高校や大学における「キャリア教育」が進んでいます。膨大な情報と多様な価値観が広まり続ける現代は、学ぶ理由や生きる意味を、知識や技術の習得だけですんなりつかみとれる時代ではなくなってきました。
働き方やキャリアの築き方が大変化するなか、「正解を知っているだけの学び」「みんなといっしょの意見」「結果を競うだけの知識や技術」を獲得するだけでは足りない時代の大学進学。まだ、「わが子が良い大学へ行けば安心」とどこかで考えていませんか?
「将来の自分像を描き、必要な学びを選び取っていくには?」と主体的に考えるお子様の考えを理解し、行動をサポートするために、保護者の考える大学進学にも新しい視点を備えておきましょう。
高校で育まれた探究の力をさらに伸ばす場として、大学の変化が始まっています。大学の本来の学びに加えて、職業インタビューや企業見学、自己分析講座などのキャリア科目が設置され、産学連携やインターンシップの機会が拡充されるなど、「やりたいこと」「なりたい自分」を軸とした学部横断的な履修制度や取り組みが実施されるようになってきました。大学は、高度な専門知識を受動的に学ぶだけではなく、学びとキャリアを広く関わらせながら自分を知り経験を重ねていく能動的な研究・実践の場としても進化しています。
この背景には、高校・大学教育の現場で進む「キャリア教育」の拡充があります。終身雇用が過去の話になり、働き方もキャリアの築き方も多様になってきた今、大学で磨きをかけたい「なりたい自分になる力」。そこで、将来の自分像を描き、学びの動機や選択について探究していくプロセスが「キャリア教育」です。
●大学が取り組むキャリア教育
「キャリア」と聞くと、多くの保護者は「職業」「就職活動」といったイメージを思い浮かべるかもしれません。しかし、大学におけるキャリア教育は、個人的なニーズに応えるだけではありません。予測困難で正解の見えない時代を背景に、大学の学びと社会課題の接点を結ぶことも視野に入れた広い概念のもとに行われています。それは「生きる力を育てる教育」であり、「将来どんな仕事に就きたいか」だけではなく、「どうなりたいか」「どう社会に関わっていきたいか」を考える学びです。高校では「総合的な探究の時間」などで、自分の興味や社会課題について調べ、まとめ、発表するといった探究活動が行われてきました。
・自分の興味や価値観に気づく力
・情報を調べ、課題を立て、他者と協働する力
・「なぜそれを学ぶのか?」という目的意識
お子様が大学へ進もうとするとき、これらの探究的な学びを生かしてお子様のキャリア形成も共に考えるなら、保護者は何に着目するか。少なくとも、知名度や偏差値だけでないことはまちがいありません。
保護者から見た大学選びに求められる視点とは何でしょうか。提案したいのは、次の3点です。
何を学べるか(学びのテーマ)
どう学べるか(学びのスタイル)
どこにつながるか(学びの出口)
環境、福祉、データサイエンス、アート……学部名から入るのではなく、どんなテーマを扱っているのか、どういう問いを探究できるのかに注目してみる。
東進TVでチェック!→DX
【熊本大学情報融合学環】
2024年4月新設。半導体からデータサイエンスまで、熊本から世界へDXによる最適化に挑む
少人数でのディスカッション重視か、大規模講義中心か。座学が中心か、課題解決型の取り組みやフィールドワークがあるか、など。どんな体験に学ぶかを検討してみる。
東進TVでチェック!→DX
【福井県立大学海洋生物資源学部】
若狭湾を舞台に水族館設立のためのクラウドファンディングに挑戦したり、環境保全のために魚を守る研究も行う。
実践的なインターン、企業・地域との連携、資格取得支援……「学んだことがどう社会とつながるか」を示している大学は、将来に向けた視野が広がる。
東進TVでチェック!→多文化共生
【国際教養大学】
多文化共生のキャンパスライフが話題。All Englishの少人数授業は地域と世界をつなぐ新たなグローバル教育を目指す。
大学のあり方、キャリアのとらえ方が多様化していく中で、親の役割も変化しています。「どこの大学に行くべきか」を決めるだけではなく、一呼吸入れて、お子様といっしょに「どんな人になりたいか」「何に関心があるか」について問いを立て、一緒に考えていきましょう。気になる大学をお子様の視点で視聴できる東進TVは、保護者にも人気のコンテンツ。大学・学部の注目の取り組みや最新情報など、続々アップされる東進OB現役大学生によるレポートは、これまでに2000万回以上視聴されています。知りたいテーマに合わせて、参考にしてみては。
●東進TVおすすめコンテンツ
https://www.toshin.com/movie/
わが子の興味や関心、好きや得意を理解する立場から、どんな大学生活を送りたいか、選んだ学びがどんな仕事につながるか、家族の会話から気軽に問いを重ねることで、進路選びの軸作りをお子様と一緒に始めてみませんか。何気ない会話に、わが子の夢や希望、かけがえのない志が隠れているかもしれません。正解のない時代だからこそ、親は「判断者」になるのではなく、探究の「伴走者」でありたいものです。
「大学でどんな風に過ごしたい?」
→大学名よりも学ぶ理由を考える
「働くとしたらどう役に立ちたい?」
→どの仕事を選ぶかよりもなぜその仕事を選ぶかを考える
「自分にとってどうしても譲れないものって何?」
→学ぶ価値観、働く価値観、生きる価値観を考える
「あの大学のあの先生、面白そうな研究してるね、話を聞いてみる?」
→興味や関心、好きなことを探求する
東進が毎年開催する「大学学部研究会」は、日本を代表する大学教授が取り組む研究の講義をオンラインで受講できる夏の人気イベントです。会いたい先生や探求してみたい学問、ワクワクする新しいテーマとの出会いが待つ特別な場に、全国から東進生と保護者がアクセスできます。保護者の想像を超える最先端の学びや研究を知ることは、先入観や決めつけを手放すチャンス。これまでに先生方が発信された研究の未来に向けたメッセージの一部をご紹介します。お子様と話してみたいテーマをチェックしてみてください。
〇大学学部研究会で最先端の学びや研究をチェック
日本のハイテク産業の発展は他国の環境破壊の上にしか成立しないのだろうか。資源開発と未来の地球環境保護は相容れないものなのだろうか?
↓ 東京大学大学院工学系研究科 研究科長・工学部長/教授 加藤泰浩先生はこう考える!
レアアース泥開発で資源開発トップランナーに!新規産業を創出し成長を促進
環境破壊型の中国の陸上レアアース鉱山に代わって、南鳥島周辺や太平洋の他の海域で「環境にやさしい」レアアース泥の資源開発が始まっているだろう。さまざまな新素材を開発してものづくり国家を再構築し、日本を成長させることを目指す。
動画の世界が進化して3次元立体映像が実用化したら超能力のような状況も可能になる!?
↓ 千葉大学大学院工学研究院・教授 伊藤智義先生はこう考える!
3次元立体映像が実用化したら超能力のような状況も可能になる!?
3次元立体映像技術で空中に映像を映したり、何もない空間でモノを動かしたりと、まるで超能力のような状況が可能になりつつある。こうした技術をもとに困難を抱える人をサポートする3次元空間制御システムが登場しているかもしれない
コミュニケーションが多様になったデジタル社会。これからの言葉の価値や人の信頼関係を守るコミュニケーションやサービスにはどんなものが考えられそう?
↓東北大学災害科学国際研究所教授 邑本俊亮先生はこう考える!
もっと効果的な情報伝達の手段が開発されているはず!
言葉の理解に心の働きは欠かせない。相手の言葉を誤解したり、何気ない言葉に傷ついたりするのは、受け手の心の特性だ。情報や知識を伝える時に受け手の「認知・心理特性」を考慮することの重要性が広く認識され、認知心理学の研究成果に基づく、よりよい情報伝達方法が開発されていく。
50年後にスマートフォンやSNSは使われているだろうか。未来には、どんなコンピュータやインターフェースが出現しているといいだろう?
↓名古屋大学情報学研究科教授 間瀬健二先生はこう考える!
ヒューマンインターフェース研究は常に10年先を見ている
インタフェース研究は、ユーザに最も近い研究分野。そのため「10年後にはそのコンセプトが実用化されて社会に導入されている」ことを想定して研究が進む。コンピュータやAIが人の生活やスポーツ、教育、介護のコーチ役となる現在の「e-コーチング」研究は、技術レベルの低いものが導入されているだろう。
従来のロボットから進化した最先端のロボットには、どんな機能を搭載させたい?そのロボットは、人の生活をどのように変えるだろうか?
↓東京工業大学工学院機械系教授 鈴森康一先生はこう考える!
ソフトロボット学でロボットと共存する未来
ソフトロボットとは映画のベイマックスのようなロボットで、今までのロボットが重視した速度や精度の点ではダメロボット。しかし、人に優しく融通が利く。従来とは異なる価値観に基づくソフトロボット学から誕生した人と共存するロボットや機械が、もっと活躍しているだろう。
高度化する手術の最先端の現場では、人間とロボットがどんな協力を行っているだろう。未来の医学と共同する学問には、どんなものがあるだろうか?
↓東京医科歯科大学生体材料工学研究所教授 川嶋健嗣先生はこう考える!
医師の手を再現したような祖父とロボットが誕生する!
現在、ロボット研究者の間で大きな注目を集めているのが、生き物のように柔らかな構造を持つソフトロボット。手術や動作支援など空気圧駆動の柔らかさを活かしたさまざまなロボットの研究開発を進めるなかで、それらが手術現場などで活躍することを目指す。
現代社会において疾患や障害とたたかう患者のケアには、どんな専門性や知見が必要だろうか。未来の看護のスペシャリストのイメージは?
↓慶應義塾大学看護医療学部/大学院健康マネジメント研究科准教授 福田紀子先生はこう考える!
リエゾン精神看護は、新たな知見の礎に!
患者の心と身体を総合的にケアし、患者とその家族、医師や医療スタッフをつなぐリエゾン精神看護は、新たな知見ではなくなっているだろう。しかし、100年以上前のナイチンゲールの教えが現代の看護の現場で活かされているように、常にその先の新たな知見の礎となり続ける。
参考:大学学部研究会ダイジェスト
◆この記事のチェックポイント
□偏差値や成績以外の視点で大学を比較する会話を
□「この大学は何を学べて、何につながるか」を保護者も調べてみたい