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住宅メーカー 編

 「建築の工業化」を企業理念とする大和ハウス工業は、1955年(昭和30年)創業の住宅総合メーカーだ。私たちもよく知る「プレハブ住宅」は、実は同社が開発した「ミゼットハウス」が原点。「住宅」といえば「請負」が一般的だが、「ミゼットハウス」はなんとデパートで展示販売されたという。同社は「住宅」を「商品」へと変貌させた工業化住宅のパイオニアなのだ。以来、住宅・分譲マンション・商業施設等の建設を多数手掛け、近年では海外の工業団地開発にも参画している。そこで今回は、同社建築事業部第六営業部の本濱遥氏と後藤嘉明氏の両名にご登場頂き、建設業界で働く醍醐味ととともに「受験に役立つ力」についてもお伺いした。

一度決めたことは最後まで!やりきることが自信につながる!

大和ハウス工業株式会社 東京本店 建築事業部
第六営業部次長 営業第一課課長

後藤 嘉明  (ごとう よしあき)

1966年 岐阜県生まれ
1985年 岐阜県立関高校 卒業
1989年 大阪府立大学 総合科学部 卒業
同年 大和ハウス工業株式会社 入社
現在に至る

自分の価値観と信念を持て!

 建築事業部第六営業部次長として辣腕をふるう後藤嘉明が、常々部下に伝えていることがある。それは「自分の価値観や信念を必ず持って仕事をしてほしい」ということだ。「若いうちは、とかく指示待ちになりがちです。けれども仕事を進めるうえで、もし違和感を持ったときは、積極的に“違う”と言いなさいと指導しています。そうしたコミュニケーションを通じて、自分なりのモノの見方が育まれてくるのです」

 「自分の価値観を持つ」ことは重要だが、一朝一夕に身につくものではないように思える。ところがそんな疑問に対して後藤は「完成度の高い目線を要求しているわけではない」という。

 「新入社員に10年目の社員の仕事ができるかというと、それは無理。ですが1年目には1年生の目線、3年目には3年生の目線があります。例えば5年目の社員であれば、これまで以上にマーケットを意識して、自分が今やっている仕事から次の仕事へつなげるきっかけをどこからかつかんできてほしい。そこを見極められるような目を養ってほしい。つまり部下の目線がどこまで育まれているかというところを見る。それが私の責務ということになります」

 「事業を通じて人を育てる」ことは同社の理念であり、大きなやりがいでもある。「部下がレベルアップしていく姿を見るのは嬉しいものです」と、後藤は目を細める。

建築とは数十年後も残る仕事 だからこそ誇りが持てる

 大和ハウス工業の建築事業では、基本的に他社と競合する案件は手掛けない。建設業界では、一つの案件を受注する際に、競合他社とコンペで競う方式が取られることが多い。しかしそれでは「企画力」ではなく「価格」で勝敗が決してしまう場合がある。

 「それでは営業の力で建てたという実感を持てません。ひいては“目”も養うことができない。当社では自分で企画書を作るところから始まって、完成まで見届けます。完成した建物は数十年間残ります。だから、やりきったという実感が持てる。建築とは本来、そうした仕事なのです」

 ときには、新入社員時代に手掛けた建物と「再会」することもあるという。そのときの「感動」は、言葉では言い表せないほどだ。

 また、「やりきる」ことは仕事に限らず「受験勉強にとっても大切なこと」だと後藤は説く。「やりきったことというのは、結果は別としても、必ず自信につながります。社会人になると、自分の好きなことだけをできるわけではありません。嫌なことにも一緒に取り組みながら、最後までやり通していくのです。途中で投げ出してしまう癖がついてしまうと、10年、20年経ってもその癖が抜けません。一度決めたことは、結果が出るまでやり抜く。その力は、社会人になってからも必ず役に立つと思いますよ」

Q&A

仕事をするうえで手放せない「三種の神器」を教えてください。

「大和ハウスの手帳」「iPad」「パンフレット」です。当社の手帳の巻末には、建設業界特有の単位や税金に関わる用語・法律などの解説が記載されているんです。こうしたことは商談中にふっと聞かれることが多いので、すぐに答えられるように心掛けています。iPadは、写真などで視覚的に説明できるので重宝していますね。パンフレットも同様です。いつ質問があっても返答できるように常に持ち歩いています。

宅建の資格は必須でしょうか?

営業職においては必須です。弊社では宅建取得が課長昇進の必要条件になっています。但し、宅建を取ること自体が目的ではなく、宅建を使いより大きな仕事に携わるのが目的であり、宅建はその為の手段です。目的と手段を間違えないことを強く意識しています。

受験勉強のコツを教えてください。

やらなければならないことが10個あるとしたら、まずは1個だけでもやってみる。例えば英語が苦手ということであれば、とりあえず参考書を一冊買ってみるとか。私は数学が苦手だったのですが、それでも東進へ行って授業を受けてみるということをしていました。借りたDVDは返さないといけませんから、一度は再生してみるものです(注)。そうするといくぶんは気が楽になる。とりあえず、一歩を踏み出してみることが大切だと思います。 ※注 現在の東進の授業は全てオンライン化されています。それ以前はDVDの貸借がされていました。

やるべきことが多くて何から手をつけていいのかわかりません。

優先順位をつけるのは難しいですよね。私の場合は、自分で解決できそうにもないことから先に着手するようにしています。人に聞かないとわからないことから始める。とりあえず、周りの人に質問をする。自分で解決できる作業は、夜中でもできますから後回しにしても対処できます。仕事でも受験勉強でも、それは同じではないでしょうか。

もっと詳しく

■住宅メーカーとは

 住宅メーカーとは、その名のとおり、戸建住宅、賃貸住宅等の生産・建築・販売を行う企業を指す。ゼネコンなどの建設会社とは区別されることが多いが、近年では、住宅のみならず大規模施設のトータルプロデュースや海外での不動産開発プロジェクトなども手掛けるようになってきており、両者の境界は接近しつつある。大和ハウス工業の場合、「住まいづくり」「土地活用」「ビジネスソリューション」「グローバル」の4つの領域で事業を展開。「人・街・暮らしの価値共創グループ」として、福祉や環境、農業分野の次世代商品やサービスの開発も積極的に行っている。

■住宅メーカーで働くには

 高校または大学、短大などを卒業後、就職試験を経て入社するのが一般的。営業職であれば「宅地建物取引主任者」の資格は必須と考えたほうがよい。ちなみに大和ハウス工業が求める人材は、会社のビジョンを共有しつつ「目標達成に向けて困難なことでも積極的に粘り強く行動できる人」「社会変化や相手のニーズにスピーディーに反応できる人」「感謝の気持ちを忘れず誠意を持って人と接することができる人」としている。