《倫理、政治・経済》 設問別分析
【第1問】源流思想、日本思想
ソクラテスの問答法、阿弥陀仏の誓願、古代インド思想における真理、古代中国思想、イスラーム教とユダヤ教、日本古代の精神から出題のうえ、本文の趣旨についての読解問題があった。基本的に「倫理」単独科目の源流思想分野(第2問)と共通問題だが、「倫理」単独科目の日本思想分野(第3問)で出題された設問も2題こちらで出題された。倫理特有の本文の趣旨読み取り問題も出題された。
【第2問】西洋近現代思想、現代社会の特質
臓器移植法、デカルト、カント、フッサール、ロック、循環型社会から出題のうえ、本文の趣旨についての読解問題もあった。基本的に「倫理」単独科目の西洋近代思想分野(第4問)と共通問題だが、「倫理」第5問の現代社会分野からも2題出題された。政治・経済の接点に近づけようとする努力が見られる問題が含まれている。問1は臓器移植法についての出題であり、時事問題となっている。問5のロックの所有権についての考え方も私有財産制にかかわり、問6の循環型社会における環境倫理も政治・経済分野に近い倫理分野といえる。
【第3問】青年期の心理、日本思想、生命倫理
自我同一性拡散、性格の分類、吉田松陰、福沢諭吉、クローンや遺伝子技術から出題された。リード文はなく、「倫理」単独科目の第1問、第3問、第5問から設問がピックアップされている。リード文がないため他の大問との不整合感は否めないが、本文の趣旨読み取り問題がない分、受験生の負担は少なくなっている。問5はクローン技術や遺伝子組み換え技術、農作物の問題点についての出題で、時事性のある出題となっている。
【第4問】戦後日本の経済、地方自治、経済学説、国際政治
日本型雇用慣行、地方分権、経済学説、日本の社会保障制度、第二次世界大戦後の国際政治の動向、国際連合からの出題。「倫理、政治・経済」全問を通じて唯一のオリジナルのリード文が使われているが、設問そのものはいずれも「政治・経済」単独科目からピックアップされている。問2は三位一体の改革や機関委任事務の廃止、問4では国民年金(基礎年金)と介護保険が問われている。問5ではオバマ大統領がノーベル平和賞を受賞する理由となった核廃絶演説(プラハ演説)という時事問題が出題された。
【第5問】国際経済、財政、金融
円ユーロの為替レート、地域経済統合、国際収支、バブル経済、財政状況の推移、日本の金融機関、各国の税制からの出題。リード文、小設問ともに「政治・経済」単独科目の第3問とまったく同一であった。問1は2011年の円高を受けて、円高、ユーロ安の進行で日本の輸出企業がいくら損失を被るかを計算させる出題だった。問3は国際収支項目の推移(2007〜2009年)の図表読解が問われた。時事的な知識がなくても解けるが、所得収支(対外投資収益)が拡大している傾向を読み取らせる点で、最近の国際収支動向のポイントが問われている。問5も統計グラフ読解だが、国債依存度の高い年代や赤字国債の発行がゼロとなった1990〜1993年度、国債収入が租税収入を上回ったリーマンショック後の2009年度を知っているかがポイントとなっている。時事対策の重要性がわかる出題である。問7は税収が国民所得に占める割合から日本を選択させる統計、図表読み取り問題であるが、近似した数値があるため、受験生には判定は難しかっただろう。
【第6問】民主政治の原理、日本の人権保障
消極的自由と積極的自由、社会契約説、精神的自由、基本的人権の分類、マイノリティの権利、各国の立法府と行政府との関係、日本の裁判制度からの出題。リード文、小設問ともに「政治・経済」単独科目の第4問とまったく同一であった。人権の種類を権利の性格で分類して当てはめる問1、問4のように、受験生の論理力を問う出題が最近のセンター試験で頻出である。