想分野
古事記の世界観、ブッダの教え、末法思想、孔子と孟子、江戸時代の実証的学問、西田幾多郎について出題のうえ、本文の趣旨についての読解問題が出題された。リード文および小設問のベースは「倫理」単独科目の第3問(日本思想)であり、7題中5題までが「倫理」第3問(日本思想)と共通問題で、2題が「倫理」第2問(源流思想)と共通問題であった。仏教と儒教という東洋の源流思想については日本への影響という角度から学習することを求めていることがうかがえる。
【第3問】源流思想分野、西洋近代思想分野
時代を超えた批判の営み、各宗教における聖典、ベーコンのイドラ、フランス啓蒙思想、カントの批判哲学、ハイデッガーの思想について出題のうえ、本文の趣旨についての読解問題が出題された。リード文および小設問のベースは「倫理」単独科目の第4問(西洋近代思想)であり、問3以下の5題は「倫理」第4問(西洋近代思想)と共通問題だったが、問1と問2だけは「倫理、政治・経済」オリジナル問題であった。問1では時代を超えた批判の営みとしてパルメニデス、ソフィスト、イエス、モンテーニュについて問われ、問2では各宗教における聖典としてイスラーム教、キリスト教、ユダヤ教、バラモン教が取り扱われている。
【第4問】国際経済分野
1970年代以降の世界経済の動向、1980年代以降の日本の行政改革、各国の政治体制、各国の貧困率、租税と国債、国際平和維持の方法からの出題。リード文は「倫理、政治・経済」オリジナルだが、小設問はいずれも「政治・経済」単独科目と共通問題であった。EMS(欧州通貨制度)やSDR(特別引出権)が言及された問1はやや難しかったかもしれない。各国の政治体制についての問3ではカナダとドイツの政治体制が正解となっており、これも難しい。
【第5問】国際政治分野、国内政治分野
ルソーによる間接民主制批判、一票の格差、情報公開制度、各国のデモ行動、日本の参政権、国会、日本の人権保障についての出題。リード文、小設問いずれも「政治・経済」単独科目の第3問と完全に共通であった。問4ではミャンマーの民主化および2011年のエジプトならびにアメリカのデモ行動について問われたが、これはきわめて時事的な事柄であり、教科書の知識というよりは新聞やニュースについて注意を払う習慣のない受験生には難しかったであろう。
【第6問】経済分野
貨幣における価値尺度機能、企業と市場、消費者の四つの権利、市場メカニズム、経済発展の時代別特徴、経済学史、現代日本経済の特徴についての出題。リード文、小設問いずれも「政治・経済」単独科目の第4問と完全に共通であった。貨幣の価値尺度機能を示す具体例を選択させる問1や、消費者の四つの権利を具体例と結び付けさせる問3など、知識事項を暗記しているだけでなく、内容を十分に理解しているかどうかが問われる設問が目についた。表層的な暗記学習しかしていない受験生にとっては難しく感じたかもしれないが、良問揃いであったと言える。