大学入試センター試験

《国語》 設問別分析



【第1問】河野哲也『境界の現象学』→やや易化
 問1の漢字は例年通りの出題。問2は4〜6段落の内容が解答根拠。問3は、ソーシャルワークの話が始まる7段落以降、特に「脆弱性」を説明した10段落が解答根拠となる。三行選択肢だが、いずれも二文に分けて説明されており、読みにくさはない。問4は、傍線部に「それ」という指示語が含まれるので、直前の12段落の内容をおさえた上で、「ミニマルな福祉の基準として提案」の内容を、13・14段落に即して理解すればよい。問5は、「本文の趣旨を踏まえ」とあり、文章全体の内容との照合が求められる。「レジリエンス」とは、「変わらないこと」を目指すのではなく、「変化する環境に柔軟に対応する過程である」ことをおさえる。問6は、(i)で「適当なもの」、(ii)で「適当でないもの」を選ぶことに注意。

【第2問】原民喜「翳」→やや易化
 問1の語句の問題は基礎的なもの。問2は「私」の心情を問うもので、一行選択肢となっている点でかえって判断が微妙になっており、やや難。問3は「私」が推測した妻の心情を問うという設問だが、標準的なレベル。問4は「魚芳」の青年の態度を問うもので平易。問5は手紙を読んだ後の「私」の内面の動きを問う三行選択肢の設問だが、消去法で解けば大丈夫だろう。問6は昨年どおり不適切なものを二つ選ぶ形式でEがやや紛らわしい。

【第3問】『小夜衣』→やや難化
 問1は例年通り解釈の問題。(ア)(イ)は重要単語・敬語の知識で解ける。(ウ)の「あはひ」はやや難。問2は2年続いて敬意の方向の問題。動作の主体や受け手を正しく読み取って解く。問3は直前の内容から考える。問4は尼上の発言を正しく読むと同時に、本文にない内容が含まれる選択肢を排除する。問5は直前の内容から考える。問6は本文にない内容が含まれる選択肢を排除して考えるのだが、正解は本文最終部に相当するので、最後まで気を抜かずに読まなくてはならない。

【第4問】『『文選』謝霊運の詩』→昨年並み
 五言、全20句の詩で、単独では1992年度の白居易の古詩以来の漢詩の出題であった。問1は「倶(ともに)」「寡(すくなし)」の読みの問題、問2は返り点のつけ方と書き下し文の組み合わせ問題。問3は詩句に描かれた様子を図@〜Cから選ぶという珍しい形であった。問4は押韻(偶数句末の空欄補充問題)、問5は語句の表現の問題と、漢詩らしい問いである。問6は詩にこめた作者の心情説明の問題。