江川 慶辰くん 東京都 私立 海城中学校 中3
東進ハイスクール 新宿エルタワー校
題名:情報技術と社会倫理を数学で架け橋する
現代社会において、人間の認知能力を大幅に超えた、膨大かつ複雑なデータを処理・分析することのできるAI技術の社会的必要性はかつてないほど高まっている。例えば、気候変動における災害の予測や疾患に対する創薬の高速化、第一次産業のスマート化など人類の生活の根幹をなす不可欠な技術となっていることは明らかである。しかし、どれほど優れた技術であっても、それが法や倫理と対立して社会の信頼を損ねるようなことがあってはならない。私の夢・志は情報科学の知見を手がかりに、法・倫理の規範を仕組みに取り込む、AI研究者として人間中心の社会基盤を構築することである。
はじめてこの問題意識を実感したのは、中学受験対策の一環で時事問題や社会の学習を進めるうちに、最新AIの目覚ましい成果を知った上でその実用性と応用可能性に強く惹かれると同時に、既存の法制度と人間の責任構造との間に生じるズレに違和感を抱いたことだった。このズレをより深く考察するべく、校内でAI規制法に関する本格的な学術レポートの執筆に取り組んだ。しかし、その過程で目にしたのは技術の進化速度が社会の枠組みに追い付いていない現実だった。例えば、画像診断AIが医師と同等もしくはそれ以上の精度を記録しても、誤診時の責任の所在や「なぜその判断に至ったか」の説明義務が法的に整理されていなかったために、実際の臨床現場では決定権を与えられず導入が見送られた事例がある。これが表すのは、技術的には実現可能であっても法・倫理の壁によって救えるはずの患者へ届かないという皮肉であった。この問題についての研究を調査したり、東進のワークショップに参加したり、大学講師の方に実際にお話を伺う過程で私は1つの決定的な事実を知った。法が要求する公平性や透明性といった抽象的な規範は、統計モデルの学習過程における「制約条件」という数学の言葉に置き換えることができるということだ。例えば、一般には表面化されていない判断プロセスも、統計的な手法を用いて、どのデータ要素が結果にどれだけ影響を与えたかという数字に分解すれば、人間に納得できる根拠として提示可能になる。すなわち、社会倫理は完成した技術に後付けで課す外付けの縛りではなく、設計段階からコードに組み込まれるべきものなのだ。開発チーム自体が法・倫理の設計者となり、その規範を理数的な観点で技術に反映させるアプローチを実践することが、技術が真に社会で潤滑に活用されるための最適解と考えている。
この志を果たすために私は現在、理数分野における学びと具体的な探求の両輪で学習を続けている。情報オリンピックや数学オリンピックの参加を見据えた論理的思考力の強化に加え、統計学の先取りやプログラミング言語の扱いに取り組んでいる。同時に国際的なAI規制法に関する研究の調査はもちろん、実際にその分野を専門にする方々に直接お話を伺うことによって深い知見を獲得し、校内ディベートやレポートの執筆などを通じて多角的な視点で検証を続けている。また、この問題を解決するためには様々な分野に繋がりを持つ必要があることは痛感しており、前期教養課程で広い知見を得ることが可能な東京大学理科Ⅰ類を志望しようと考えている。
最後に実際にこのような研究開発を行うには大量の実験や考察が求められ、容易でないことは痛切に感じている。だからこそ今できることを着実に積み上げていくことが将来的に人々の豊かな生活に繋がっていくと確信している。