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東大日本史問題演習

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知性を発揮すべき者のために

 東大日本史とは,基本的で個性的な論述問題の集合体だと形容してよいだろうと思います。ものごとの理解度が試される「基本」に,出題者の「個性」が加味されるため,重大な何かが欠落した受験生は,しばしば入試本番で深刻な危機に直面することを余儀なくされてきました。当然のことながら,結果として生じる得点差は予想以上に大きくなっています。
 この『東大日本史問題演習』は,こうした東大入試の現実に正確かつ綿密に対応することを意図した,とてつもなく知的に贅沢な問題集です。
 具体的には,出題者である東大教員の専門分野や研究テーマを勘案しながら,慎重に過去問を選択し,さらに予想問題を準備しました。「思考のためのヒント」や「解説・解答」も,基礎学力の養成を重視しながら,同時に入試本番で要求される思考回路の働かせ方を身につけてもらうことを,常に念頭において執筆されています。本書を有効に活用してくれれば,東大教員の評価を高める答案作成能力を深く着実に開発していくことができるはずです。
 『東大日本史問題演習』執筆者の共通の願いは,東大をクリアすることではなく,東大がスカウトしてでもほしがるような「できる」受験生を育てること。このことの重大性にハッと気がついた時,あなたの東大合格はほとんど決まったといってよいでしょう。


本書の基本的な構成

 この『東大日本史問題演習』は,別冊(問題編)と本冊(解説・解答編)で構成されています。別冊(問題編)には,時代順に並べられた過去問20題と本番の形式に合わせた予想問題16題を掲載しました(全36題)。本冊(解説・解答編)においても,類題として過去問がさらに15題登場してきます。
 また,別冊(問題編)巻末に,全問題についての「思考のためのヒント」を明示すると同時に,本冊(解説・解答編)には,基礎学力の充実に有用な説明に加えて,教科書の範囲を超える記述も積極的に盛りこみました。それらはすべて,東大入試の現実に本格的に対応するための措置だと考えてください。
 なお,「予想問題実践編(第1回~第4回)」でとりくんでもらうことになる予想問題は,本書の執筆者だけではなく,日本史を専門とする大学教員・予備校講師,さらに博士課程(日本史学研究室)に在籍する東大大学院院生(作題時)の協力を全面的に得ながら,時間をかけて作成されています。内容・難易度の両面で,入試本番の出題水準に匹敵する問題がそろっています。


問題研究のもつ有効性

 誰もが強調することですが,東大受験生にとって,とりわけ大切なのは過去問の研究です。冷静かつ懸命に過去問と対峙する時間を,十分にとってください。
 それでは,本書に掲載したような予想問題まで学習の対象にする必要はあるのでしょうか。
 答えをいきなり提示します。あります。絶対に,あります。なぜなら,「予想問題実践編」の問題,解答・解説・採点基準は,どのような参考書よりも東大の出題教員に密着したものになっているし,どのような問題集の東大型論述問題よりも深い思考の時間を経て熟成された問題群だし,どのような模試よりも緻密で専門的な検討を重んじてきた歴史を有しているからです。つまり一言でいってしまえば,そこには,入試本番の問題に負けるとも劣らない魂がこもっているのです。


基本的なトレーニング方法

 では,論述力を飛躍させるために,どのようなトレーニングを重ねればよいのでしょうか。
 やるべきことは,はっきりしています。それは,日本史そのものの実力を向上させる努力を最後までつづけながら,同時に,身につけた実力をアウトプットするトレーニングを実行していくことです。
 ただしそこには,いくつかの障害も横たわっています。まず書いてみるという作業は大変だし,日本史の実力が不十分なままでは,そもそもアウトプットが困難になってしまうでしょう。しかも,自習室や自宅で入試本番と同じような緊張感を再現するのは至難の業です。
 日本史の実力と自らの論理的な能力とを別個に鍛えることで,この壁を乗りこえる必要があります。①事前に十分な問題研究をおこなう②入試本番よりも短い時間を設定して一気に解答をまとめてみる,この2点をトレーニングの基本にしてください。
 トレーニング①で,日本史の実力が不十分なままでのアウトプット,という事態を避けることができます。理解度と知識量が高い水準に到達していれば,短時間でのアウトプットが可能です。緊張感をそれほど持続させなくてもよくなります。
 注意しておいてほしいのは,トレーニング②のやり方です。必ず,問題だけを目の前にして書いてみてください。


本書の戦略的な活用法

 したがって本書の活用法は,原則として,次の三つのステップを踏むことになるはずです。そのうえで,みなさんの状況に応じた工夫を重ね,本書をボロボロになるまで使いこんでください。
 第一のステップは,別冊(問題編)を文字どおり吟味すること(全36題)。問題の要求・限定を確実に読みとり,与えられた文章・史料などの分析を全力で試みてください。手ごわい問題がそろっています。でも簡単にあきらめてはいけません。基礎的な部分での理解や知識に不足があれば,常にそれらを教科書などで補おうとしながら,必要に応じて,別冊(問題編)巻末の「思考のためのヒント」も活用してください。
 第二のステップは,答案を自力で作成することです。すでに述べたように,その際には別冊(問題編)に用意された問題のみと面と向かってください。できればこの過程は,入試本番と同様,一気に(1題20分以内で)終わらせるとよいでしょう。
 そして最後のステップは,解説・解答(+採点基準)の熟読です。そこでは,論述力の増強に欠かせない理解と知識と,入試本番での得点力を決定づける解答の論理とを,丁寧かつ徹底的に点検してください。

 もう,何が大切なのかわかりましたね。東大受験生の努力すべき方向は,いつの時代も変わることはありませんでした。何よりも自分を信じて,アタマをよくすることに全力を注げばよいのです。
 鍛えあげられた頭脳だけが,あなたの未来を確実なものにしてくれます。

野島 博之
井之上 勇