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「どう生きる」をどう伝えるか①
〜トップリーダーと学ぶワークショップより〜
「金メダルを取るアスリートの育て方」
平井 伯昌(ひらい のりまさ)先生

学びの環境や働く環境が変わりつつある今、時として親子の価値観が合わないことや、意見がぶつかることも少なくありません。しかし、そんな場面もお子様の成長にとっては大切なステップかも。だからこそ、親から子へこれだけは伝えたい大切なメッセージがあります。それは人生を「どう生きるか」。

研究やビジネス、スポーツ界の最前線に立つ“現代の偉人”に話を聴き、共に考える『トップリーダーと学ぶワークショップ』は、東進でも人気の参加体験型コンテンツです。ここでは、貴重な話から人生のヒントを得るだけでなく、参加者同士が学び合い意見を出し合うことで、多様な立場の他者を理解し、新たなアイデアを生みだしています。その極意 は、誰も一方的でないことにあります。

わが子に思いがうまく伝わらないときは、親の意見や行動が一方通行になっていないか見直してみませんか。トップリーダーの言葉から、保護者がお子様と共有したい教育論・人生論を解きほぐしてみるのをおすすめします。取り上げるのは、水泳指導の第一人者、平井伯昌先生によるトップアスリートの指導法です。

東京2020オリンピックで、競泳女子個人メドレーの2冠を達成した大橋悠依選手。日本女子選手が夏季五輪で1大会2個の金メダルを獲得したのは史上初の快挙でした。金メダルを掲げた彼女が真っ先に駆け寄ったのが日本代表平井伯昌監督。平井先生は2019年に『トップリーダーと学ぶワークショップ』で「金メダルを取るアスリートの育て方」について語っています。北島康介選手や萩野公介選手を育成した当時から、その後見事に無名だった大橋悠依選手を金メダルに導いた有言実行の先生が、アスリートに伝えてきたこととは。

profile
平井 伯昌(ひらい のりまさ)先生
競泳日本代表ヘッドコーチ,日本水泳連盟競泳委員長,東洋大学水泳部監督,イトマンスイミングスクール特別コーチ
〇ワークショップテーマ
自分が世界一になるためには(誰かを世界一にするためには)、自分ならどうするか

技術指導のみでは“伸び悩む記録”
水泳を通じて人間指導を重視

平井先生:今回の講義では、一人ひとり個性が異なる選手たちに結果を出してもらうため、私が行ってきた指導法を紹介したいと思います。私の指導方針は、大きく6つに分けられます。そのうちの2つは精神面の指導です。

第1は「技術指導から人間指導へ」という考え方です。ジュニア選手のコーチを始めた頃は、選手の記録を伸ばすことを最重視していました。ところが、なぜかみんな揃って高校2年ぐらいで記録が止まってしまうのです。

そこで、指導法を変えなければと模索するなかで改めて考えたのがコーチの役割でした。コーチは単に水泳の技術だけを教えるのではなく、水泳を通じて人間育成を図ることが大切ではないかと気づいたのです。すると、自然と選手自身が自己責任について考えられるようになり、その結果、失敗を人のせいにしたり言い訳をしたりしないようになりました。自分の行動に責任を負う姿勢は受験勉強にも通じる考え方ですね。

これが第2の方針「精神力の強化」につながります。苦しいときでも本来の力を出すためには、精神力が必要です。精神力は自分に言い訳をしないように心がける習慣で育まれるのです。心技体の中で最も崩れやすい「心」を最初に鍛えれば、たとえ体の調子の万全ではなくとも、その時点での100%の技を出せるようになります。よく「いつもどおりの力を出せばいい」といいますが、そのための土台として強い精神力が欠かせないのです。

“できるかどうか”ではなく
“どうすればできるのか”に集中する

第3は「明確な目標設定」です。誰をコーチするときでも最初に考えるのは、その選手の最大限の可能性。そこで客観的に達成可能な最大目標を設定します。目標設定の段階でコーチが妥協してしまうと、選手が秘めている可能性を100%引き出すのが難しくなります。最大目標が明確になれば、到達するための課題もはっきりします。そこで課題を克服するための具体的な方法を検討し、期日を区切って練習計画を立てるのです。計画は、必ず逆算方式で考えることがポイントです。最終目標を設定し、達成するために必要なステップを細かく分けるのです。計画段階では「できるかどうか」ではなく「どうすればできるのか」に集中します。その際にコーチとして心がけるべきは、まず長所を伸ばして、小さくてもいいから成功体験を積み重ねること。これで選手のやる気に火がつきます。

第4は「チーム制強化」です。コーチ一人では達成が難しい課題、例えばオリンピックでの金メダル獲得などは、何人かの専門家がチームを組んで選手をサポートします。これは教科ごとに専門の先生がおられる予備校も同じシステムですね。

水泳や勉強を通じて、何を成し遂げたいのか
目標と目的を混同しない

第5は「プロセス重視」。要は、途中段階での結果には一喜一憂しないことです。そうではなく、常に最終目標を見すえた上で、今やるべきことに集中する。大切なのは、成功したプロセスでの要因分析です。なぜうまく行ったのかを確認しておけば、逆に思うように行かないときに、どこが悪いのかがわかります。調子には必ず波があるので、良いときに悪いときの備えをしておくのです。

第6が「目標と目的」です。よくこの2つを取り違える人がいますが、目標とはあくまでも目的を達成するための目印です。アスリートにとって金メダルを取るのは目標であり、決して目的ではありません。例えばハンマー投げの室伏広治さんは、ロンドンオリンピックに臨むときの目的を「東日本大震災の被災地の皆さんに勇気と希望を届けること」とし、目標を「復活のメダルを獲得すること」としていました。皆さんが大学受験で合格を目指すのは一つの目標であり、それが最終目的ではないでしょう。大学に合格してから何を学ぶのか、どのように生きていくのかが大切なはずです。

引用/東進タイムズ 2019年1月1日号

平井先生の金メダル指導法

「技術指導から人間指導へ」

技術だけを教えるのではなく人間育成を図る

「精神力の強化」

自分に言い訳をしないように心がける習慣を

「明確な目標設定」

逆算方式で必要なステップ目標達成を続ける

「チーム制強化」

達成が難しい課題には専門チームでサポート

「プロセス重視」

結果に一喜一憂せず成功プロセスを分析する

「目標と目的」

金メダルは人生の目的に繋がる一つの目標だ

○ワークショップMEMO

生きる目的とは何か。平井先生は、一人ひとりに人生の目的があり、それは一人ひとり違うものだと語ります。何を成し遂げようとしているのか、その行為の目指すところが目的だ、と。皆同じ正解はないからこそ、常に自分の目的を考え続ける姿勢が大切。平井先生が取り組んだのは、個性の違う選手たちが自ら育つ指導法でした。進みたい大学や学びを目指すという明確な目標を掲げて、心を鍛え課題を克服しながら、生きる目的へと向かうお子様に対して、保護者はその姿を見守り、長所を伸ばしながら、納得解をつかむプロセスを分かち合うチームでもありたいものです。