◆日本史の実力そのものを向上させ、読解力を養おう!
共通テストは、事件や政策などを多面的・多角的に考察する過程が特に重視され、歴史的事象の意味や意義、特色や相互の関連など、総合的に考察する力が求められる傾向にあるといえます。具体的には、教科書で扱われていない初見の資料を使って、そこから得られる情報と授業で学んだ知識を関連づけて判断することを求める問題、仮説に対する根拠として適当なものを選択させる問題、歴史の展開を考察させる問題、特定のテーマを考察させる問題などが出題されます。思考力・判断力が求められるため、史資料読解型の問題に対する演習量を増やしておく必要があるでしょう。ただし、読解力が求められるとはいえ、日本史の問題であるため、日本史の実力がともなっていなければ、史資料を読みとることは困難です。そのため、日本史の実力そのものを高める努力を怠らないようにする必要があります。
しかし、みなさんは新課程入試の1年目にあたる受験生であり、過去に出題例のないテストに取り組むことになるため、不安を払拭できないかもしれません。そこで、2022年11月に発表された「歴史総合+日本史探究」の試作問題をふまえて学習を進めていきましょう。試作問題の構成は、第1問が歴史総合、第2問がテーマ史、第3~6問が原始古代・中世・近世・近現代となっていました。そこで、(1)原始・古代の通史学習を終えたなら、これまでの共通テストの第2問にとりくむ(2025年度の共通テストでは第3問になると思われます)、(2)中世の通史学習を終えたなら、これまでの共通テストの第3問にとりくむ(2025年度の共通テストでは第4問になると思われます)、というように、大問ごとに通史学習と演習を同時並行で進めるとよいでしょう。第1問の歴史総合については、過去問がなく演習が難しいですが、この点は、(a)中学社会の教科書を確認する、(b)東進模試を活用する、など、いくつかの対策が考えられます(詳細は後述します)。
共通テストは導入されて4年目であり、過去問も多くは存在せず、演習に適した問題数は十分ではないのかもしれません。そこで、東進ブックス『共通テスト実戦問題集日本史』をお勧めします。この問題集はすべてがオリジナル問題で、これまで実施された共通テスト本試験よりもやや複雑な、試行調査型の問題もあえて含める形にしています。さまざまな形式の良問に取り組めば、通史学習の際にどのようなことを意識すべきかが見えてくるはずです。日常の学習では、教科書に掲載されているグラフ・表・絵画などを「ただ眺める」のではなく、「そこからどのような情報を導けるのか」を考察する習慣をつけるとよいでしょう。
◆「考えながら」覚える習慣をつけよう!
教科の性質上、日本史は暗記的要素の強い教科だといってよいでしょう。しかし、単純な暗記だけでは、知識は定着しづらく、入試問題への対応も危うくなります。日本史の学習において、最良のバイブルは教科書です。そのことを認識していても、教科書を精読する習慣が身についている受験生はそれほど多くはありません。教科書の精読が単純な作業のように思えて継続できないのだとすれば、それは、「考える」ことをしていないからだといってよいでしょう。歴史総合や日本史探究では、限られた時間内で「考え」た上で正確に解答する力が求められます。そのためにも、「考える」日本史学習を習慣にしていきましょう。文化史(仏像彫刻)を例にとれば、仏像彫刻を把握していく際に、(1)写真で確認してその特徴を考える、(2)ほかの時代で扱う仏像彫刻と比較する、(3)当時の仏教はどのような性格をもっていたのかを把握する、(4)政治・外交・社会など他の分野との関連性を確かめる、など複数の視点で歴史を捉えることを意識して、読み方を変えてみましょう。そうして考えてみたことを自分でノートにまとめれば、立派なサブノートができあがっていきます。
ただし、みなさんにとって悩ましいのは、対象となる教科書が歴史総合と日本史探究と、2冊になっている点ではないでしょうか。特に、歴史総合の教科書にどう取り組むべきか、疑問を抱いている方が少なくないのではないかと思われます。世界の歴史を把握しつつ、日本の歴史を理解しようとすることには重大な意味があります。一方で、日本史探究の情報だけでもかなりの量があるため、歴史総合の教科書まで詳細に把握することは、困難とも考えられます。そこで、歴史総合の教科書は、中学歴史で学んだ情報の上に構成されているという点をふまえ、世界史的性格をもつ情報に対しては、中学歴史でふれたことのある知識を中心に、理解を深めるという姿勢で取り組むとよいでしょう。試験が未実施のため、断定的なことはいえないものの、2022年11月に発表された「歴史総合+日本史探究」の試作問題では、世界史的な情報については、中学歴史のレベルで対処できるものがほとんどでした。早い時期から基本的な知識を正確に身に着けるようにし、本番で十分に得点できるよう、準備していきましょう。
◆模試を有効に活用しよう!
学習の習慣をつけるのは、容易ではありません。そこで勧めたいのが模試の受験です。東進の「共通テスト本番レベル模試」は、「全国統一高校生テスト」も含めると年間全6回実施されます。2022年11月に発表された「歴史総合+日本史探究」の試作問題をベースに、2017年・2018年に実施された試行調査、今までに実施された共通テスト日本史Bや日本史Aのほか、共通テストに類似したセンター試験日本史Bの過去問も参考にしながら、多くの出題スタッフによって作成された東進の共通テスト本番レベル模試は、本番の共通テストで高得点を得るための不可欠なツールといってよいです。なお、記述力を高める模試としては、「早慶上理・難関国公立大模試」「全国有名国公私大模試」が、それぞれ全5回実施されますので、こちらも活用しましょう。
新高3生を対象とした、直近の東進模試としては、第1回共通テスト本番レベル模試(2024年2月18日実施)や、記述式の高2レベル記述模試(2024年3月10日実施)などがあげられます。これらは、受験日本史に精通した作題者によって作成されています。学習のペースメーカーとするためにも、これらを受験しましょう。