みなさんが来年受験する大学入学共通テストでは、複数素材(文章・条文・グラフ・表・図・写真・会話など)から問題が出される可能性があります。複数の素材を読解して設問を解くわけですから、時間制約の厳しい試験になるかもしれません。今年度は、大学入学共通テスト3年目となりました。共通テスト4期生のみなさんが解くのは、今までとは異なる素材が組み合わされた問題の可能性もあります。素材の組み合わせが変われば、印象は違ったものになるかもしれません。試験本番でどのようなタイプの問題にも対応できるよう、できるだけ多くの問題演習に取り組みましょう。ただし手に入る「共通テスト型」の問題は試行調査の問題を含めてもあまり多くないかもしれません。東進で2カ月に1度実施される共通テスト型の模試などをうまく利用してください。いろいろなパターンに数多く触れることが大切なので、力がついてから模試を受験しようという考えではなく、可能な限り、受験するようにしましょう。
そして、複数素材の問題に慣れることよりも、もっと重要なことがあります。それは、「国語学習の基本は読解力をつけること」であるということです。
どんな出題であっても、「書かれている内容を理解し、設問要求に合致する選択肢を選ぶ」という国語の読解の基本姿勢は変わりません。また、特に古文・漢文においては、身につけなければ読むことすらできない知識(古文単語・文法力、漢文重要漢字・句法力)があります。これらをきちんと身につけ、読解に生かせるようにし、演習を積み重ねていくことが重要となります。
また、みなさんの先輩が受験していた、センター試験の問題は良質なものが多く、最良の演習素材です。基本的な読解力を身につけたら、センター試験の過去問で読解力を鍛えることも良い訓練になるでしょう。現代文2題・古文1題・漢文1題の4題を80分で解く練習に加えて、模擬試験で複数素材の問題への対応力を付けていけば、どんなタイプの出題となったとしても、あわてることはありません。大学入学共通テストまであと1年、次のアドバイスを参考にして、計画的に勉強を進めていきましょう。
■現代文
第1問では「論理的な文章」「実用的な文章」、またはこれらの文章を組み合わせた複数素材で出題される見込みです。抽象度が高く、論理力思考力が問われたセンター試験の過去問も利用しながら読解力・論理的思考力を鍛え、共通テスト型問題の模擬試験を活用して複数素材の問題への対応力を高めましょう。また、漢字・語彙といった知識事項に自信が無い人はこれらを固めることが先決です。漢字力・語彙力は、単に漢字問題や語彙問題で点を取ることにとどまらず、読解力を根本から支えるものになります。早い段階で漢字と語句の問題集を1冊ずつ仕上げ、それを文章読解の中で活用していきましょう。
また、速く読み解く力を身に付けるためには、設問に先に目を通して問われることを予め理解しておき、本文を読みつつ問題がきたら解くという読解法(「読みつつ解く」)を日頃からトレーニングしておくのも一つの方法です。また、複数素材がある場合、それらをどの程度読み込む必要があるかなど(例えば、長い法律の条文があるが、設問からすると一部のポイントだけを理解すればよいなど)の判断も重要になってきます。そして、本文を読み進めるときはただ目で文字を追うのではなく、キーワードや筆者の主張に線を引く、関連資料のポイントに印をつけておくなど手を動かすことで解答の根拠をすばやく見つけられるように学習を進めていきましょう。
第2問は、「文学的な文章」からの出題となります。試行調査の第1回では、小説とそれを元にした小説の組み合わせの問題、第2回では、詩とエッセイの組み合わせ問題が出題され、一昨年の共通テストでは、小説と、その小説に関する批評文(設問中)を含んだ問題、昨年の共通テストでは小説中の語句を歳時記や関連する俳句などと結び付け、より深い理解へと誘導する問題が出題されました。このように、「文学的な文章」においても複数素材の組み合わせでの出題が想定されますが、文学的な文章でも、本文を「客観的」に読むという読解法は同じです。感情移入をして主観的に読んでしまうと得点は安定しませんから、本文を客観的かつ正確に読み、事実関係と登場人物の心情をとらえ、選択肢を要素ごとに分けて丁寧に吟味する読解法を身につけていきましょう。また語句問題は「辞書的な意味」を答える必要があります。日頃から辞書を引く習慣をつけて語彙力を強化するとともに、詩・短歌・俳句の出題に備えて「国語便覧」などを読む習慣をつけましょう。なお、第2問では、文学評論が出題される可能性もあります。その場合は、論理的な文章の読解の仕方をベースに解きましょう。
■古文・漢文
大学入学共通テストの古文(第3問)・漢文(第4問)の問題は、現代文に比べると旧来のセンター試験との違いは少ないようです。問題演習にセンター試験の過去問を積極的に利用しましょう。古文や漢文は知識・基本事項の比重が大きく、身につけた知識が点数に結び付きやすい科目です。古文であれば、古典文法・古文単語・古典常識・敬語法を、漢文であれば、返り点・重要句法・漢字の用法や読み・重要語など、土台となる知識の定着度が大きなカギを握ります。これらをできるだけ早い時期にマスターすることが大切です。繰り返し確認をしながら、遅くとも夏休みが終わるまでに知識を定着させましょう。知識を身につけた後は、それを駆使してできるだけたくさんの問題を解き、解法の訓練を重ねること、そして、複数素材が問題文や設問文に入ってくる共通テスト型の問題演習を模試などを利用して数多く行うことが必要です。安定した土台の上に、正解を素早く判断できるように訓練を重ねることで、常に高得点をとる力を身に付けることができるようになります。
夏以降は、解法と時間配分の訓練を繰り返して下さい。複数素材を扱った共通テスト対応型の模試は実戦演習に最適です。模試は、学習の進捗度・定着度を測定・認識するという意味で大変重要です。自分の学習進捗度合いが計画通りに進んでいるかを客観的に判断するためにも、「全国統一高校生テスト」を含めて隔月で年6回行われる「共通テスト本番レベル模試」を連続して受験していくことで、着実に実力をのばしていきましょう。