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《日本史B》 設問別分析
第1問 東アジア情勢と国内外の交通・通信(手紙)
第1問は会話文形式が続いていたが、2016年度は大学生の日記、2017年度は大学生の手紙というかたちで問題文が構成された。
古代から現代までと出題範囲が広いのは例年通りであるが、(1)空欄補充問題では、問題文をよく読まないと判断できない問題が出題されたこと(→問1)、(2)空欄にあてはまる地名を地図上で指摘する問題が出題されたこと(→問4)、(3)図版を用いた年代整序問題が出題されたこと(→問5)、が特筆点としてあげられる。今年度も例年通り、第1問特有の、複数の時代にまたがる設問(→問2・問6)が出題された。こうした設問は、用語の時代を判別する感覚を養っておかなければ対応しづらいので、注意が必要である。
問2 空欄補充問題だが、「平戸」・「長崎」の判断は、やや迷うだろう。「三別抄」・「按司」の判断は、前近代における日本史を、東アジア情勢全体のなかでとらえているかが問われている。
問6 選択肢4に関連する過去問として、2000年度第5問・問4の鉄道に関する出題があった。この問でも「東京(新橋)・横浜間の官営鉄道」を含む選択肢がみられた。センター試験対策として、過去問を活用した学習は有効である。
第2問 古代の思想・信仰と政治・社会との関係
今年度は史料や図版を用いた設問がなかったため、解答時間に余裕が生じたと思われる。昨年度の第2問では、史料の判断を求める問題が出題された。また、2015年度までは、鹿子木荘の史料(2015年度)・「魏志」倭人伝(2014年度)・『宋書』倭国伝(2013年度)というように基本史料の引用が定番となっていた。出題内容については、「平安時代の藤原氏(昨年度の問3)」と「8世紀から9世紀にかけての政治抗争(今年度の問4)」、「源信、『往生要集』(昨年度の問5)」と「末法思想、空也、阿弥陀堂(今年度の問5)」など、昨年度と類似、もしくは関連性をもつ問題が目立った。
問3 a「陵戸」は頻出の歴史用語とはいえないが、bとの比較で正誤を判断したい。
c「亡命貴族」は見慣れないかもしれないが、7世紀後半には白村江の戦いがあったことを想起したい。
問6 X「大宰府管内に公営田がされ」た時期が「9世紀前半」かどうかは判断が難しい。しかし、昨年度の問6は大宰府に関する年代整序問題だったため、周辺知識を広げる努力をしてきた受験生は報われたはずである。
第3問 中世の政治・社会・文化
2016年度までは3年連続して近世初期までを範囲とする問題が続いていたが、今年度は中世のみの出題範囲に戻った。
問2 設問文や史料・注をよく読まなければ正答となる選択肢を選べない問題。しかし、承久の乱後、幕府は戦功のあった武士にどのような措置をとったのかを理解していると、正解は容易になったと思われる。
問3 詳細な年代の暗記を求めている設問ではなく、Iは鎌倉幕府が派遣したこと、IIは幕府滅亡後の建武の新政において設けられたこと、IIIは建武の新政のあとに生じた南北朝の動乱期に著されたこと、などを理解していれば判断は容易である。
第4問 近世の文化・政治・社会
Aは「近松門左衛門」、Bは「1787年」に焦点をあてた問題文だった。第4問における初見史料を用いた出題は、定番となりつつある。問2は社会経済分野からの出題であり、分野別の学習に意識的に取り組んでいたかどうかで、得点差が開く問題だったと思われる。
問3 Xは教科書に掲載されている頻出絵画。第3回センター試験本番レベル模試でも出題していたため、受験した人は有利だったと思われる。
Yも著名な工芸品といってよいが、「野々村仁清」が陶工であることを認識していれば、消去法でも判断できるだろう。
問5 冷静に史料を読めば、容易に判断できる。初見史料は注が大きなヒントになることを知っておこう。昨年度の読解タイプの史料問題は、「田沼意次=賄賂政治」という先入観で選択すると失点する問題だったが、時代小説『鬼平犯科帳』などで知られているとはいえ、「長谷川平蔵」は教科書に登場する人物ではないため、先入観なく読み進めることができただろう。
第5問 幕末から明治期の大坂(大阪)
日本史A(第2問)との共通問題。かつては、2013年度の「明治期の特許制度」・2014年度の「明治期の租税制度」のように、テーマ的に難易度の高いものが目立ったが、2015年度の「明治期の立法機関」、2016年度の「明治期の地方制度」に続き、取り組みやすいテーマ(大坂(大阪))が取りあげられた。
第5問では、かつてグラフ・表を用いた設問がみられたが、昨年度に続き史料や図版を用いた問題が1問も出題されなかった。もともと設問数が少ない第5問は、取り組みやすかっただろう。
問3 昨年度は「戊辰戦争」に下線が引かれ、関連事項が問われたが、今年度は「大久保利通」に関する設問が出題された。近現代の設問では、設問の対象が「○○世紀」などではなく、著名な人物・内閣・出来事などに下線が引かれ、細かい事項が問われることがある。本問も、よく読まなければミスをしやすい選択肢が並んでいた。
問4 政商や実業家に関する問題。やや細かい知識を問う設問となっているが、現代の日本経済を牽引する企業集団の名称も並んでおり、日常から現代的関心をもって学習に取り組んでいれば、正答を選択できただろう。
第6問 近現代の公園
日本史A(第4問)との共通問題。
2014年度では「漫画家手塚治虫」、2015年度では「作家林芙美子」と、人物を取りあげた問題が定番となっていたが、2016年度では「オリンピック」、2017年度では「近現代の公園」が取りあげられた。テーマ史としては定番とはいえないが、日常生活の中にも「歴史」があることを認識させようとする意図が、出題者にあったとも考えられる。
問2 戦前・戦後に大きくわけて考察したい。新聞記事は、昨年度の「川端康成」「築地小劇場」を図版から見つけ出さなければならない形式と異なり、いずれも記事中のキーワードがタイトルとなっているため、苦労することはなかっただろう。
問4 「鉄鉱石」と石炭が区別できているかを問う問題でもあるので、やや細かい。しかし、2011年度の第5問・問3では「燃料の石炭は、九州地方の筑豊で採掘されたものを用いた」が出題されており、本問はその類題となるため、過去問演習を徹底して行っている受験生であれば、容易に正答できただろう。
問5 選択肢3の「北村透谷」は、2013年度第6問・問5でも取りあげられている。
問6 Y「農業協同組合(農協)」はやや細かい知識であるが、TPPなどに関連して、報道などで耳にすることがあっただろう。多くの教科書に掲載されているわけではないが、時事的要素の強い選択肢となっている。また、やや古い問題であるが、「農業協同組合(農協)」を選択肢に含む問題は出題されたことがある(1993年度第5問・問4)。
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