《日本史B》 設問別分析
第1問 周辺外交史(北海道・沖縄)
過去3年と同様、今年度の第1問も会話文形式の問題であった。「北海道・沖縄」という頻出テーマであったが、しっかりと対策をとっていないと正答を導き出せないやや難度の高い設問であった。また、同時に昨今日本の周辺地域ではさまざまな出来事がおこり、情報として耳にすることが多いことと思う。社会でおこる様々な問題を常に意識することの大切さをあらためて感じた機会となった。地図や史料も出題されており、正しく「読み取る」力が求められている。また、問2や問5などの正誤問題は、やや細かな史実まで把握していないと正答にたどり着かない難易度の高い問題であった。
第2問 原始・古代の政治・宗教・文化
原始・古代の政治・宗教・文化を中心に、外交史や土地制度史も散見され、まさに「総合的な力」が求められている良問ばかりであった。難易度はすべて標準で、難問は皆無であっただけに高得点が期待できる問題といえよう。問2は史料を読み取らせる問題でやや戸惑ったかと思うが、5世紀の社会についてしっかり理解していれば難なく正答を導き出せたはずである。逆にオーソドックスなテーマで占められた問題は1つのミスが大きく響くことが往々にしてある。「基本に忠実」な姿勢がいかに大切かを感じさせる問題であった。
第3問 中世の宗教・文化
中世の宗教・文化を主軸に、政治や外交に派生させた問題であった。中世の宗教は、頻出テーマであるだけに単純ミスによる失点は避けたい問題だ。宗教のほか、芸能・絵画と、その出題テーマは多岐に及んだ。問3は教科書にも掲載されている図版を用い、視覚に訴えつつ、思考力を試す問題であった。個々の選択肢の文章もやや長めの傾向にあり、問6の時代整序問題は宗教史に外交史も加わっていた。センター試験を解く際に絶対不可欠な「多角的な視野」をもつ重要性があらためて浮き彫りとなった。
第4問 近世の政治・経済・社会
江戸幕府の安定期から列強接近にともなう動揺期まで、江戸時代における総合的な問題であった。問2の建築に関する「視覚教材」、問3の政治史に関する「史料」、問4の貨幣史に関する「表」など、出題のバリエーションに富んだ今年度のセンター試験を象徴した問題であった。問1は第1問でもテーマとなった沖縄に関する史実について再度出題された。また、通史学習で得た正しい知識と、史料や表を読み取る力を融合させようとする深い洞察力を試す問題が目立った。いずれにしても深く「考える」力が求められているといえよう。
第5問 明治期の特許制度
「特許制度」といった特殊なテーマを扱った、明治時代の経済・産業史を中心とした問題であった。とくに近代史の経済・産業史は受験生が苦手とするテーマであり、さらに今回は文明開化をテーマとした明治期の文化もからみ合っていたので難しい印象を受けたのではないだろうか。苦戦を強いられ、受験生の解答も分散する傾向が強かったことが予想される。問3や問4はその史実の「時期」を正しく把握することが大前提となっており、なおかつさまざまなテーマが混成している。1つの史実を他のテーマと結びつけるといった立体的・有機的な知的作業がカギを握る問題といえる。
第6問 20世紀日本における軍事と政治・経済・社会とのかかわり
明治時代後期から昭和・戦後、設問の選択肢の文章の内容も含めれば1990年代にまでと広範囲にわたった問題であった。第6問ではこれまで恒例となりつつあった、特定の人物をテーマとした問題の形式はみられなかった。「帝国在郷軍人会」や「華僑・華人」といった受験生にとって見慣れない用語もあり、難しい印象を与える意図を垣間見ることができる。問8では「貿易摩擦」や「PKO協力法」など1980年代〜1990年代の時代を反映した用語もみられた。この傾向は近年のセンター試験で顕著であるだけに、今後も、現在に近い現代史も含めた「空白地帯」のない総合力の高さが求められるだろう。