高居 玲奈さん  千葉県 私立 渋谷教育学園幕張高校(高1)
東進ハイスクール 海浜幕張校

 世界では、私が文章を書いているこの瞬間にも、多くの「救えるはずの命」が失われている。医療制度や衛生環境が整っている先進国では罹患しても死亡率が極めて低い病気や、熱帯など特定の地域にしかない病気、あるいはワクチンを接種できていれば十分予防可能であったはずの病気で命を落としてしまう人達が、子どもを中心に発展途上国に多くいる。

 私は、私の人生を懸けて、このような「救えるはずの命」を救っていきたいと思っている。もちろん、私一人がこの手で世界中の何百万人もの人々の命を救うことは不可能だ。しかし、発展途上国において、「救えるはずの命」が失われている根本的な原因を解決し、改善された状況を長く保ち続けるためのプランを打ち立て、実行することにより、現在、そして未来において、多くの人々の命を救うことができる。だから私は、世界の保健衛生の中心として機能するWHOで働く医師となり、目標を実現する過程で主に3つのことを行いたい。

 まず1つ目は、世界各国の衛生環境の改善である。アフリカでは今も、人口の半分が十分に衛生設備を利用できない環境で生活している。さらに、清潔な水を飲んだり、生活に使ったりできる人口も、アフリカの多くの国々では5~6割程度に留まっている。このように衛生環境に課題が残る国々は、同時に、下痢やマラリアなどで多くの子ども達が命を落としている国々でもある。日本のような先進国で、下痢で命を落とす人はほとんどいない。発展途上国の衛生環境がこれらの病気の致死率を高めていることは明らかであり、早急に改善をしていく必要がある。

 2つ目に、発展途上国で猛威をふるう感染症の撲滅ための計画を立てていくことだ。世界では、エイズ、マラリア、結核という3大感染症には注目が集まっていても、熱帯など貧困国が多い地域を中心に広がる感染症は顧みられないケースが多くなっている。熱帯症は年間50万人の死者を出しているのにも関わらず、それらの病気に対する対策は遅れている。「熱帯地域に生まれたから病気にかかり、死んでしまった」という悲惨な状況を無くすために、一刻も早く撲滅計画を立てていく必要がある。ここで私は、1つのことを念頭に置く必要があると考えている。それは、各国の状況が異なっているということだ。例えば、内戦状態にある国と、そうではない国で同じ計画を立てても、内戦状態にある国が、他の国と同様に順調に計画を遂行できないことは明らかだ。それぞれの国における健康問題だけに目を向けるのではなく、その国が抱えるあらゆる課題を総合して考えて、実現可能な計画を立てていけるWHO医師になりたいと思う。

 そして最後に教育だ。これは各国の人々が将来、自らの力で病気を予防し、健康を維持できるようにするための、未来を見据えた時に必要なことだ。病気に関する正しい情報を伝え、予防のための教育を子どもたちに広く提供することで、未来において「病気ついて詳しく知らず、命を落とした」というケースを無くすことができると考えている。

 将来、ここまで述べてきたようなことを実行し、できるだけ多くの「救えるはずの命」を救っていくために、高校や大学にいる間に身につけるべき3つのことについて述べる。

 まずは知識である。医療に関する専門知識は言うまでもなく、大学で学ぶものである。

 私の行きたい大学には、公衆衛生学を国際的な活動を視野に入れて学んでいける環境があるので、WHOで様々な危機に対応していけるよう、高度な専門知識を学んでいきたい。高校で学んでいることや、受験勉強で学ぶことも、医療を学ぶための基礎として重要だと思っている。だから私は、毎日の勉強で身につく知識も大切にしていきたい。これらに加え、世界が今抱えている医療問題や、医療に関連が無いように見える問題に常に関心をもち、それらのことに関する理解を深め、知識を身につけていきたいと思っている。これは高校生である今でも、テレビのニュースやインターネット、本などを利用して身につけることができる知識だ。今のうちから将来解決したい問題についてできる限り知っておくことが大切なのは言うまでもない。しかし私は、医療と全く関係のない事柄についても知っておくことが将来の自分のためになると思うようになった。自分と同じ世代の多くの人達とのディスカッションを通じて、世界のあらゆる課題が相互に関わり合っていることを学んだからだ。例えば、健康は衛生環境に大きく左右されることから、気候変動や環境汚染の影響を受けると考えられる。また、性感染症に苦しむ人々が差別をうけたりすることから、社会における差別や格差とも関わりがあると言える。あらゆる国際問題に関する知識があれば、将来、新しい感染症が現れるなど不測の事態に直面した際に、多方面からのアプローチを考え、問題解決に繋げていくことができる。

 次に、柔軟に対応する力である。現在、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、世界各国で国境を超えた人や物の移動が制限され、外出自粛が求められている。確かにこの方策により、感染者の増加が抑えられていることは事実だ。しかし、貧しい国々に焦点をあてた場合、良い方策とは言えない。他国からの食料輸入に依存している国では、物流の制限により食料危機が発生し、路上で生計を立てていた家族は、生活を維持できなくなっているのである。先にも述べたように、各国には各国の抱えている問題があり、そのことを認めてそれぞれ国の状況に応じ対応ができる柔軟性が必要だと私は思う。柔軟性を身につけるために、高校では、積極的に大規模な学校行事にリーダー格として関わるようにしたいと考えている。大規模な行事のリーダーは、その行事に関わる全ての人々が納得できるよう、行事の準備を進め、開催しなければならない。異なる意見を総合して最良な案を模索していくことで、柔軟性が身につくと思う。

 そして3つ目は、発信力である。WHO医師は、撲滅や予防のために計画をただ考えるだけではなく、現地の人々や世界の医療従事者、さらに他の分野で働く人々にも伝えていく必要がある。伝えるべき事柄を複数の言語を用いて発信していける力は、医療分野の世界のリーダーと言えるWHO医師にとって必要不可欠な力だ。発信力は、私が今高校で所属しており、大学でも続けていこうと考えている英語ディベート部の活動で養っていくことができると考えている。どのようにして効率的に、説得力を持って物事を伝えられるかを学べると同時に、世界に通用する言語、英語で発信していくための練習ができるからである。

 AIが活躍を広げている今の社会で人間が活躍の場を残す唯一の方法は、「人間にしかない力」を最大限生かしていくことだ。先に述べたような、物事を多方面から捉える力や柔軟性は人間にしかない力である。AIは過去のデータを収集し、それをもとに効率的な作業はできても、私が解決したいと思っているような、答えが見つかっていない問題に対処することはできないだろう。私は人間にしかない力を十分に養い、AIが解決できない問題を解決したいと考える。

 世界の「救えるはずの命」を救うため、人間らしく人の役に立てるようになるために、日々できることを積み重ねていこうと思う。