今年度より実施される大学入学共通テストの情報Iは、多くの難関国公立大学で受験が義務付けられており、そのうちの多くで合否判定のために用いられます。主要科目ほど配点は高くありませんが、入念かつ確実な対策を行うことが求められます。
内容としては、情報技術と社会に関する基礎的な知識はもちろん、プログラミングやデータ活用に関する理解も問われる、実践的な性格が強い試験となっています。こうした教科特有の内容に加え、他のあらゆる科目と同じく、問題文の内容を素早く適切に読み取る能力が全ての大問で求められています。
出題傾向や難易度に関して見通しを立てるための手がかりが依然少ない中で、高得点を確保するために重要なのは、まず教科書に書かれている基本的な内容を早期に把握することです。情報Iを個別試験の科目として採用している大学は今のところ多くはありませんが、主要科目でないからといって学習を先送りにすることなく、計画的に学習を進めてください。
既に述べたように、情報Iは実践的性格が強い科目ですから、日々の学習の合間にも、時事的な問題に対する感度を高く持って、気になったトピックについては自主的に調べてみることも有効です。
こうした学習の成果を、模擬試験などを用いて確かめることも極めて重要です。東進は「共通テスト本番レベル模試」及び「全国統一高校生テスト」をあわせて2か月に1度・年6回実施しており、2024年度にも既に共通テストの形式を想定した情報Iの模試を実施してきました。2025年度にも予定されているこれらの模試は、共通テストで問われる知識や能力を本番に近い環境で確認するものであり、充実した解説を通じて得点力を増強する重要な機会です。定期的に受験して、自分の学習の進度を確認しましょう。はじめは制限時間内に解ききれなかったり、なかなか高得点が取れなかったりするかもしれませんが、複数回の受験を通じて出題形式や制限時間に慣れ、復習を通じて満遍なく正確な知識を獲得することで、着実に得点力を向上させてください。
試作問題と同じく、今年度の共通テストの情報Iは全4題構成でした。この4題構成に即して、学習のポイントを記載します。
◆第1問(小問集合)
第1問の小問集合で出題される可能性のある内容は多岐にわたります。情報社会における問題解決、知的財産権やそれに関連する法制度、情報セキュリティ、メディアとコミュニケーション、情報通信ネットワークの仕組みや構成要素、その他ハードウェアとソフトウェアの仕組みや活用などです。単純な知識問題も、そうでない問題(論理回路や2進数の処理など)も出題される可能性があります。
問題文を慎重に読むことで、知識に頼らずに正答を判断できることもありますが、知識と経験があればより素早く確実に処理することができます。教科書や参考書で学習する際は、基本的な内容を正確に記憶・理解することはもちろん、あまり重要でないように見える項目にも目を通し、また手を動かして処理を行ってみることで、関連事項が出題された際に確信を持って対応できるようになります。
時事的な問題が出題される可能性もあるので、日常的に新聞・テレビ・インターネットなど各メディアのニュースに触れることはもちろん、疑問を感じたことがらについて積極的に調べる習慣をつけることが望まれます。
◆第2問(データの活用(情報システム)、モデル化とシミュレーション)
今回の共通テストの第2問Aでは、小売店でのレシートやポイントカードを題材に、データの活用のうち情報システムに関係する内容が出題されました。データから導かれうる内容を把握し、与えられたデータで何がどこまでできるのかを判断することが求められます。今回の題材からも分かる通り、この分野については日常に具体例が溢れています。そういった例について調べる経験を積むことで、見慣れない事例が出題されたときにもスムーズに対応できるようになります。
第2問Bで扱われるモデル化とシミュレーションに関しても、具体例は豊富です。今後の事態を予測したり、とるべき行動を選択したりするために、現実をモデル化してシミュレーションを行うことは、企業活動においても研究においても、ごく一般的な営みだからです。共通テストにおいても、何かしらの具体例や現実的な関心に即した問題が出題されます。与えられた問題文と資料の持つ関心を正確に把握すること、図表をよく見て適切に情報を抽出することが極めて重要です。シミュレーション自体は、表計算ソフトや専用のソフトウェアを用いることである程度行えるので、自分で取り組んでみることも有効です。なお、「モデル化とシミュレーション」で扱われる内容に関しては、第4問(データの活用)で扱われる内容と重なる部分も多いので、大問の違いにとらわれずに学習を進めることが望まれます。
◆第3問(プログラミング)
プログラミング問題においてまず重要なのは、与えられた文章において、どういった問題をどういった手順(アルゴリズム)で機械に解かせようとしているかを理解することです。試作問題でも、今年度の試験でも、いくつかの設問ではコードが扱われておらず、与えられた文章から、どのような課題をどのように解決しようとしているのかを読み取る能力が正面から問われています。具体的な問題に対処するためのアルゴリズムを説明する問題文は、私たちが直感的に行う可能性のある処理を、(ある意味で融通がきかない)機械が処理できるように分解・整頓して捉えなおそうとするものです。つまりこの大問では、異なる前提をもつ他者にも分かるように情報を編集して伝達するという、ある種のコミュニケーション能力が求められます。
第3問では、こうして理解したアルゴリズムをプログラミング言語で表現する能力も求められます。問題文には丁寧な誘導が付されていますから、その場の読解だけで対処することも不可能ではないように思われるかもしれません。しかし、限られた時間の中で安定して高得点を狙うためには、プログラミング言語の作法そのものに習熟することが必要です。具体的には、代入、条件分岐、繰り返し処理、配列と添字の扱い、関数の定義や利用といった基礎的な要素に習熟することが求められます。
なお、共通テストでは独自の専用プログラミング言語が用いられていますが、過去問や模試で用いられたアルゴリズムを、実際によく用いられているプログラミング言語を用いて自分で様々なアルゴリズムを記述し、実行・検証してみることも対策としては有効です。
◆第4問(データの活用(統計))
具体的なデータをもとに、そのデータから導くことのできる内容や、データの表現・分析の方法が問われます。具体的には、箱ひげ図・散布図・相関関係と因果関係・回帰分析などが扱われうるトピックの例です。これらに加えて、データから論理的に導ける内容と仮説に過ぎない主張の区別なども重要になります。これらは大学以降の学びにおいてももちろん、文理を問わず求められることが多い基本的な素養と言えます。教科書の記述を取りこぼすことなく把握し、模擬試験等を通じてデータ活用に関する基本的な事項に習熟してください。
数学Bの「確率分布と統計的な推測」にもヒントとなる内容が含まれており、情報Iの範囲でも「モデル化とシミュレーション」の内容と通じる部分が大きいので、様々な角度から併せて学習することが効果的です。