一般・教育


2011年度版 新 大学受験案内 夢をかなえる172大学

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創刊4年目に寄せて
 2007年、受験生に人気の高い125大学だけに絞り込んだ『新大学受験案内』を創刊したところ、予想以上の評価をいただいた。
 今年度は創刊4年目、172大学を厳選し、各大学の進路・就職状況や取得できる免許・資格情報をいっそう充実させた。
 類書がいくつもある「受験案内」関連書籍の分野に、なぜ、本書は「新規参入」したのか。それは、皆さんに大学・学部選びをもっと「真剣に」、「正しく」行ってほしいからである。そして、そのためにはもっともっと多くの有効な情報を提供しなければならないと思ったからである。
 この間に何が起きたか。まさに歴史の転換期を象徴するような出来事が次々に起きた。間違いなく中国やインドをはじめとするアジアの新興国が、先進国の握ってきた主導権を奪いつつある。その中で、日本は最も衰退の度合いが激しい国である。超高齢社会に備えて「貯金」をしておかなければならないのに、それを支える人口は減少し、頼みの綱ともいうべき輸出力が低下した。そのうえ、国と地方を合わせて862兆円もの借金を抱えて、いわば借金地獄に陥っている。
 こういう時代に生まれ合わせた私たちは、どのように人生設計をしていけばよいのだろうか。働いても働いても給料は上がらず税金だけが増え、懸命に努力して開発した製品が売れない・・・・・・。右肩下がりの時代が一生続くとすると・・・・・・。
 開き直るしかない! 若者らしく、潔く、もう国の保護や支援を当てにするのはやめて、世界を相手にした、本当に人々のためになる仕事をしよう。そのためには、1日に15時間も勉強している中国やインドの若者以上に力をつけるしかない。
 大学はそういう力をつけられる場だ。苦痛で嫌々仕方なくやる勉強は続かない。大学でも社会でも、人からやめろと言われてもやりたくて仕方がないんだ!という自分の「天職」(Life Mission)を見つけよう。

夢は大きく、目標は高く。――はしがきにかえて

大学選びとは、
いつ、どのようにするべきか

 人間は夢がなければ生きていけない存在である。その夢を人はどうやって見つけているのだろう。学校も親も与えてはくれない。自分で見つけるしかない。では、いつ見つけるのか。実は、本心では物心ついてからずっと探し求めているのである。
 小学生の頃までは夢はいっぱいあっていい。やってみたいこと、好きなことがたくさんあればあるほどいい。「好きこそものの上手なれ」のことわざ通り、嫌々やるよりも好きでやる方が10倍も学習効率が高まることが脳科学で明らかにされている。
 中学、高校と進むにつれて、本当にやりたいことに絞り込んでいって、大学受験の前までには1つの方向に絞り込むのがよい。大学はその夢を実現するための力をつける場だからである。例えば、弁護士と医師の両方になることや、国際政治学と天文学を同時に専攻することは実際のところ困難であるだろう。
 大学・学部選びは、自分が一生かけて取り組む「天職」を決定する第一段階である。そして、それは願書を出す直前ではなく、小・中・高を通してずっと探し求めてきた結論として行うべきものである。
 とりあえず、自分の「天職」が見つからないので、受験科目に苦手な数学がない経済学部や商学部を選び、首尾よく入学し、在学中の4年間に将来を考える……もし今時こういう人がいたら危険である。偏差値ランキング表で入れそうな大学を選んで、受かったところに入る……相当な確率で4年後に悲劇が待ち受けているだろう。
 【1】偏差値だけで選ぶ。
 【2】未来像を描かず、高校までの経験の延長線上で選ぶ。
 【3】自分の意志でなく、まわりに合わせたり、親や先生の意見で選ぶ。
 こうした選び方が失敗するのは、大学という教育機関が、高校とは全く異なるからだ。大学は、入試で求められる点数を取って、あとは学費を納めさえすれば入れる場所だと思っていると、取り返しがつかないことになる。大学というところは、やりたいことが明確にあって、その目的を達成するために入って来たものだとして学生を扱う。
 だから、先ほどの例のように、数学が受験科目にない、という理由で経済学部や商学部に入った人には、毎日学ぶことになるであろう経済学の授業は苦痛であろう(経済学では数学の知識を用いる)。そもそも経済学部と商学部で学ぶ知識が、自分のやりたい仕事に直結するかどうかについても考えてみる必要がある。公務員になる、税理士になる、起業家になる……それぞれ自分の将来に対して、どの学部がどう自分の将来にとって役に立つのか、よくよく調べてから願書を出すべきである。そのうえで、まわりの人たちに広く意見を求めることが必要だ。
 近年、大学は激変している。競争が激化し、生き残りのために必死で改善努力をしている。昔の経験や古い情報やイメージで意見する人の話は当てにしてはならない。しっかりと最新の情報にもとづいて判断することが必要なのだ。

大学生活の
「意義」

 「好きなことをやっていてもよい」といわれた大学時代に、自分自身が何をしたかによって、人生が決まるといっても過言ではない。難関大学に入ってもどの授業にも本気になれず、自ら進んで本を読むでもなく、適当にバイトをしてサークルの友だちと騒いで終わった学生と、偏差値は低くても大学入学後の4年間を必死で何かの資格試験に取り組んだ学生とでは、卒業後の人生は天と地ほどの差となる。
 つまり、前者は管理してもらわなければ何もできない人間であることを、後者は自分の将来像を自ら描き、その実現のために「自律」できる力を持っていることを立証したのである。
 もし、その延長線上に生きていったら、両者の間には天と地ほどの能力と社会的役割と報酬の差が生じるであろう。大学時代はきわめて重大な人生の岐路となるのである。

自分にも夢がもてるのか
「天職」はあるのか

 人は誰でもかけがえのない天稟(てんぴん:天から授かった資質)を持って生まれてくる。そして、一人ひとりに必ず「天職」がある。それを見つけるには、常にそれを自ら追い求める姿勢と、自ら論理的に考え抜く力が要求される。その2つがあれば、人は誰でも「天職」に出会うことができる。そうした人間に与えられた能力はserendipity(セレンディピティ)と呼ばれている。
 以前、「世界に一つだけの花」という歌が流行った。「ナンバー1でなく」てもいい、人は皆世界に1つしかない「オンリー1」だと歌う。人は十人十色、性格も能力も異なる。だからこそ、社会的に孤立するのではなく、互いに良いものを持ち寄り補い合うことで、はじめて個々が活かされていくという。そこで、自分の役回りは何なのか。人に関わることによって、人を鏡として「自分を知る」ことが求められるのである。


「夢」は
かなえられるか

 夢は実現できるのか。およそ人類が描くことができた夢は、ほぼ実現してきたといえる。しかし一方で、ある人は過去に抱いた夢はほとんど実現しなかったとつぶやく。夢は実現するのか。実現できる夢とできない夢があるのか。そもそも実現できる人とできない人がいるのか。
 夢はきちんと描けさえすれば、どんな夢でも、誰でも実現できる。できなかった原因は何か?カンタンだ。途中で投げ出したからだ。諦めない限り、「夢は実現できない」という結果は絶対出ない。
 けれども、夢はただ待っているだけでは永久に近づいて来ない。実現するためには、ありったけの知恵と人脈と体力を駆使して、「夢の設計図」を作り、実現までの工程表に人と資金を充てて実行していかなければならない。
 死ぬまでかかっても実現できない場合は、後継者を育ててMissionを引き継いでもらう。そこまで譲歩すれば、たいていの夢は実現できるはずだ。ということは、最大の問題は、自分の夢を見つけ、夢を描く力を持てるか否かである。大学選びをきっかけとして、本書が受験生の皆さん自身の「天職」を見つけることにつながればと祈る思いである。

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