大学入試センター試験解答速報2012
《日本史B》 設問別分析



第1問 文化財の保護・活用(古代〜近代の社会・文化)

例年通り、第1問は会話文を駆使した問題であった。古代〜近代の社会、文化について広範囲にわたって出題した総合的な問題で、時代をまたがった視野で歴史を考察する能力が求められている。また、多くの受験生が苦手とする社会史・文化史が多く出題されただけに、大きく得点差が生じる可能性が高い。昨年には日本でも世界文化遺産の登録があったので、時事的な話題を意識したといえる。問2の文化に関する正誤問題や、問3の文化財保護、保存に関する時代配列問題はやや難易度が高いものであった。


第2問 古代の政治・社会・文化

古代の総合問題で、史料や表を絡めて出題されたものの、基本問題ばかりで、全体的に易しい印象を受ける。問3、問5はそれぞれ史料、表を正しく読み取らせる問題であったが、史料、表の内容とともに普段の学習で習得した歴史知識を駆使すれば、容易に得点できたはずだ。また、各時代の出来事や歴史用語をしっかり比較できなければ、「易しい」とはいえ確実には得点できない問題ばかりであった。


第3問 中世の政治

中世の政治史を中心に、文化、外交に派生させた基本的な問題で、出題形式も高得点が期待できるオーソドックスなものであった。選択肢の文章も非常に短く、問われている内容もひねりがなくてストレート、といった印象である。問5にある視覚教材も、「銀閣」という受験生なら誰しも目にする馴染み深いものであった。出題内容がパターン化され、難易度も「易」であっただけに、逆に一つのミスが「痛い失点」につながってしまう可能性が高い。「基本」の大切さを再認識させる問題であった。


第4問 近世の政治・社会

江戸時代の「農村」をキーワードに、民衆の行動、農業、身分制度、思想など、出題内容が多岐に及んだ問題。しかも、難易度も大問6問中最も高かったので、苦戦を強いられた受験生が多かったことが予想される。問3の江戸時代の思想に関する時代配列問題や、問4の身分と村社会に関する正誤問題は難しく感じたのではないだろうか。問5に「質流れ」というやや難解な用語も垣間見えることから、全体的に難しい印象を受験生に与える問題であった。


第5問 明治期における日本の領土

昨年は第5問で「人物史」が出題されたが、今年度は2010年度以前の形式に戻った。昨今の尖閣諸島や竹島における問題、また北方領土問題を意識してか、領土に関する歴史が出題された。領土に関する事象には、やはり「地図」が不可欠なだけに、普段から図版を使用した学習が求められる。問2はやや細かな知識が求められていたが、その他は基本的な内容であったといえよう。また、問3のグラフを使用した問題はこれまでの形式通り、歴史事象の時期を把握していなければ正解を導けないものであった。


第6問 市川房枝

第6問に「人物史」が出題されていた2010年度以前の形式に戻った。近代女性史のなかでも頻出である「市川房枝」が生きた時代から、明治、大正、昭和、戦後まで、広範囲にわたり出題されていた。問題文A、B、Cは女性史に関する内容であったが、個々の設問で純粋な女性史に関するものは問1のみであった。政治、外交、経済、文化と出題内容も多岐に及んでいただけに、穴のない総合力の高さが求められている。戦後史は1970年代に及び、今後はそれ以降の「超」近代史の出題も予想される。




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