中村 魁良くん Laurus International School of Science in Tokyo 中1
東進ハイスクール 吉祥寺南口校
題名:僕が数学の道を行く理由
僕は、数学者(数学教授)になりたい。
「数学」「数学者」と聞いて、人は一般的に何を思い浮かべるだろうか。例えばインターネットで数学者に対するイメージを調べてみると「変人」「偏屈」などといったキーワードが出てくる。周囲の人々に「数学は好きですか?」と聞くと、だいたい「嫌い」「あまり好きではない」といった答えが返ってくる。数学は世間ではあまり好かれておらず、数学者は変人で偏屈だと敬遠されている傾向があるようだ。
では、なぜ僕はこんなにも数学者になりたいと思っているのだろうか。この問いに答えるために、「自分はなぜ、こんなにも数学という学問に惹かれているのか?」について考えてみようと思い立った。まず僕はこれらの点について自問自答し、自分が数学を好きになったルーツを探った。すると小4の時のある出来事が軸になっていることに気が付いた。昔から化学に興味があったこともあり、僕は当時よく元素周期表をながめていた。その時、最外殻に入る電子の最大数がK殻から順に2、8、18、32になっているなぁと、ふと気が付いた。なんとなく規則性があるような気がしたのだ。もっと突き詰めて考えていくと実際にその数列には二重の等差数列の性質があると確信した。しかし、当時の僕はそれが「階差数列」という名前であることも知らなければ、それをうまく一般項にまとめることもできなかった。そこで、知り合いの数学教師のT先生に「元素周期表の中に数列を見つけたけど、うまく式にできない」と相談してみることにした。するとT先生は、とても丁寧にわかりやすく式化する方法を教えてくれた。さらにT先生と一緒に突き詰めていくと、最終的に「2n²」というシンプルな式に辿り着いたのだ。数学というものが如何に美しく楽しいのかということを、その時、僕は直感的に理解したのだと思う。その後、T先生がネットで「2n²」を見つけたと連絡をくれた。なんと、ウィキペディアに2n²が最外殻電子を求める公式として載っていたという。僕は驚き、化学と数学がつながっているのを感じた。それを機に僕は数学が好きになり、「数学を教えたい」と感じるようになり、「数学者(数学の教授)という職業を目指そう」と考えるようになった。
こんなにも数学は楽しくて美しい学問なのに、なぜ数学は世間から嫌われ気味で、数学者という職業は変人扱いされるのだろう。具体的にどのくらいの人々が数学にマイナスイメージを抱いているのか疑問に思い、インターネットで調べてみたところ、男子高校生の40.7%、女子高校生の59.9%が数学を苦手な教科としているという(2021年LINEリサーチ)。またUCLAのスティグラー教授は2018年、アメリカのコミュニティカレッジに入学する学生の約60%が数学の基礎コースに必要なスキルを持っておらず、その結果、多くの学生が卒業できないと指摘している。
2045年までにAIが人類の知能に追いつくとされること、人はそれを「シンギュラリティ」と呼ぶ。今、世界中がシンギュラリティに備えて、数学や物理化学などの理系科目に強い人材を求めているのにもかかわらず、世界には数学嫌いな人があふれている。
僕はこの状況に強い危機感を抱いている。そしてシンギュラリティが到来する前に、AIを理解し制御できる人材が少ないこの現状を何とかするために、数学好きを増やしたいと真剣に考えている。そのために、僕は数学の楽しさを教えることのできる教師、すなわち数学の教授に、アメリカでなりたい。様々なルーツの人々が集まるアメリカで教えれば、自分の教え子たちが世界中に数学の面白さをさらに広めていってくれるだろう。自分の英語力を生かし、できる限り多くの人に、数学のスキルだけではなく、僕がかつて感じた数学の真の面白さ、美しさを伝え、一緒に感動したい。さらに、アメリカの大学には様々な国から様々な考えを持つ人が学びにやって来る。彼らと交流し、同じ志を持つことで、一緒に数学好きを増やせると考えている。
僕は現在、数学や英語を幅広く学んでいる。人に教える前に自分が学ぶ必要があるからだ。他にもティーチングアシスタント(先生を補助して教える役)として教える経験を積んだり、知り合いの数学のA先生と協力してDesmosという関数グラフが書けるウェブサイトを使い、数学について楽しく学べるサイトやアプリを作ろうと計画し、目標に向けて奮闘している。まずは自分にできるところから一歩一歩、少しずつでも進めばいつか必ず成し遂げられる。そう考えて、僕は今日も数学を学ぶ。いつか近い将来、数学の伝道師になるために。