《化学I》 設問別分析
【第1問】同素体、結合に使われている電子の総数、周期表、濃度計算、1molに含まれる原子数など、酸化物の計算、身のまわりの化学
問1は過去4年間続いている小問集合a・bスタイル。aは同素体の組合せを選び、bは結合に使われている電子の総数が最も多い分子を選ぶ。aは、2つとも同素体であるものを選ぶもので、答えやすい。bは、選択肢の分子が簡単なもので占められていたが、「結合に使われている」という記述を見逃した受験生がいたと思われる。問2は元素の周期表に関する正誤問題。典型元素は金属元素と非金属元素からなり、遷移元素はすべて金属元素であることを正確におさえていないと解答できない。問3は質量パーセント濃度からモル濃度に換算する計算問題。2009年第1問問5の類題ではあるが、こちらの方が難しい。硫酸水溶液1Lについて考えていけば、解きやすい。問4は1molの物質に含まれる指定された原子の数、電子の数、イオンの数の大小を問う問題。アボガドロ定数を用いて複雑に考えてしまった受験生もいたと思われる。問5は酸化物の還元に関する計算問題。2012年も酸化物に関する出題があったが、こちらの方が難しい。問6は身のまわりの化学に関する問題。酸化還元反応を含まないものを選ぶ問題である。選択肢2以外の選択肢は難しいため、選択肢2が酸化還元反応を含まないものと見抜けないと答えにくい。
【第2問】熱化学、酸化剤の判別、実験器具の取扱い、中和熱の計算、鉛蓄電池の充電、電気分解
問1は例年通りの反応熱を求める計算問題。反応熱を求める方法としては、生成熱を利用して解く2012年や2011年と同じパターンであった。ただし、2012年や2011年では求める熱化学方程式が与えられていたが、この問題では熱化学方程式が与えられておらず難しい。問2はQを求めることができる反応熱の組合せを選ぶ問題。問い方が新しく、かつ燃焼熱を利用してQを求めるパターンの出題はセンター試験ではほとんど出題されないため、難しい。問3は酸化剤としてはたらいている物質を探す問題。過去にも似た出題は多いが、数を選択させるため、ア〜エの反応のすべてについて正確に判定しないと答えが出せない。問4は実験器具の取扱いに関する出題。共洗いの操作の有無が答えとなるものであるが、「標線に液面の底が合うように」という表記に、戸惑った受験生がいたのではないか。問5は中和熱の計算問題。用いた水酸化カルシウムが何molの水を作るかに注目せずにミスをした受験生がいたと思われる。問6は鉛蓄電池を充電したときの電解液中の硫酸イオンの質量変化と鉛電極の質量変化を表すグラフを選ぶ問題。反応式は与えられておらず、充電反応であることが難度を上げている。かなり難しい。問7は水酸化ナトリウムの製法(イオン交換膜法)に関する計算問題。陰極で起こる反応式を正確に作り、かつ反応式を読み取って計算する必要があり難しい。
【第3問】無機物質全般
問1は工業的製法に関する正誤問題。フッ化水素の製法を正確におさえていれば、解答できる。選択肢1の「銑鉄に酸素を吹き込み」という正しい記述を誤りの記述と考えた受験生もいたと思われる。問2は14族元素の単体に関する正誤問題。イオン化傾向と沈殿の2つの知識を正確につけていないと答えられない。問3は酸性酸化物と両性酸化物を選ぶ問題。内容としては、過去のセンター試験で多く出題されている内容。出題形式が珍しい。問4は硫黄の化合物に関する正誤問題。「酸化される」、「還元される」という言葉の意味を正確に覚えていないと解答できない。問5は銅に関する正誤問題。沈殿の知識が正確についていないと答えられない。イオン化傾向や電解精錬に関する正確な知識も必要である。問6は沈殿から得られる酸化物の質量を求める計算問題。モル関係を正確につかんだ上のモル計算を必要としているため、難しい。問7は塩素の実験室における製法。aは試薬の組み合わせを選ぶ問題。bは、捕集方式を選ぶ問題。有名な実験ではあるが、本試験では久しぶりの出題なので迷った受験生がいたと思われる。
【第4問】有機化学全般
問1は官能基を答える問題。知識を単純に問う問題で、センター試験としては珍しい出題形式。問2は炭化水素に関する正誤問題。シクロアルケンの一般式に戸惑った受験生が多かったと思われる。問3は2010年と同じ出題形式の正誤問題。内容としては、それほど難しくはなかった。問4はプラスチックに関する正誤問題。プラスチックは、2012年と2011年でほとんど出題されていなかったので、準備不足の受験生も多かったと思われる。付加重合と縮合重合の違いを理解できていれば、解答できる。問5は直鎖のアルカンの沸点を表すグラフを選ぶ問題。分子量が大きくなることで、沸点が高くなることを知っている受験生は多かったと思うが、室温でのアルカンの状態を知っていないと解答できない。やや難しい。問6はエタノールの酸化に関する正誤問題。2006年と実験装置の図がほぼ同じだった。aは、刺激臭をもつ試薬を選ぶ問題で、内容としては中学理科で学ぶ内容であった。bは、この実験でアセトアルデヒドが生成することがわかれば、答えられる。問7はエステル化における計算問題。数値は易しくなっているために計算量は多くないが、式の立て方で困った受験生がいたと思われる。