「わからないことはAIに聞く」----。老若男女問わず、日常にそんな場面が増えてきました。受験生にとっても、身近に普及した生成AIは、調べ物や情報収集、思考の壁打ちなどに使える便利な道具となりつつあります。
しかし、保護者としては不安もよぎるもの。
「AIに頼りすぎないか」「間違った情報を信じないか」「自分で考えなくなるのではないか」……。
AIが勉強や仕事の場に登場するようになった今、親が子どものために配慮したいのは、AIを使うか使わないかよりも、デジタル環境の仕組みを理解し、真実を見極め、健全にAIを使いこなすことかもしれません。
過剰に恐れたりただ禁止したりせず、AIとの向き合い方や使い方など、普段の家庭の交流でできることを考えてみませんか。子どもが自分で考えて判断し、自分の言葉で伝え、人とともに価値を生み出す力につながるように、AIの利便性とリスクをふまえて見守りたいものです。
記事の中身をチェック↓
・AIに対して自分が判断して責任を持つ力を
・AI時代の学び方を支える3つの人間力
・AI×人間力の志望校対策で合格力を高めた東進
・AI時代の働き方を見据えて今できることとは
文部科学省は、「初等中等教育段階における生成AIの利活用に関するガイドライン」を2024年に改訂しました。そこには、AI は人々の能力を拡張し、多様な人々の多様な幸せの追求を可能とするために開発され、社会に展開され、活用されるべきであるという「人間中心の原則」が掲げられています。
これにより、教育においては、生成AIと人間との関係を必要以上に不安に思ったり対立的に捉えたりせず、人間の能力を補助・拡張し、可能性を広げてくれる有用な道具になり得ると捉えようという方向性も示されました。
生成AIの出力はあくまでも参考の一つ。最適解とは限らないことを認識し、リスクや懸念を踏まえ、最後は人間が判断して責任を持つことが基本姿勢となっています。
そうなると、AI時代に見直すべきは、問題意識を持って問いを立て、有用な資料をバランスよく選んで読み解き、ものごとをじっくり考察して新たな価値を見出すような、個々の「人間力」であることがあらためて浮かび上がってきます。
●身近になった生成AIにできること●
※文部科学省「初等中等教育段階における生成AIの利活用に関するガイドライン」をもとに作成
家庭はお子様の人間力を支えるナチュラルサポートの場。日常のなかで、どんな工夫ができるでしょうか。
①問いを深め合おう
時には“問いを深める会話”を意識してみませんか。帰宅した我が子に「模試はどうだった?」とすぐに結果を求めずに、「問題はどれが難しかった?」「次は何に注意したい?」といった、振り返りを深める具体的な問いを投げてみる。あるいは、日常会話の延長で「希望の大学、もう少し条件を増やすとしたらどこかな?」などと関心の対象や視野を広げてみる。親は答えを導かなくて構いません。子どもが「自分は何がしたいのか」「どこが気になっているのか」を自分の言葉にするための、聞き手になるだけで十分です。
②考えを確認し合おう
デジタル空間には、知りたいことや真実だけでなく、偽・誤情報や誹謗中傷なども紛れ込んでいます。「それは何から調べたの?」「他の解説はどうだった?」など、家の中に“確認する文化”を定着させることもおすすめです。フィルターバブル(自分の好む情報に偏る)やエコーチェンバー(同意見の交換や集合が強化される)といったアテンションエコノミーの影響についても理解し、偽・誤情報を鵜呑みにしたり拡散したりせず、いったん立ち止まって確認することを習慣に。多様な情報を選別し、根拠を確認し、別の可能性を検討する姿勢は、リテラシーの向上や学力を鍛えることはもちろん、生きる力につながります。
③価値を認め合おう
意見や理由を自分の言葉で伝える場として、気軽に“説明する機会”を設けては。子どもの勉強が一区切りしたところで、お茶でも飲みながら「今日、何か新しいことわかった?」といった気軽な問いをきっかけに、子どもが自分の判断力や表現力を臆さず自由に試せる安心で安全な意見交換ができるといいですね。何をどう理解しているかどうかは、自分の言葉で説明しあうとよくわかるもの。相手の立場に配慮しながら、多様な視点を認め合い、思いやりのある表現を練習するのに、親子の日常対話や交流を役立てませんか。
東進も「AI×人間力」に着目してきました。これまでに7000万回を超える演習の実施、東進生と共に進めた約6000万問にのぼる添削は、人と人とが学び合い、解き明かし、乗り越えてきた証となる貴重なデータ。これらを独自の知見に基づきAIに学習させて、一人ひとりの個の力を伸ばすことに特化した講座を開発・提供し、誰一人として同じではない学力や課題の対応に取り組んでいます。主に高1生では基礎の定着に、高2生では問題の演習に、個別最適な講座を提案し、準備をサポート。いよいよ高3生では、強化してきた個の力をベースに自分の適性や強みに合わせて、進みたい学部や大学に向けた学びを深めることや合格力を高めることに注力できる体制を進化させてきました。
その結果、2026年3月の東京大学現役合格生は、前年度比90名増加の905名に。これは、東大現役合格実績を公表している予備校の中で最大かつ、東進史上でも最高となりました。開校以来、変わらず独立自尊の社会・世界に貢献する人財を育てたいと願う東進は、AIと人間力の融合に取り組み、新しい景色へ大きな一歩を踏み出しています。
これからの社会では、知識や技術を持っているだけでは優位になりにくくなるでしょう。大学入試が「答えのある問いに早く正しく大量に答えた」結果を一律に測るものから脱却して、「答えのない問いを自分で論理的に考えて表現する」力や、個々の人間性を多角的に試すものへとシフトしつつあるのは、これからの働き方がそのように変わることを反映している表れとも言えそうです。
採用においても、大学・学生・企業のニーズや時代の変化に沿って見直しが進みます。有償インターンシップや初任給引き上げ、希望する勤務地や職種を考慮した採用制度、兼業の承認など、新しい発想や多様な価値観を妨げないシステムを実施する企業も、次々と登場しています。
経済産業省が2026年に改訂したデジタルスキル標準では、DX(デジタル化による価値創造)が一部の専門人材だけのものではなく、あらゆるビジネスパーソンに関わる基礎的なリテラシーとして位置づけられています。AIやデジタル技術を使いこなしながら、複雑な課題と対峙し、異なる分野からも知見を結びつけ、他者と協働しながら価値を生み出す力に、決まった型やモデルはもはや無いといえるほどです。
「好き」や「得意」や「夢」や「志」はもちろん、我が子が人生を生きるうえで大切に思うことを信じて育む。その人間力で新しい学び方や働き方を自ら自由につくりだす。私たちは、そんな時代を迎えています。保護者の時代の枠組みをあてはめず、お子様のクリエイティブ(創造的)な能力や関心、人の気持ちをくみ取ったり自分の経験から語ったりできるコミュニケーション能力、失敗から学び他者と協力することのできるレジリエンスの高さなど----大学受験や勉強に臨むお子様とのやりとりを通じて、家庭だからこそ自然にできる、生き生きとした温かなサポートをおすすめします。
知識を覚えるだけでなく、問いを立てる。情報を読み解く。価値を生み出す。その積み重ねを、大学入試の先にある未来につなぐ。家庭の会話や習慣の中で、我が子の人間力を支える環境を整えることを今から始めてみませんか。
◆この記事のチェックポイント
□ AIの利便性とリスクをどのくらい理解していますか?
□ 知識や技術を持っているだけでは優位にはなりにくい時代
□ 我が子ならではの人間力を信じて大切に育もう