カーデザイナー
パーツ・素材・色にこだわり抜き、新しい車のカタチを生み出す仕事
乗り物に関する仕事
INTERVIEW
現役のカーデザイナーに聞きました

本田技術研究所四輪R&Dセンターデザイン室 室長
木越 由和さん
PROFILE
きごし よしかず
芸術学部工業デザイン科卒業
プラモデルや模型などに熱中して子ども時代を過ごした木越さんは、アメリカの現地法人でも開発に携わった生粋のカーデザイナー。
現在は開発チームをまとめる木越さんに、カーデザイナーの仕事についてうかがいました。
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お仕事の内容は?
当社の開発は、大きく13の工程に分かれています。市場調査やコンセプトの模索から始まり、パッケージデザイン・アイディアスケッチ・レンダリング・モデル作成・インターフェイス(表示・操作系)デザイン……その工程1つひとつに職人気質の専門家集団が携わり、ときには口論し、ときには笑い合いながら作業を進めています。こうした開発チームが開発車両の数だけあるのですが、私はデザイン室長としてすべてのチームを見渡し、スケジュールや進捗の管理、様々な取引の決済などに携わっています。
もちろん、それだけではありません。メンバーが困っているとき、悩んでいるときにはアドバイザーの役目も担いますし、交渉役として立ち回るケースもあります。
もともと私はデザイナーで、以前はせっせと自動車のデザインをしていました。しかしチームリーダーという立場ですべての工程を経験してみると、どうしても、その道のプロに任せなければ不可能な部分があると実感します。原寸大の粘土模型であれば、粘土の削り方1つ、力の入れ方1つで形状が変わってしまいますし、実車製造向けに三次元データを制作する際は、何百とあるパーツを1000分の2ミリ単位の数字で調整しなくてはなりません。まさに職人でなければ不可能です。
リーダーとなって全工程に携わると、そうした個々の工程に直接手出しはできなくなりますが、開発車両に携わるメンバーの苦労や面白さがわかり、どの車も我が子のようにいとおしく感じることができます。
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このお仕事の醍醐味は?
自分の生み出したものが世に出ること、それが最初に感じる嬉しさです。1台の車にかかる開発期間は数年にわたるため、その間の苦労が結実する瞬間なのです。
ただ、本当の嬉しさは、その後数カ月から1年を経て訪れます。街で目の前をスッと走り去る車や何気なく停車している車の中に、ふと自分のデザインした車を見つけたときには、他人の車であるにもかかわらず、ほほ笑みながらしげしげと見つめてしまいます。それは「選んでくれた」という嬉しさを感じる瞬間であり、努力や苦労が報われる瞬間なんです。
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カーデザイナーを目指す人にアドバイス
発想力とデッサン力。この2つが車をデザインするうえで求められる能力です。まずは芸術学科・工業デザイン学科などを進路の軸としながら、自分がデザインのどの工程を中心に担当したいのか明確にしておくことが重要です。原寸大の粘土模型の作製であれば造形や彫刻を、外装・内装のデザインであればデッサンを、色にこだわりたければカラーリングを学んでください。
英語力に関しては、海外の現地法人や外国人スタッフとのやり取りが必要になるため、最低でもTOEICR600点以上を目指してください。
ある日のカーデザイナーさん
8:30
出社。メール・スケジュール確認
9:00
海外のデザインスタジオとテレビミーティング
11:00
新商品企画の評価会に出席。企画・コンセプトを検討
12:00
昼食
14:00
先行モデルのデザインチェック
15:00
資料作成後、海外のデザインスタジオと電話ミーティング
16:00
量産開発デザインのチェック。各チームからの報告・新商品の企画・デザインをチェック
18:30
デザイナーらと夕食後、帰宅
