日本史A
全体概観

外交・民衆からアプローチした問題が目立つ。全体的に易化傾向。 


大問数 減少 | 変化なし | 増加 
設問数 減少 | 変化なし | 増加 
マーク数 減少 | 変化なし | 増加 
難易度 易化 | やや易化 | 昨年並み | やや難化 | 難化 

大問数6題、設問数34問と昨年と同様の分量であり、写真・図版・グラフといった視覚教材を使用したセンター試験特有のバリエーションに富んだ問題が今年もみられた。出題範囲は例年通り近世から近代までであったが、今年は近代日本が経験した戦争を中心とした対外関係や各時代に生きる民衆からアプローチした問題が多く、若干の偏りを感じるものの、政治・経済・文化と広範囲にわたって出題された。
難易度は昨年と比較し易化した。とくに例年受験生が苦戦するケースが目立つ複数の正文を組み合わせる正誤問題や、6択が恒例となった時代配列問題などでも、容易に正答を導き出せるものが大半を占めただけに取りこぼしのないようにしたい。
まさに基本に忠実であれば高得点の期待できる出題であった。

 

大問

出題分野

設問数

マーク数

配点

2010

第1問

歴史資料(会話文)

3

3

8

第2問

幕末・明治前期の政治・社会

6

6

18

第3問

明治前期の産業・経済

4

4

12

第4問

大正・昭和の政治・社会

5

5

15

第5問

渋沢栄一・敬三

8

8

23

第6問

近現代の政治・外交・社会

8

8

24

2009

第1問

歴史資料

3

3

8

第2問

幕末・明治期の文化

6

6

18

第3問

明治時代の外交

5

5

15

第4問

近代の政治・社会

4

4

12

第5問

幣原喜重郎

8

8

23

第6問

近代の政治・社会

8

8

24

2008

第1問

交通・通信

3

3

6

第2問

近世から近代の政治・外交

8

8

23

第3問

近現代の社会・文化

8

8

22

第4問

明治前期の政治

4

4

12

第5問

尾崎行雄

8

8

23

第6問

近現代の文化・政治

5

5

14

2007

第1問

地形図の変化

3

3

6

第2問

江戸後期から明治維新

8

8

23

第3問

近現代の政治・経済・社会

8

8

22

第4問

近代の政治

4

4

12

第5問

近現代の社会

8

8

23

第6問

近現代の娯楽と政治

5

5

14

過去の平均点の推移
2009 2008 2007 2006 2005 2004 2003 2002 2001 2000
46.51点 55.95点 51.53点 57.55点 54.77点 45.23点 42.88点 43.14点 46.46点 43.90点
1999 1998 1997 1996 1995 1994 1993 1992 1991 1990
47.85点 47.26点 48.62点 59.99点 57.37点 70.08点 73.37点 63.97点 66.22点 73.93点

設問別分析
【第1問】 歴史資料(会話文)
昨年同様、歴史資料を題材とした会話文から外交・民衆・文化史と、さまざまなテーマに関する基本的な問題が出題された。東京駅の話題などは時事的な事柄であることから、常に社会全般に関心をもつ姿勢も大切になる。問3などは受験生が苦手とする、民衆からアプロ―チした文化史であったが、「時期」をしっかり吟味すれば正解は容易に導き出せるはずだ。

【第2問】 幕末・明治前期の政治・社会
A・Bともに幕末期から明治前期にかけての政治・社会を中心に、オーソドックスな問題が出題された。パターン化された問題が多かっただけに、とりこぼしのないように高得点を狙っていきたい。あえて言うならば問3や問6のような思想・宗教をテーマとしたジャンルは、受験生の間で最も得点差がつきやすいので、ここで確実に得点することが大切だ。近年、近代の思想・宗教も出題の頻度が増してきただけに来年度も注視していくべきであろう。問5の時代配列問題は各選択肢の出来事の間隔が比較的広かったが、これは他の設問にある時代配列問題にも総じて言えることであり、年号を暗記せずとも「時代の流れ」を押さえておけば容易に正解を導き出せる。

【第3問】 明治前期の産業・経済
明治前期の産業・経済に関する問題。テーマでまとめ、縦の流れを意識しながら学習を進めていた受験生にとっては高得点が期待できた問題であっただろう。問1から問4まで、全てが基本的な問題であった。しかしながら、問1の空欄補充問題の紙幣の種類やインフレ・デフレといった経済用語を問う問題は、経済史を深くまで理解する必要がある。経済・産業に関する問題はそれがいかに発達していったかといった、各時代を比較させる傾向が強いが、第3問はその傾向をそのまま表した問題内容であった。

【第4問】 大正・昭和の政治・社会
Aでは第一次世界大戦から昭和前期における政治・外交・社会を、Bでは日中戦争の開始から戦後にかけて広範囲にわたって出題された。問4のように資料が提示される問題では、時代全体を理解する能力ととにもそれをしっかり判読できる力が求められる、センター試験が得意とする問題形式であった。基本的な問題が多かったが、唯一問5は難易度が高い。戦時中から戦後にかけての民衆を題材とした文化史は、受験生にとって穴になる場合が目立つのでなおさら難しく感じたのではないかと思われる。

【第5問】 渋沢栄一・敬三
Aでは「日本近代産業の父」といわれた渋沢栄一、Bでは戦中から戦後の高度経済成長の下で活躍したその孫・渋沢敬三のそれぞれの人物史から、政治・経済・外交・文化などを軸としてさまざまなジャンルが混在した問題が出題された。時代が非常に広範囲にわたっていたため、このなかでひとつでも苦手な範囲があると、高得点はのぞめないだろう。なかでも問2・問5・問8の設問のリード文を吟味するとその傾向を強く垣間見ることができよう。歴史的事象を断片的ではなく、多角的視野から考察する思考力が求められる良問であった。

【第6問】 近現代の政治・外交・社会
日本人の海外渡航・移民に関する問題文から、政治・外交・社会と出題内容が多岐に及んだ。問1から問5までは非常に基本的な問題であっただけに、とりこぼしのないようにしたい。問6はグラフを読み取る問題であったが、「時期」に関してしっかり考察できていれば正答を導きだすことは容易であった。第6問のなかでは問7・問8はやや難易度が高かった。戦時中や戦後の民衆生活について細部にわたった知識を必要としただけに、手ごわい問題であったといえよう。