学芸員

歴史的遺産や芸術作品の研究を通じて、知識を広く発信する仕事

美術、演劇に関する仕事

INTERVIEW

現役の学芸員に聞きました

東京都写真美術館 学芸員

藤村 里美さん

PROFILE

ふじむら さとみ
多摩美術大学 美術学部芸術学科卒業

 東京都写真美術館の藤村さんは、中学生のときに写真部に在籍していたほどの写真好きで、高校生の頃から学芸員になりたいと思っていたそうです。
 展覧会の準備などで忙しく毎日を過ごしている藤村さんに、学芸員の仕事についてうかがいました。

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お仕事の内容は?

 私の仕事の1つに、展覧会の企画と運営があります。当館が行う展覧会は年に20本くらいあり、そのうち当館が主催するものは14本くらい、私が担当するのは2本ほどです。3年前から企画を決める会議を行い、実際に準備に入るのが1年くらい前ですから、常に2〜3本の企画を抱えていることになります。
 展覧会の準備は、まず作品集めから始めます。当館の所蔵作品以外の作品を集めたりしますから、作家さんや所蔵している別の美術館、画廊などと交渉して、購入したり借りたりします。また、作品集めと並行して、会場のレイアウトを考えます。どのように作品をおけば、観覧者の皆さんに作品の良さが伝わるか、自分の中でストーリーを作っていきます。その他にも、図録(会場で販売する作品の写真集)の制作やポスター・チラシなどのデザインにも携わるなど、展覧会が開催されるまでにやることはたくさんあります。学芸員のことを英語では「キュレーター」と呼びますが、分業化されている海外の美術館と日本の美術館とでは、その位置づけが異なります。日本では「学芸員=雑芸員」といわれるほど仕事の範囲が幅広く、まさに「何でもやる」という感じです。
 展覧会以外にも、当館で所蔵する作品の情報収集は欠かせない仕事です。休みの日には、各地の画廊・美術館・資料館めぐりや、写真集などを観て過ごすことが多いです。仕事とプライベートの区別がつきにくいのですが、好きなことを仕事にしているのであまり苦にはならないですね。

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このお仕事の醍醐味は?

 展覧会では観覧者の皆さんにアンケートを書いてもらいますが、私の考えたストーリーが皆さんに伝わって、「ここが良かった」「ここが面白かった」と書いてあると、心の中で思わずガッツポーズをします。「この作品のここが素敵」という自分の思いが、うまく伝わるととても嬉しいです。
 また、以前に日本の新進作家の作品を集めた展覧会を、当館の他、フランス・ポルトガル・メキシコでも開催した際には、作品と共に私も海外に出張しました。日本の新進作家の作品を海外の人たちに紹介できたことは、とても嬉しい出来事でした。

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学芸員を目指す人にアドバイス

 まず学芸員の資格がないと採用試験を受けられない場合が多いので、資格を取得できる学科のある大学を目指しましょう。美術館で働いている人の中には、美術系の大学を目指して高校生の頃に美術を学んでいた人もいます。また、海外の作家さんなどや関係者と交渉することも多いので、英語力も必要です。
 大事なのは、普段から美術館や博物館に行って見聞を広めておくこと。また、周囲の人が理解してくれなくても、自分がハマっていることを何時間でも話していられるくらいの知識と探究心があるといいですね。

ある日の藤村さん

  

9:30

美術館に出勤。朝までに届いたメールに返事を書く

10:00

作品の購入や貸し出しなどの交渉。電話または直接出向いて打ち合わせ

12:00

昼食

13:00

展覧会に使う作品のサイズ測定や制作年などのデータをチェック

15:00

展覧会の企画会議。自ら考えた企画についてプレゼンテーション

17:00

展覧会ポスターの色校正(試し刷り)の確認。写真の色や各データの記載に間違いがないかをチェック

18:30

帰宅。ときには、この時間から図録の原稿を書くことも

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