スポーツ施設マネジメント 編

東京都心からほど近い小金井カントリー倶楽部は、開場から今年で80年を迎える名門ゴルフコースだ。創始者の深川喜一の「自由」と「平等」を重んじる理念、そして格式と伝統を継承するその姿勢は、多くのゴルフファンを魅了し続け、各界で活躍する日本のトップリーダーたちにも長く愛され続けている。そこで今回は、小金井カントリー倶楽部営業推進グループ競技運営チーフの川里英章氏にご登場いただく。創始者深川喜一の精神が息づく名門ゴルフコースの「今」をお伺いした。

格式と伝統を継承しながら、革新を進める
舞台は日本ゴルフの近代化を進めた名門ゴルフ場!

小金井ゴルフ株式会社 小金井カントリー倶楽部
営業推進グループ 競技運営 チーフ

川里 英章  (かわさと ひであき)

1988年 東京都生まれ
2007年 東京都 私立 東亜学園高校卒業
2011年 國學院大學 経済学部 経営学科卒業
同年   小金井ゴルフ株式会社 入社
現在に至る

万人に平等に開かれたゴルフ場を! 名門倶楽部はいかにして誕生したか

 昭和12年(1937)、東京都心からほど近い北多摩郡小平村(現・小平市)に敷地面積15万坪を擁するゴルフ場が誕生した。名門と名高い小金井カントリー倶楽部である。武蔵野の自然に囲まれた小金井カントリー倶楽部は、恵まれた地形を十二分に生かした卓抜したコースであることはもちろん、春には桜、秋には紅葉と、素晴らしい景観の中でプレイできるゴルフ場として、多くのゴルフファンを魅了し続けている。

 会員には政財界の第一線で活躍するトップランナーが多く在籍し、入会に必要な会員権も「日本一高価」とされる小金井カントリー倶楽部は、全国のゴルフファンにとっての憧れの地だ。そもそも創始者である深川喜一が新しいゴルフ場を作ろうと決意した当時、ゴルフは華族や財閥など一部の特権階級が楽しむスポーツでしかなかった。そんな時代の中で、地位や職業に関わらず誰もがプレイできるような、開かれたゴルフ場の創設に挑戦したのが深川であった。つまり小金井カントリー倶楽部の根底には「自由」と「平等」の精神があるのだ。

 「小金井カントリー倶楽部は、とてもアットホームな雰囲気のゴルフ場です。会員の方々には会社社長や弁護士の方、あるいはお医者様など、さまざまな地位や立場の方がいらっしゃいます。けれどもそうした地位や年齢を問わず、皆さん分け隔てなく心からゴルフを楽しんでいらっしゃいます」

 そう語るのは、小金井カントリー倶楽部の営業推進グループでチーフを務める川里英章だ。そもそも小金井カントリー倶楽部では、株主会員制という仕組みを採っており、会員は株主でもある。会員すべてが平等なのだ。これもまた創始者深川の構想である。全員が平等な権利と責任とを持つことで、会員同士が対等な関係になるようにしたいという願いからなのだ。小金井カントリー倶楽部の「自由」と「平等」を象徴するエピソードである。

最高のおもてなしで ゴルフを楽しんでもらいたい

 また、名門とされるゴルフ場では入会希望者の「審査」を設けているところが多い。これも小金井カントリー倶楽部の場合「受け継いできたゴルフエチケットやマナーなどの財産を次代に継承し、ゴルフを楽しんでもらいたい」という思いからだという。

 小金井カントリー倶楽部に入会を希望する場合、まず二名の会員からの紹介が必要になる。そのうえで、入会希望者と紹介者の双方の面接を行い、さらに理事と一緒に実際にコースを回り、マナーやゴルフのスタイルなどを確認するという。その後、最終面談を行い、理事会で承認を得たのちに、晴れて入会となる。

 「これほどのステップを用意しているのは、ほかの会員の皆さまとしっかりと打ち解けていただき、このゴルフ場を楽しんでいただきたいからです」川里はそう語る。

 実際に、事務スタッフを務める川里に対しても、気さくに声をかけてくれる会員は多いのだという。川里のほうも、あまりにビジネスライクな態度になりすぎないように気を配る。小金井カントリー倶楽部のおもてなしは「一流ホテル並み」と称されることが多いが、来場者の気持ちや体調などに寄り添って、的確なホスピタリティを提供することも川里の責務のひとつだ。

 もちろん、そのスキルは一朝一夕で身につくものではなく、入社当時は厳しい指摘を受けることもあった。例えば、会員からの予約の受付。事務全般を取り仕切る川里の仕事の中で、とりわけ予約業務は重要な仕事である。そこでの応対がゴルフ場の品格を表すといっても過言ではないからだ。

 「ところが入社当時は、大学を出て間もない頃でしたから、電話の正しい受け答えさえ身についていませんでした。電話口で自分の上司をさん?づけで呼ぶような始末です。そのときはお客様にひどく怒られました。ビジネスでの基本的な言葉づかいや言い回しすらできていなかったのですから当然です。そのときの電話のやり取りは今でも忘れられません。電話に限らず、コミュニケーション力はどんな仕事にも必須だと思います」当時の苦い経験を、川里はそう振り返る。

「地域に貢献したい」 熱い思いで名門クラブの扉を叩く!

 もともと川里は、小金井カントリー倶楽部のある小平市の出身である。父親はゴルフにもときどき連れていってくれたという。小金井カントリー倶楽部という名門コースが地元にあることは、子どもの頃からもちろん知っていた。学生時代に熱中していたのはサッカーだったが、ゆくゆくはスポーツに関連する仕事に就きたいと考えていた川里が、就職活動時にスポーツ関連の企業の面接を受けたのは自然なことだった。

 「しかし結果は思わしくありませんでした。サッカーが好きだということを熱意をもって話しても、それが必ずしも仕事につながるわけではありません。私以上にサッカーが好きな人、あるいはサッカーで実績を出している人は、世の中にたくさんいます。好きだから、という理由だけでは通用しない。この経験は、自分にとって大きな契機になりました」

 そんなときに飛び込んできたのが、小金井カントリー倶楽部での人材募集の話だった。「地元に貢献する仕事を手掛けたい…」常々そう考えていた川里の、好きなスポーツと仕事を通じて成し得たい目的が結びついた瞬間だった。そして名門倶楽部への応募を決意、採用されることとなる。

 入社当時は失敗もあったが、それでも第一線で活躍する人々を相手にしながら、川里は仕事のスキルをあげていった。毎週日曜日には「競技」と呼ばれる倶楽部主催の大会が開催される。川里は今、それに関わる業務を任されている。出場者の確認、賞品の手配、集計など、当日は朝6時から忙しく駆け回る。

 「入社して7年になりますが、ようやく会員の方々の人柄やゴルフスタイルがわかるようになってきました。よくご来場いただける会員の方々の顔や名前は覚えています。私が担当している競技に参加していただいている会員の方々とは、とくにお話しする機会も多いですね。そのときも、話しかけるタイミングや内容に気を配るように心がけています」

 とりわけ川里が気を遣っているのは「相手の仕事の話はしない」ということだという。「なぜならお客様は、小金井カントリー倶楽部にゴルフを楽しむためにいらしているからです。ですから私のほうから相手の仕事に関わるような話は絶対にしません」川里はそう断言する。

日本のゴルフ人口をどう増やすか 伝統を重んじつつ新たな挑戦へ!

 一方で、川里はゴルフ業界全体の動きにも目を向けている。

 「実はゴルフ愛好者の数は年々減り続けています。若い世代でゴルフを楽しむ人たちが減り、プレイヤーの年齢比がアンバランスになっています。こうした事態をどのように乗り切っていくか。今後の日本のゴルフ界全体の課題でもあります」

 特に小金井カントリー倶楽部のように会員制のゴルフ場にとって、ゴルフ人口の減少は頭の痛い問題である。誰もが利用できるパブリックと呼ばれるゴルフ場であれば、料金を安くして、一日に受け入れる来場者を増やすという方法もある。しかし小金井カントリー倶楽部では、そうした方法は採らない。伝統と格式の維持が難しくなるからだ。

 そんな中にあって、川里が中心になって仕掛けたことがある。それは公式ホームページの開設だ。意外にも最近まで小金井カントリー倶楽部では、インターネットを使った情報発信は行われていなかった。会員制の倶楽部だけに、外部への情報発信には慎重を期していたのである。

 「ゴルフ場は天候に左右されることが多く、例えば降雪時などは何日も休場しなければならないときもあります。そうした際に、従来は会員の皆さん全員に葉書をお送りしていました。これでは非効率ですし、費用もかかります。そうした点などを改善できないかという提案が理事会から出てきたのです」

 そこで川里が取り組んだのが、ホームページの開設だった。しかし一方で、小金井カントリー倶楽部のコースや施設、ホスピタリティは会員のみに公開されるべきという考えがあることも事実だった。両者の意見を尊重しつつ、情報公開を進めるにはどうすればよいか。川里は悩んだ。

 「会員の方や、会員のご紹介でお越しいただくゲストの方々への情報公開は、写真一枚の掲載に関しても慎重に行っています。一方で、いつか小金井カントリー倶楽部でプレイしたいと思っている方がいるかもしれません。そうした方々に向けて、少しでも小金井カントリー倶楽部の良さを伝えることができたら。そう思いつつホームページの更新を行っているところです」

 現在では非会員向けのコンテンツも充実。小金井カントリー倶楽部の見どころとされる桜や紅葉の時期の動画なども掲載されている。小金井カントリー倶楽部の会員は、いずれも日本有数のトップランナーばかり。そうした人々から篤い信頼を受け、理解を得つつ仕事を進める川里のコミュニケーション力は計り知れない。

Q&A

ご自身もゴルフをされますか?

 高校生の頃に父親に連れられて少しプレイしたことはありますが、本格的に始めたのはこちらに就職してからです。いつかは小金井カントリー倶楽部のコースを回ってみたいですね(笑)。キャディさんの中には、自分の目でコースを確認しておくという意味で、プレイしている方はいらっしゃいます。

キャディさんってどんな人たちですか?

 「小金井カントリー倶楽部の場合、キャディは女性の方ばかりです。キャディマスターという専門の部署があって、そこにはキャディの教育係もおります。主婦の方が多いので、まったくの未経験から始めたという方もいますね。お客様への気遣いを怠ることなく、ときにはコースを走ったりもしますので高いコミュニケーション能力に加えて、体力も必要です。

コースの手入れはどのようにしているのですか?

 小金井カントリー倶楽部の大きな特徴は樹木の多さです。開場当時からある木もありますので、一本一本、細心の注意を払って手入れをしています。枝を剪定するのにも、まずは会員様に情報を開示して、ご意見を募ります。どなたにも「思い入れのある木」がありますので、そうした木を勝手に切ってしまうわけにはいきません。そうしたことを考慮しつつ、日照が確保できるように剪定します。適切な光合成ができないと芝が育ちませんからね。

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スポーツ施設マネジメントとは

 少子高齢化が進む現代社会にあって、子どもたちの体力低下や高齢者の健康増進、あるいは世代を超えて地域のコミュニケーションを図る場所としてのスポーツ施設の役割は日増しに重要となっている。そうしたスポーツ施設の活動を円滑に進めていくために、適切な管理・運営を行う仕事がスポーツ施設マネジメントである。スポーツの知識のみならず、経営から接客までといった幅広いビジネススキルが必要な仕事だ。

スポーツ施設マネジメントに携わるには

 大学・短大・専門学校を卒業後、面接を受けて該当施設を運営する企業や団体に所属するのが一般的。新卒のみならず中途採用枠を設けているところもある。また、大学や専門学校の中にはスポーツマネジメントを専攻できる学科を設け、スポーツクラブ経営論等を履修できるところもある。スポーツ経験の有無は必ずしも問われないが、スポーツに対する基礎的な知識や熱意は必須である。