大学入試センター試験

《物理基礎》 設問別分析



【第1問】小問集合
第1問は、昨年同様に物理基礎のさまざまな分野を扱った小問集合であった。昨年同様、計算だけでなく、現象に関する正確な知識を問う問題が出題された。
問1は、並列の合成ばねを背景にした出題だが、合成ばね定数に関する知識などなくても、水平な棒とそれに糸で取り付けた物体を一体として、力のつり合いを立てれば解答できる。
問2は、運動エネルギーの大小関係とあるが、「同じ大きさの力で1秒間引いた」とあるので生じる加速度の大小関係を考えれば良い。
問3は、変圧器で昇圧してから送電すると送電の電流が小さくて済むため、送電線において失われるエネルギー(送電線の抵抗における消費電力)が抑えられるということへの理解があれば解答できる。
問4は、うなりの公式を覚えていればそれだけで解答できる。オはうなりの公式の説明に用いる考え方だが、この問い方だと何のために計算したのかがわからず、不思議に思った受験生もいただろう。
問5は、潜熱という言葉の定義を正確に理解しているかどうかが鍵であった。潜熱は融解熱、蒸発熱など状態変化に利用される熱の総称であるため、固体から液体に変化する際に物質に吸収される熱である融解熱も潜熱のひとつである。他の選択肢の間違いのほうが見つけやすいので消去法が考えやすいかもしれない。

【第2問】波動、電気
Aは、波の独立性と重ね合わせの原理に関する問題であった。
問1は、グラフを読めば解答できる平易な問題。ここではあまり差はつかないだろう。
問2は、単純な重ね合わせではなく、変位の時間変化グラフに直してからの重ね合わせなので理解に差が出る出題であった。
Bは、3つの抵抗と切り替えスイッチと直流電源からなる回路に関する出題であった。
問3は、電流の流れていない抵抗における電圧降下が0であることを正確に理解しているかどうかが問われた。
問4は、スイッチの切り替えで回路の合成抵抗がどのように変化し、回路全体での消費電力がどう変わるかが理解されていれば解答できる。

【第3問】力学
Aは、ゴムひもの先端に小球を結び静かに放す運動であり、物理の2次試験でよく見る出題である。
問1は、自由落下時間に関する問いであるため、等加速度運動に関する理解のみで解ける。
問2は、力学的エネルギー保存のみで解答できる。しかし、ゴムひもの振る舞いに慣れていなければ立式に不安を感じたに違いない。
Bは、斜方投射に関する出題であった。物理基礎では直線運動のみしか扱わないため、解法に誘導が与えられた。
問3は、水平方向の等速度運動を考えれば答えられる。
問4は、鉛直方向の等加速度運動を考えれば答えられる。
斜方投射の計算に関する説明は教科書に発展事項として載っていることが多いので、確認してみよう。