夢は大きく、目標は高く。
「大学受験の成功=大学合格」ではない
大学受験の成功は、大学合格とイコールではありません。せっかく大学に合格しても、入学して1カ月も経たないうちに、ほとんど大学に出てこなくなる人がいます。中途で退学する人もいます。それでは、大学に合格しても大学受験に成功したとはいえません。
こういう先輩は、大学入試を受ける前の段階で、すでに大学受験に失敗していたといえます。大学受験に成功するためには、入試に合格するよりもまず先に「大学選び」に成功していなければなりません。大学受験は、高校受験よりはるかに難しいものです。入試が難しいのではなく、志望校選びが難しいのです。
大学受験は、高校受験とは3つの点で異なります。
1つ目は、ステージが地域内から一気に全国規模に拡大することです。皆さんが入りたいと思っている大学には、全国各地から志望者が大勢集まって来ます。高い競争倍率の中で合格を勝ち取らなければなりません。
2つ目は、大学は学部・学科に細分化されていることです。極端に言うと、1限目からずっと毎日毎日、世界史の授業だと想像してください。世界史が大好きな人にとっては天国、嫌いな人にとってはまさに地獄です。大学受験は、学部別や学科別に行われますから、その選択を間違えると取り返しがつきません。
3つ目が実は最も大きな違いです。高校までは受け身の授業でしたが、大学では主体性が要求されることです。高校では、クラス単位で授業を受け、理解度はテストで測られました。ところが、大学では、学生自身がテーマを設定し研究することが目的ですから、皆バラバラに好きな授業を取るし、テストも空所補充のような用意された形式ではなく、たいていは論文形式です。そして、評価の基準は、授業の内容を理解していることだけでなく、独自の視点と確かな論拠の有無です。
偏差値では志望校は決められない
偏差値で大学選びができるのなら苦労はしません。例えば、数学が三度の飯より好きな人は、「偏差値ランキング表」などを見て合格できそうな大学の数学科を受験すればよいのでしょうか。それはとても楽ですが、非常に危険なやり方です。もし、大学に残って本当に研究者になりたいのなら、そのポストは極めて少ないという現実を知っておくべきです。あるいは、一生、ロボットに関わっていきたいと思っても、就職する際、理系の求人で圧倒的に多いのは数学科よりも電気電子系の学科です。すなわち、大学卒業後の長い人生を見すえて学部・学科選びをしなければ、例えばロボットに関わりたいという自分のやりたいことが、途中で頓挫する危険性があるのです。
本書の目的は、2つあります。1つは、大学選びに複眼を持ってもらうことです。大学入試の難易度だけでなく、入学したあとの長い大学生活全体をイメージし、さらに大学を卒業したあとのもっと長い職業人生を想定して、必死になって自分にぴったりの志望校を探し当ててほしいのです。
本書から何を、どのように読み取るか
とはいえ、高校生の皆さんにとって、大学受験がその後の人生にどういう影響を与えるのかについては、想像できないことが多いと思います。そこで、本書のもう1つの目的は、様々な視点からの情報を提供することです。各大学が公表している内容だけでなく、在学生や卒業生に直接インタビューをしました。残念ながら、紙面が足りずにすべての情報を載せることはできませんでしたが、本書のアプローチを手本として、できる限り違った角度からの情報を集めてほしいのです。
情報源が友達だけでは判断が偏ります。先生はもちろん、先輩や親戚にも尋ねてみたり、実際に大学を訪問したり、インターネットで職業や資格について調べたり、書店の専門書コーナーに行って大学生が読む本を手に取ってみたり、様々な角度から情報を集めましょう。
情報のソースはいくらでもあります。要は、皆さんが、「自分の人生は自分で決める」という意志があるか否か、その主体性にかかっているのです。その姿勢の転換が最も大切なことです。
今まさに、大学は激変している!
大学は今、大きく変化しています。日本全国に約780校ある大学の中には、定員割れから今後閉鎖に追い込まれる大学もあれば、時代の課題に対応するために積極的に学部・学科の新設や再編成を行っている大学、将来に向けて新しい取り組みをしている大学もあります。研究成果だけでなく教育成果もあげようと、学生に対する学習・就職支援を懸命になって行っている大学もあります。
その結果、この10年間で各大学の社会的な評価は激変しました。したがって、皆さんは、年配の方の昔のイメージに引きずられることなく、現在における大学の実態をきちんと見極める必要があります。
一方、卒業後の生活をイメージすることも重要です。かつて日本は「一億総中流」社会といわれ「終身雇用・年功序列」が一般的でしたが、今日ではすでに格差社会が到来しています。
それは、年収における貧困層と富裕層の所得格差が15倍前後であるアメリカ並みの社会を意味します。けれども、これはまだ序の口です。世界には年収3万円という人々がたくさんいますし、一方では年収数億円でヘッドハンティングをする企業もあります。今後、ますます雇用に国境がなくなれば、その格差はさらに拡大します。
これはお金の問題だけではありません。大学全入時代に受験する皆さんが卒業後に生きていく環境は、厳しい世界的な競争にさらされています。「ただ大学を卒業しただけの大卒」では、やりがいのある仕事も高い評価ももらえません。国境という防波堤が低くなれば、皆さんが定年を迎える前に、年収30万円の外国人の労働力が日本人の仕事を奪い取ってしまうかもしれません。
また一方で、インドや中国などの人口大国は、1日15時間以上も勉強して世界に雄飛しようとしている高校生をたくさん抱え、「頭脳大国」を目指しています。優秀な「人財」もまた、グローバルな競争にさらされているのです。
「大きな夢を描く能力」を身につけ、「志」を持とう
皆さんの人生は、大学に入学した時点で決まるものではありません。それよりも、大学を卒業するまでにどのような力をつけたかによって決まるのです。
高校までは、一定の決められたルールとごく限られた能力だけで評価が下ります。しかし、大学を卒業したあとの社会では、専門知識の有無や人脈、人を説得するコミュニケーション能力、リスクを負う勇気、人を思いやる度量、決断力、リーダーシップなど、多種多様な力が求められます。それは、学科試験では測れなかったために、これまでは表面化しなかった力です。
また、薬剤師、税理士、建築士などは、資格がなければその分野の仕事をすることはできません。車を買う力はあっても、無免許では運転ができないのと同じです。逆に、資格試験に合格すれば、学歴は関係なく有資格者として堂々たる仕事ができるのです。
高校生の皆さんの特権は、将来どんな仕事にも就くことができる可能性を持っていることです。もし大学に入学する前から明確な目標を持って努力すれば、たいていの仕事に就くことができる力が身につけられるでしょう。逆に考えると、今からの数年間が、人生を分ける岐路だということになります。
大学は目的を果たすための道具にすぎません。しかし、大学には皆さんの目標を果たしてくれるたいていの道具がそろっています。それを見つけ、効率良く使いこなせば皆さんの夢は実現します。大学は、皆さんが一生やりたいことを見つけ、そのスタートを切るところなのです。
「人」を決めるのはその人自身が描いた将来像であり、そうした夢を描くことができる能力です。本書との出会いが、皆さんの生涯の夢を描く契機となり、「大きな夢を描く能力」を高めることに役立つことを心から祈念してやみません。
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