大学入試センター試験

《日本史B》 設問別分析



第1問 :教育史と歴史観に関わる教育
 2016年では大学生の日記、2017年では大学生の手紙という形式で問題文が構成されていたが、2015年までの会話形式が2018年に復活し、今年も踏襲された。
 出題範囲が広いのは例年通りであるが、近世や近代からの出題ではじまる形式だったため、やや戸惑ったかもしれない。昨年は図版を用いた問題がみられなかったが、今年は問2で出題された。

問2 一見しただけでは複雑そうにみえるが、図1で勧学院を確認し、図2では難しい読みとりも必要でないため、大学別曹や中世の教育に関する理解があれば容易に判断できただろう。

問3 古代から近現代の教育に関する問題。誤文の1〜3については、誤りの要素が人物・時期・場所というようにそれぞれ異なるため、注意が必要だった。

問4 中世から近世初期までの、比較的時期の近い選択肢で構成された年代整序問題。朝鮮侵略の際に日本軍が鉄砲を用いていたことを把握していれば、IとIIの前後関係は判断できる。IIIは「宋人」に注目してもよいだろう。論理的に考えて前後関係を判断すべきである。

問6 受験生にとって初見と思われる史料の読解問題。aとbは「潤色」の語や(注)の説明などをヒントにして判断したい。


第2問 古代国家の辺境支配
 「辺境」をテーマとする問題。東北・北海道史や南九州・琉球(沖縄)史は地域史のなかでも定番である。問3は、共通テストの試行調査にみられたような、複数の資料(図1・図2)を判断する必要のある問題だった。

問1 問題文には「九州南部」が明示されているため、旧国名とおおよその位置を理解していれば、判断は容易である。

問3 国府や城柵に関する詳細な知識をもっていなくても、2つの図と(注)を慎重に見比べれば判断可能な問題となっている。外郭の有無については、図で確認するだけでなく、「城柵」とはどのような施設なのかを考察しながら選択すべきだろう。

問6 大意をとるのは難しくはないが、史料の一部を読んだだけでは正答を選択できない。(注)を慎重に検討して記されていることを読みとり、選択肢の情報と照合させていく必要がある。


第3問 中世の社会
 入浴・浴室・湯治などをテーマとする、中世の社会からの出題。第2問で2問出題されたためか、第3問では空欄補充問題がみられなかった。

問1 2文正誤は判断すべき文章が2つしかないため、易しいと思われがちであるが、もっとも正しそうなもの(誤っていそうなもの)を選択する4択と異なり、それぞれの文の正誤を厳密に判断する必要があるため、注意が必要である。Yは精読しなければ正誤判断が困難だったと思われる。

問2 教科書にも掲載されている基本史料。センター試験日本史Bでは、初見でも対応できるように(注)が施されているが、あらかじめ大意を把握していた受験生が有利であることはいうまでもないだろう。

問4・5 悪党や指出検地といった歴史用語を正確に理解していなければ、正誤判断は難しい。

問6 一般的に経済分野での年代整序問題は時期を明確にすることが困難であるため、出題されにくい。しかし、本問は、「現れた」、「〜し始めた」といった表現で時期を特定している。社会経済の動きについては、大まかな時期を意識しながら学習を進めるべきである。


第4問 中世末から近世における銀と鉄の生産や流通
 第4問での初見史料の出題は、定番となりつつある。また、空欄補充問題が小問1つ出題されるといったパターンも昨年と同様だった。2014年度・2016年度は地図問題、2013年度・2017年度は視覚資料問題が出題されたが、2018年度・2019年度と同様に、今年も地図問題や視覚資料問題は出題されなかった。受験生が苦手とする社会経済分野からの出題が半数以上を占め、得点差が開く大問だったと思われる。

問2 昨年と同様に「近世初期の外交」に関する年代整序問題が出題された。年代整序問題は、時代や歴史の流れ、背景や因果関係などもふまえて学習することが必要である。

問3 昨年の第1問では「古代から近代までの貨幣」に関する問題が出題されていた。

問5 昨年と同様に「近世の村」に関する問題が出題された。「国訴」の内容をしっかりと理解しておかなければ、正誤判定に迷ったはずである。

問6 読解タイプの史料問題。定番といってよい、(注)をよく読めば判断できる問題ではあるが、今年の史料読解問題のなかでは最も多くの時間を要としたと思われる。


第5問 幕末から明治前期の民衆運動
 日本史A(第2問)との共通問題。かつては、2013年度の「明治期の特許制度」・2014年度の「明治期の租税制度」のように、テーマ的に難易度の高いものが目立ったが、2015年度の「明治期の立法機関」、2016年度の「明治期の地方制度」、2017年度の「大坂(大阪)」、2018年度の「軍制改革と西洋医学」、2019年度の「近世・近代における公家と華族」に続き、比較的取り組みやすいテーマ(「幕末から明治前期の民衆運動」)が取り上げられた。
 第5問では、かつてグラフ・表を用いた設問がみられたが、昨年に続き史資料や視覚教材を用いた問題が1問も出題されなかった。また、2018年度・2019年度と同様の範囲である「幕末から明治前期」が出題された。

問2 開国の影響に対する江戸幕府の対策は頻出であるが、正答を選択するためには、天保期の政策や幕府が実施した政策内容の基本的理解が不可欠である。

問3 2018年度でも血税を含む選択肢文があったため、過去問研究をきちんとしていた受験生は有利だっただろう。

問4 同時期(1884〜1885)の出来事に関する設問。二科会の選択肢文が2015年度本試にあった。太政官制の廃止や内閣制度の発足については、2019年6月全国統一高校生テストでも出題されていた。


第6問 近現代の風刺漫画
 日本史A(第4問)との共通問題。第6問は、これまで、人物をとりあげた問題(「漫画家手塚治虫」〔2014〕、「作家林芙美子」〔2015〕、「石橋湛山」〔2018〕)と、テーマ史(「オリンピック」〔2016〕、「近現代の公園」〔2017〕、「日米関係」〔2019〕)の2パターンがあった。今年は、テーマ史(「近現代の風刺漫画」)として出題された。来年度から実施される共通テストの試行調査でも、風刺画は多く取り上げられていたため、特殊なテーマとはいえないだろう。

問2 人物に注目すると前後関係を判断するのは難しくなるため、台湾出兵、日露戦争、西南戦争に注目したい。

問3 日露戦争との因果関係を考えて選択したい。

問4 大戦景気の時期に重化学工業だけが発展したととらえていると、誤文を選択できない。さまざまな視点からこの時期の社会や経済をとらえているかを問う設問となっている。

問6 第二次護憲運動は大正末期であるため、「大正期」を正確に把握しておかなければ判断しにくかっただろう。

問7 アジア太平洋戦争期の総力戦に関する設問。文章Yの国民徴用令に関しては、本設問と同じ正誤組合せの形式で、2019年度第2回4月センター試験本番レベル模試日本史Bでも出題されていた。

問8 農地改革の目的を把握していれば、正答を選択するのは容易である。