大学入試センター試験

《日本史A》 設問別分析



第1問 日本における外国人(会話文)
第1問は昨年同様に、会話文形式で出題された。日本へ移住する外国人の増大を背景とした時事的な問題であったといえる。出題範囲は明治から戦後まで広い範囲に及び、その内容は外交史が中心であった。問6の地図を用いた時代整序問題は、昨年の「写真」から時代整序を判断させる問題と類似するタイプの問題であった。

問2 条約改正に関する正文4択問題。条約改正のそれぞれの担当者が推進した交渉内容を理解できていれば、迷わずに解答を出せたであろう。

問3 田口卯吉が内地雑居について自らの見解を述べた史料の読解問題。昨年も同じ形式の問題が出題された。今年度は(注)が少なかったこともあり、史料中の語句を1つずつ冷静に分析する必要があった。


第2問 幕末から明治前期の民衆運動
日本史B(第5問)との共通問題。かつては、2013年度の「明治期の特許制度」・2014年度の「明治期の租税制度」のように、テーマ的に難易度の高いものが目立ったが、2015年度の「明治期の立法機関」、2016年度の「明治期の地方制度」、2017年度の「大坂(大阪)」、2018年度の「軍制改革と西洋医学」、2019年度の「近世・近代における公家と華族」に続き、比較的取り組みやすいテーマ(「幕末から明治前期の民衆運動」)が取り上げられた。

問2 開国の影響に対する江戸幕府の対策は頻出であるが、正答を選択するためには、天保期の政策や幕府が実施した政策内容の基本的理解が不可欠である。

問3 2018年度でも血税を含む選択肢文があったため、過去問研究をきちんとしていた受験生は有利だっただろう。

問4 同時期(1884〜1885)の出来事に関する設問。二科会の選択肢文が2015年度本試にあった。太政官制の廃止や内閣制度の発足については、2019年6月全国統一高校生テストでも出題されていた。


第3問 近代の都市
第3問は近代の都市をテーマに政治・外交・文化史が出題され、範囲は明治中期から大正時代であった。昨年の第3問は明治期に活躍した人物にスポットをあてた問題であり、今年は「社会に視点をあてた」問題文から歴史を考察させたといえる。都市化が進むなかで、環境や女性の生活に関する内容が出題された。

問2 1997年に二酸化炭素の排出を制限すると取り決めた京都議定書について出題された。国際規模で地球温暖化が深刻化している社会問題を意識させる問題であったといえよう。また、大阪で万国博覧会が開催された時期について正しい理解が必要であった。なお、2025年に万国博覧会が再度大阪で開催予定されている。

問6 1920年代の都市化に関する誤文4択問題。「1920年代」という時期にこだわりすぎると、どこが誤りなのかを判断しづらい。文化住宅が和洋折衷の形式をもつ住宅であることを理解しておく必要があった。


第4問 近現代の風刺漫画
日本史B(第6問)との共通問題。これまで、人物をとりあげた問題(「漫画家手塚治虫」〔2014〕、「作家林芙美子」〔2015〕、「石橋湛山」〔2018〕)と、テーマ史(「オリンピック」〔2016〕、「近現代の公園」〔2017〕、「日米関係」〔2019〕)の2パターンがあった。今年は、テーマ史(「近現代の風刺漫画」)として出題された。来年度から実施される共通テストの試行調査でも、風刺画は多く取り上げられていたため、特殊なテーマとはいえないだろう。

問2 人物に注目すると前後関係を判断するのは難しくなるため、台湾出兵、日露戦争、西南戦争に注目したい。

問3 日露戦争との因果関係を考えて選択したい。

問4 大戦景気の時期に重化学工業だけが発展したととらえていると、誤文を選択できない。さまざまな視点からこの時期の社会や経済をとらえているかを問う設問となっている。

問6 第二次護憲運動は大正末期であるため、「大正期」を正確に把握しておかなければ判断しにくかっただろう。

問8 農地改革の目的を把握していれば、正答を選択するのは容易である。


第5問 近現代日本のエネルギー資源の調達と利用
日本史Aは昨年度同様、第5問が最終問題であり、設問数も8問と変更はなかった。「石炭・石油」といった、これまで日本が依存してきたエネルギーを題材に、外交史と社会経済史を中心に出題された。逆に正面から政治を問う問題はみられなかった。また、問7の表を提示した問題は、昨年同様に「数字」を正確に分析させる内容であった。
全体的に、選択肢文中で「日本国憲法の改正」や「消費税」など、昨今でも連日ニュースなどで報道される話題と関連性をもったものが目立ち、社会に関心を向けることの重要性を受験生に投げかけていると考えられる。

問3 日ソ関係に関する時代整序問題。Iの「関東軍特種演習(関特演)」の時期を判断するのは難しい。日ソ中立条約が締結された後に独ソ戦争の勃発を受け、世界情勢がどのように変化したのかを推察する必要があった。 

問6 ラジオ・テレビに関する誤文4択問題。ラジオ放送の開始は1925年の大正時代末期であったことを理解していれば、迷うことはなかっただろう。

問8 石油危機(石油ショック)に関する正文4択問題。石油危機の契機やその後の経済・国際関係を問う内容であった。昨年も「湾岸戦争」に関する設問がみられた。
来年度から思考力を重視する形式の共通テストが実施されるが、時代背景や動向の変化など思考力を問う観点はこの問とも共通すると考えられる。対策として、センター試験日本史Aの過去問を解くことも決して無駄ではないだろう。