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荒牧 実来さん 兵庫県 私立 神戸女学院高等学部 (高2)
東進衛星予備校 豊中夕日丘校

題名:情報技術で教育格差のない未来へ

 私は工学部に進学したいと考えている。なぜなら、情報技術を活用して教育格差をなくす手助けをしたいという強い思いがあるからだ。その思いが明確になったのは、高校一年生のときに参加した、ネパールでのチャイルドケアのボランティアがきっかけだった。

 私が訪れたのは、首都カトマンズにある小さな学校だった。教室の設備は整っておらず、教師も不足していた。生徒たちは床に座り、熱心に授業を受けていたが、教室はフェンスで囲まれているだけの空間であり、雨が降ると授業は中断せざるを得なかった。それでも、ネパール国内では比較的整った環境なのだと後に知り、衝撃を受けた。

 ネパール滞在中に訪れた農村部ではさらに厳しい現実があった。舗装されていない石だらけの道を走るバスの車窓から、崖沿いの細道を一人で歩く小さな子どもを見つけた。学校へ向かっているようだったが、その道は命の危険さえ感じるものだった。また、学校に通えずに働いている子どもたちも多く見かけた。バスのタイヤの交換のために立ち寄った場所で働いていたのは、小学生くらいの少年だった。学校に通うことすら叶わない子どもたちを目の当たりにしたことは、私に強い印象を残した。

 この経験を通じて、私は「どこに生まれたか」で教育の質が大きく左右されるという現実を肌で感じた。そして、「もしこの子たちが日本の子どもたちと同じ教材で同じ授業を受けられたら、どれほど可能性が広がるだろうか」と考えるようになった。そのときから、将来は教育格差をなくすための活動をしたいと思うようになった。

 私にできることは何か。頭に浮かんだのは映像授業を届けることのできるアプリの開発だった。昨年五月、私はTechnovation Girls 2024というアプリ開発コンテストに参加した。聴覚障害者が災害時に安全に避難し、避難先でのコミュニケーションを円滑にできるようサポートする機能を盛り込んだアプリをチームで開発し、コンテストの本選まで進み、ソニーグループ賞をいただいた。この経験から、プログラミングを使うことで社会課題を解決できる可能性があると気づいた。さらに、私自身が利用している東進衛星予備校の映像授業がヒントとなった。映像授業であれば、ネット環境さえあれば遠隔地にも質の高い教育を届けることができる。特に、録画された授業を視聴するだけでなく、リアルタイムで質問したり、学習状況を記録・共有できるような双方向型の映像授業アプリであれば、世界中のどこにいても個々に対応した形で学ぶことができる。

 このアプリが世界にもたらす影響は具体的かつ多方面にわたると考える。例えば、教育インフラが整っていない農村部や難民キャンプ、都市のスラム地域でも、スマートフォンを介して一定の教育水準を確保できる。特に女児や障害を持つ子どもなど、社会的に教育の機会を奪われやすい立場にある人々にとって、家庭や安全な場所からアクセスできる学習アプリは、貴重な学びの手段になると考える。さらに、AIを活用した学習支援や、多言語対応によるローカライズ機能を搭載することで、それぞれの国や地域に適した学びを実現でき、地域に根ざした教育発展の促進にも繋がる。長期的には、教育を受ける機会の平等化が、貧困の連鎖の断ち切り、ジェンダー格差の是正、地域社会の経済的自立にまで影響を及ぼすことができるだろう。一人ひとりの「学びたい」という思いに応えることが、持続可能で公平な社会の実現に繋がると私は信じている。

 この志を実現するには、プログラミング技術だけでなく、ネットワークやデータベース管理、UI/UXデザインなど多様な技術が必要だ。そのため、私は工学部で情報工学を中心に学びたいと考えている。工学部では理論だけでなく、実際にチームでの開発や社会課題に取り組むプロジェクトを通じて、実践的なスキルが身につけられると聞いている。ここで得た知識と経験は将来のアプリ開発に大いに生かせるだろう。また、在学中から教育支援NGOや国際協力団体と連携し、実際のフィールドに足を運びながら、ユーザー視点に立ったアプリ設計の力を磨いていきたいと思っている。これらの学びを通じて、国際的な視点を持ち、多様な人々と協力できるエンジニアになりたい。

 世界中のどこに生まれても、誰もが平等に「学びたい」と願える社会の実現。それが私の志であり、技術を通じて世界に与えたい変化である。だからこそ、私は工学部で技術と知識を深め、世界中の子どもたちの「学びたい」という気持ちを支えられるような仕組みを作っていきたい。