【2021年度共通テスト実施状況概略】

1月16日(土)、17日(日)の両日、初めての「大学入学共通テスト」(第1日程)が全国681の会場で実施された。コロナ禍での一斉休校による学習への影響を配慮し、今年度は学習の遅れが心配な受験生を対象とした第2日程(1月30日、31日)が設けられたが、私立大入試が第2日程終了直後に集中していることから、ほとんど全ての受験生が第1日程での受験となった(第2日程志願者は全志願者の0.13%である718名)。天候によるトラブルとしては、北海道稚内市の会場で暴風雪の影響により16日の試験が全て中止され、73名の受験者全員が第2日程での再試験となった(1日の試験全てが中止になることは、共通一次・センター試験の時期を含めても初めて)。その他、監督者のミスや列車の遅延により、一部の受験生を対象に試験時間が繰り下げられることがあった。1月30日、31日に実施される第2日程は第1日程の追試験としての役割も担っており、体調不良などで第1日程を受験できなかった者は、第2日程での受験に回ることとなる。コロナ禍による緊急事態宣言の下、今回の試験は会場・受験生ともに徹底した感染防止策の中で行われることとなったが、「鼻出しマスクによる失格」などあらたなトラブルも生み出すこととなった。


【志願者数・受験者数等】
◆志願者数は第1日程と第2日程を合わせて535,245人と、前年の557,699人から22,454人の減少となった。原因としては、翌年の新入試を見据えた2020年度入試での顕著な安全志向や私立大の合格者増による既卒生の減少(19,369人減の81,007人)があげられる。一方、現役生は18歳人口の減少にもかかわらず微減(2,440人減の449,795人)に留まった。これは、私立大の共通テスト利用方式の拡大に加え、コロナ感染症などで個別試験を受験できなくなった場合、個別試験の代わりに共通テストの成績で合否判定を行うとする大学も多く、コロナ禍拡大時のリスクヘッジとしての利用が受験生の出願を促したことによる。現役志願率は44.3%と2020年度より0.1ポイントアップし、過去2番目の高さとなった。参加大学・短大数は866大学と昨年度より8大学増加し過去最多となった。

◆第1日程の受験者数もリーディングベースで477,035人と、前年から42,268人減少(前年比91.9%)し、受験率(受験者数/志願者数)も昨年の93.1%から89.2%と大幅にダウンした。受験者の減少については、各大学による総合型選抜・学校推薦型選抜の拡大により、早期に進学先が決定した受験生が増加したことが原因と考えられる。


【出題内容の変化について】
教科・科目により差はあるが、大方、大学入試センターから公表された「問題作成方針」中の「問題作成の基本的な考え方」に基づいた出題といえる。ただし、第2回試行調査の結果報告資料で述べられていたように、一部の科目ではセンター型に近い出題形式に戻された。また、試行調査でみられた連動型問題は出題されなかった。

Ⅰ.共通テスト型問題への移行 ①「知識の理解の質を問う問題や,思考力,判断力,表現力を発揮して解くことが求められる問題を重視する」
⇒大学入試センターの作問担当者が「教科書の知識でそのまま答えられる問題は避けた。文脈を踏まえて一段階、思考を入れてもらうようにした」と説明している通り、多くの問題で、センター試験よりも多段階の思考を必要とする問題が出題されている。身についた知識を活用して、提供された多くの「資料・表・グラフ・地図・写真・文章」の意味や関係を理解し、必要な情報を抽出して最終的に適切な解答を導き出すという流れの中で、思考力・判断力・表現力が求められる。思考力や判断力を測るために多くの「資料・表・グラフ・地図・写真・文章」が用いられることで、全6教科のページ数は昨年より47ページ増えた。ひとつひとつの資料は難解ではないものの、隅から隅まで目を通していると、問題を読むだけで時間が足りなくなるおそれがあり、読解力・情報処理の能力も求められているといえよう。
・「英語リーディング」…問題量が6ページ増(約1000語増)
・「英語リスニング」…配点の変更に合わせ、問題量は昨年より10ページ増
・「数学Ⅰ」「数学Ⅰ・数学A」…解答時間が増えたこともあり、問題は16ページ増に
・「世界史B」…6ページ増 「現代社会」…5ページ増

◆複数の素材を読み取り、特に思考力・判断力・表現力を要すると思われる問題
科目 内容
英語リーディング 生徒が校長と校則を巡って交渉する場面を取り上げ「あなたならどうするか」を問う問題
国語 大正期の小説を出題した上で、その小説の批評も示し、二つの視点をもとに読み解く問題
日本史B 荘園の図からブラジルの新聞までも、多様な資料を読み解く問題
世界史B ペストの流行など多様なトピックが扱われ、表やグラフ、歴史の資料が豊富に
英国の金貨鋳造量と紙幣流通量の推移の2つのグラフから導き出せる仮説を化が得させる問題。
18世紀の中国であった組織的な文書改ざん問題を取り上げ、改ざん前後の文章を比較して改ざんの意図
を読み取らせる問題。
②「高等学校における「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けた授業改善のメッセージ性も考慮し,授業において生徒が学習する場面や,社会生活や日常生活の中から課題を発見し解決方法を構想する場面,資料やデータ等を基に考察する場面など,学習の過程を意識した問題の場面設定を重視する。」
⇒試行調査の段階より共通テストの特徴となっているのが、問題設定である。身近な題材を扱った出題が多く、会話文をはじめとする日常的・実用的なシチュエーションの中に設問を想定するような問題が多かった。それゆえ状況を説明する問題文の量がかなり増えることとなった。

◆ 最近の社会の話題や実生活に関連する身近なテーマからの出題例
科目 内容
英語 新聞記事を読みクラス発表する設定の問題やスマホのメールのやりとりからの出題など
数学Ⅰ・数学ⅠA 陸上競技の100メートル走のタイムが最も良くなるストライドとピッチを考える問題
数学Ⅱ・数学ⅡB 高校生の読書に関する新聞記事を扱った問題
国語(現代文) 生徒が学習の過程で作成したノートを完成させる問題
物理基礎 プールで泳いだ際のエネルギーの動きから宇宙の惑星の表面温度にまで及ぶ会話形式の問題
抵抗値など商品ラベルの内容から必要な情報を読み取り、熱カッターの消費電力を求める問題
生物 生徒が光合成の実験を行う計画を取り上げた問題
日本史B 高校の授業での学習発表を素材とする問題(博物館を訪れた生徒の会話)


Ⅱ.センター試験型問題の踏襲

全体的には共通テストの出題方針を意識した出題傾向が強く現れた試験であったが、数学や現代文のように試行調査と比較して昨年までのセンター試験型に近い出題形式に戻した問題も少なからずあった。現代文では試行調査で出題されて注目された実用的な文章は出題されず、数学では試行調査で多く見られた「太郎さん」と「花子さん」の会話文は減少した。
科目 内容
国語(現代文) 第1問は評論文の問題となり、単文で解答できるオーソドックスな読解問題中心。
また第2問は小説の問題で6題中5題はセンター試験の形式を踏襲した設問。
数学II・数学B 列・ベクトルの問題は、誘導がかなり丁寧についており、誘導に乗ってその通りに解いていけば答えが導 き出せる問題
各教科の詳細は「東進解答速報の設問別分析」を参照してほしい。

【難易度変化について】

※2/18に大学入試センターより第1日程平均点の確定値が発表された。
(下記は調整後の得点)

<難化したと予想される教科>
地理B、化学基礎、生物基礎

<易化したと予想される教科>
数学Ⅰ・数学A、数学Ⅱ・数学B、倫理、物理基礎、地学基礎、生物、地学

※その他の科目は昨年並み。
問題形式の変化にもかかわらず、平均点が上がった科目が多い。特に基幹科目である数学Ⅰ・A、数学Ⅱ・Bがともに大きく平均点を上げたことが、理文ともに総合成績のアップにつながっている。
実際の受験生の受験科目の選択率を勘案した加重平均(5教科7科目900点)予想としては理科系571.0点(昨年比+15.0点)、文科系553.0点(昨年比+4.0点)と予想される。

【得点調整について】

第1日程中間集計その2の段階で、理科②の「化学」と「生物」、公民の「倫理」と「政治・経済」で平均点に20点の開きがあり、同一教科の科目間で平均点の差が20点以上となった場合の対応として規定されている「得点調整」が実施された。
(中間集計その2での得点差は理科②…21.59点、公民…22.09点)

得点調整は、最高平均点と最低平均点の差が15点となるよう、最高平均点の科目以外の対象科目に素点に応じて調整に必要な加点を行う(換算表を確認のこと)。
したがって、今回の調整では「倫理」及び「生物」の点数は調整後もかわらず、
理科②では「物理」で最大6点、「化学」で最大9点の加点
公民では「現代社会」で最大7点、「政治・経済」で最大8点
の加点が行われた。

【第2日程について】

1月30日(土)、31日(日)の両日に、共通テスト第2日程が実施された。
受験対象者は、本来の志願者である学習の遅れた現役生718人に加え、第1日程を体調不良などにより欠席した追試験者1,721人及び天候や監督者のミスによって試験が中止となった再試験者77人の計2,516人となった。昨年までの追試とは異なり、全国64の会場が用意された。
一部の会場で交通機関の乱れにより試験時間が繰り下げられたものの、大きなトラブルはみられなかった。今年度は科目単位で追試験の受験が可能となっていたが、最も受験人数の多い外国語(リーディング、筆記)での受験者数は1,693人であった。

●出題内容の変化
第2日程でも、様々な資料や図表を示したり、会話文をはじめとする日常的・実用的な場面において身近なテーマを基に考えさせる問題が多く見られた(英語リーディングの問題文は第1日程より2ページ多い34ページ)。
【問題例の一部】
・新型コロナウイルスを遺棄したとみられるコレラや感染症の歴史を問う問題(日本史A)
・架空の新聞紙面を示し、新聞が報じた経済政策に関連する経済学者を選ばせる問題(政治・経済)

●平均点
2/18に、第1日程とともに平均点の確定値が大学入試センターより公表された。
総受験者数2,025人とはいうものの、下記の一覧のように26科目のうち22科目で第1日程の平均点を下回った。特に数学Ⅱ・B、理科②の生物では20点以上の差が開くこととなった。ただし、第1日程との得点調整は行われなかった。大学入試センターの担当者は「受験者層が異なる可能性があり、単純に比較するのは難しい。問題の難易度は同等と考えている」とコメントしている。
さらに第2日程内においても、いずれの科目の受験者数も1万人未満のため、得点調整は行われなかった。

●特例追試験
第2日程志願者のうち1名が2月13日、14日の特例追試験の受験を許可された。

共通テストの最新ニュース

共通テスト全ての日程終える…2月3日に平均点の中間集計発表

読売新聞オンライン

新型コロナウイルスの影響で設けられた大学入学共通テストの第2日程は31日、2日目の理科と数学の試験が行われ、全ての日程を終えた。大きなトラブルはなかった。第2日程は、休校で学習が遅れた現役生のために設けられ、718人が志願した。第1日程(16、17日)の追試験や再試験も兼ねており、対象者はそれぞれ1721人と77人だった。

2021-02-02

【大学入学共通テスト2021】荒天に注意、第2日程受験生へ「時間に余裕をもって」

Resemom

2021年1月30日・31日、大学入学共通テスト(以下、共通テスト)の第2日程が実施される。大学入試センターでは、試験当日は雪や事故などで交通機関に遅延・運休が生じることがあるとして、時間に余裕をもって試験場に向かうよう受験生に呼びかけている。29日から30日にかけては、北日本や東日本日本海側などで荒天が予想されている。

2021-01-27