大学入学共通テストの情報Iは、ほとんどの難関国公立大学で受験が義務付けられており、そのうちの多くで合否判定のために用いられます。主要科目ほど配点は高くありませんが、入念かつ確実な対策を行うことが求められます。
本科目は、情報Iで扱われている知識を単に問うだけに留まりません。それらを道具として使いこなし、複雑な課題に対してどうアプローチするかという思考のプロセスが重視されます。 具体的には、プログラミングによる論理的な手順の構築、シミュレーションを用いた予測と最適解の導出、そして実データから有益な示唆を読み取る統計分析など、情報技術を実社会へ応用する実践的な活用力が問われる試験となっています。こうした教科特有の内容に加え、他のあらゆる科目と同じく、問題文の内容を素早く適切に読み取る能力が全ての大問で求められています。
情報Iの試験自体が今回で2回目の実施であり、出題傾向や難易度に関して見通しを立てるための手がかりが依然少ない中で、高得点を確保するために重要なのは、まず教科書に書かれている基本的な内容を早期に把握することです。既に述べたように、情報Iは実践的性格が強い科目ですから、日々の学習の合間にも、時事的な問題に対する感度を高く持って、気になったトピックについては自主的に調べてみることも有効です。
過去問が少ない情報Iにおいては、こうした学習の成果を、模擬試験などを用いて確かめることが極めて重要です。東進は「共通テスト本番レベル模試」及び「全国統一高校生テスト」をあわせて2か月に1度・年6回実施しており、2026年度にも既に共通テストの形式を想定した情報Iの模試を実施してきました。2027年度にも予定されているこれらの模試は、共通テストで問われる知識や能力を本番に近い環境で確認するものであり、充実した解説を通じて得点力を増強する重要な機会です。定期的に受験して、自分の学習の進度を確認しましょう。はじめは制限時間内に解ききれなかったり、なかなか高得点が取れなかったりするかもしれませんが、複数回の受験を通じて出題形式や制限時間に慣れ、復習を通じて満遍なく正確な知識を獲得することで、着実に得点力を向上させてください。
2025年度と同じく、今年度の共通テストの情報Iは全4題構成でした。この4題構成に即して、学習のポイントを記載します。
◆第1問(小問集合)
第1問の小問集合で出題される可能性のある内容は多岐にわたります。情報社会における問題解決、知的財産権やそれに関連する法制度、情報セキュリティ、メディアとコミュニケーション、情報通信ネットワークの仕組みや構成要素、その他ハードウェアとソフトウェアの仕組みや活用などです。単純な知識問題も、そうでない問題(論理回路や2進数の処理など)も出題される可能性があります。
問題文を慎重に読むことで、知識に頼らずに正答を判断できることもありますが、知識と経験があればより素早く確実に処理することができます。教科書や参考書で学習する際は、基本的な内容を正確に記憶・理解することはもちろん、あまり重要でないように見える項目にも目を通し、また手を動かして処理を行ってみることで、関連事項が出題された際に確信を持って対応できるようになります。
時事的な問題が出題される可能性もあるので、日常的に新聞・テレビ・インターネットなど各メディアのニュースに触れることはもちろん、疑問を感じたことがらについて積極的に調べる習慣をつけることが望まれます。
◆第2問(情報システム、画像データの処理)
今回の共通テストの第2問Aでは、住民証明の取得や提出を題材に、情報システムに関係する内容が出題されました。情報セキュリティ上の課題を把握し、それを具体的な情報システムのなかに落としこむ思考力が求められます。今回の題材からも分かる通り、この分野については日常に具体例が溢れています。そういった例について調べる経験を積むことで、見慣れない事例が出題されたときにもスムーズに対応できるようになります。
第2問Bでは、試作問題や25年度で問われたモデル化・シミュレーションとは異なり、画像や音声などのデジタルデータに関する処理について問われました。これについても、スマートフォンをはじめとするデジタル機器の普及に伴い、画像や動画、音声に関するデータに対してさまざまな加工を手軽に行えるようになった現代において、具体例は豊富にあると言えます。共通テストにおいて、何かしらの具体例や現実的な関心に即した問題が出題されていることはこれまでと一貫しています。試験問題の題材だけでなく、デジタル機器が日常的に用いられる現代社会のなかで、それらのソフトウェアがどのような仕組みで動いているのかに関心を持つことが望まれます。また設問では思考力を試す傾向が強く見られました。与えられた問題文と図表から適切に情報を整理・抽出する力も重要になるといえるでしょう。
◆第3問(プログラミング)
プログラミング問題においてまず重要なのは、与えられた文章において、どういった問題をどういった手順(アルゴリズム)で機械に解かせようとしているかを理解することです。例年、いくつかの設問ではコードが扱われず、与えられた文章から、どのような課題をどのように解決しようとしているのかを読み取る能力が正面から問われます。具体的な問題に対処するためのアルゴリズムを説明する問題文は、私たちが直感的に行う可能性のある処理を、(ある意味で融通がきかない)機械が処理できるように分解・整頓して捉えなおそうとするものです。つまりこの大問では、異なる前提をもつ他者にも分かるように情報を編集して伝達するという、ある種のコミュニケーション能力が求められます。
第3問では、こうして理解したアルゴリズムをプログラミング言語で表現する能力も求められます。問題文には丁寧な誘導が付されていますから、その場の読解だけで対処することも不可能ではないように思われるかもしれません。しかし、限られた時間の中で安定して高得点を狙うためには、プログラミング言語の作法そのものに習熟することが必要です。具体的には、代入、条件分岐、繰り返し処理、配列と添字の扱い、関数の定義や利用といった基礎的な要素に習熟することが求められます。
なお、共通テストでは独自の専用プログラミング言語が用いられていますが、過去問や模試で用いられたアルゴリズムを、実際によく用いられているプログラミング言語を用いて自分で様々なアルゴリズムを記述し、実行・検証してみることも対策としては有効です。プログラムを作成・運用する際には、処理の回数を減らすなどの目的に応じて適宜修正を加えたり、実行する中で生じたエラーを解消するためにコードを編集したりすることも多く、今年度の第3問の問3ではこの点が意識されていたと考えられます。
◆第4問(データの活用(統計))
具体的なデータをもとに、そのデータから導くことのできる内容や、データの表現・分析の方法が問われます。具体的には、箱ひげ図・散布図・相関関係と因果関係・回帰分析などが扱われうるトピックの例です。これらに加えて、データから論理的に導ける内容と仮説に過ぎない主張の区別なども重要になります。これらは大学以降の学びにおいてももちろん、文理を問わず求められることが多い基本的な素養と言えます。教科書の記述を取りこぼすことなく把握し、模擬試験等を通じてデータ活用に関する基本的な事項に習熟してください。
数学Bの「確率分布と統計的な推測」にもヒントとなる内容が含まれており、情報Iの範囲でも「モデル化とシミュレーション」の内容と通じる部分が大きいので、様々な角度から併せて学習することが効果的です。