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涙の体験記


陸上競技も受験も同じ。あきらめずに、最後まで走り続けてつかんだ逆転合格


陸上競技に幕をおろし、受験という新たな戦いが始まった!


 「これで最後だから、ベストタイムを出して引退したい・・・」
  7月18日、夏の駒沢競技場。中学から6年間続けてきた陸上競技の集大成として、藤本瑛子は走った。インターハイ予選の終わった6月に引退するはずが、何としてももう一回走りたくなったのである。種目は400メートル走。風の中を突っ切るように走る、走る・・・。結果はセカンドベストのタイム。宿願の都大会決勝への進出はならなかった。悔しいが、これで一区切りだ。「ありがとうございました」
  競技場に深くお辞儀をして帰る。いろいろな思い出が頭の中を駆けめぐった。陸上という一つのことに、ここまで打ち込んだ。人生でそうそうできる経験じゃないな。頑張って良かった。そう思えた。
  翌7月19日。藤本のもう一つの戦いが始まった。大学入試に向けての勉強である。
  実は藤本は、高2の冬から東進に通い始めていた。周囲の受験ムードが高まる中で、それまで陸上部中心でまったく勉強していなかった藤本は、さすがに焦りを感じた。物理4点、数学0点ということもあった。「このままではマズい。勉強しなくちゃ」
  それでも、陸上部の活動時間だけは、絶対に削りたくなかった。だから、自分でスケジュールを組んで高速学習ができる東進を選んだのである。
  まず山中先生の「難度別システム英語文法編II」などを受講。受講が進むにつれ、驚いたことにそれまで完全に周囲に置いていかれていた学校の授業が急にわかるようになった。「基礎を勉強するだけで、こんなにわかるようになるんだ」と発見。感動した。
  しかし、あくまでも部活第一だった。学校での授業の他に、陸上部の昼休みの練習と放課後の練習には必ず参加して、午後6時15分ごろに帰宅。30分間で腹筋と背筋を300回ずつこなし、夕食を15分間で食べる。それから自転車を飛ばして東進に行き、午後9時ごろまで授業を受ける。家に帰ってからは復習と予習。小さいころからずっと続けているピアノも必ず1〜2時間は弾く…そんな生活を送ってきた。
  だが7月19日からは、それも終わり。陸上に向けていた全エネルギーを、勉強に注ぎこむことを固く決意したのである。
  志望校は、一時ピアノを弾くために音大に行くことも考えた。しかし結局は早稲田大学に決めた。オープンキャンパスに行って、とても活気があるのに惹かれたこともある。しかし何よりも”いろんなタイプの人間に出会いつつ、広い視野に立って勉強したい”という思いが、藤本の中に強くあった。それには、早稲田が最も適しているように思えたのである。
  高3の夏休み。陸上のインターハイ予選で1学期にあまりできなかった分、頑張って勉強した。夏休みの間に東進で見た映像授業のDVDの数は、なんと70本!
  しかし、すぐには効果は表れなかった。8月末のセンタープレ入試で、日本史は屈辱の36点。そこで金谷先生の「スタンダード日本史」を受講し始めた。先生は日本史の重要事項を独自の方法でカテゴリーに分け、体系的に結びつけてくれる。内容がスーッと頭に入ってきて、覚える労力が半分くらいで済む感じがした。
  12月。日本史の力はかなりついてきた。年末の千題テストでは、校舎内で3位という快挙。しかし藤本はこの時期、ある事実に気がついて愕然とする。それは英語に関することだ。英語も頑張って勉強し、センター試験レベルは完璧になった。しかし、本命である私大の英語が全然わからなかったのである。志望校の過去問をやってみても4割から5割しかできない。「”私大の英語は難しいからわからなくて当たり前”と漠然と思ってきたけれど…。私が行きたいのは私大でしょう?自分はいったい何をやってるんだろう」
  気がつけば、英語だけでなく、古文の単語も覚えていなかった。このままでは合格するはずがない。しかも、すでに12月。「もう無理だよ。どこも受からない」
  涙がボロボロ出てきた。
  そんな時、東進の田中担任が言った言葉が心に沁みた。「現役生は、入試直前まで伸びるんだ。早稲田もまだまだいける、頑張れ!」
  それからの藤本は、ますます勉強するようになった。食事中や入浴中も参考書を傍らにおいて古文の単語を覚え、机に向かうと私大向け英語長文問題集を解きまくった。





受験当日、英語の神様が舞い降りた


 そして迎えた早稲田大学第一文学部の入学試験。藤本はめちゃくちゃ緊張していた。カバンの中には、合格祈願のお守りが数個と母が作ってくれた紅い折り鶴があった。
  一番心配な英語の時間。できるんだろうか…と不安だった藤本の頭の中に、なんと英語の神様が舞いおりた。頭文字から英単語を連想する配点の高い問題。過去問でやった時にはいつも全然解けなかったのに、今日はどんどんわかる!
  そして日本史。ある選択問題で”過去問より問題が難しくなっている…”と焦りを感じた。
  しかしそこで金谷先生の言葉が浮かんできた。「どんな難しい問題でも、基礎を組み合わせて考えれば裏から解ける」。
”そうか”と思い直し、5つあった選択肢のうち3つは基礎的な知識から消去できた。あとは2つから絞り込めばいい。
  国語。現代文は得意だ。あまり自信のない漢文では、なんと読んだことのある文が出てきた。これは、ほぼ完璧に解けた。
  試験のあと、力を出しきり、頭を使いきった心地よい疲労感が藤本にあった。その日の夜は久しぶりに熟睡した。
  いよいよ合格発表の日がやってきた。試験当日に力を出しきったものの、合格する気がしていなかった藤本。電話で結果を聞くことになっていたが、発表の時間になっても「聞くのいやだよ…」と寝ていた。やがて半分寝呆けた状態で電話をかけると、「おめでとうございます」の声。一瞬「あれ?」と思ったが、喜びがジワジワこみあげてきた。そしてダッシュで階下に行って「受かった!」と家族に叫んだのである。
  陸上競技のように、いくつもハードルを越えた受験勉強であった。そんな中で藤本が強く感じたのは”あきらめないことが大事なんだ”ということ。あきらめたら、そこで終わってしまう。しかし強い意志と希望を持って頑張り続ければ、努力の海から生まれた神様が、思わぬプレゼントをしてくれるのである。





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    第一文学部
    藤本 瑛子さん