厳しい時代を「自ら求め、自ら進んで」生き抜くために
大きな「夢」を描き、「志」を持とう!
大学選びについて、念願の志望校合格を勝ち取ったにもかかわらず、入学してから後悔してしまう3つのパターンがあります。
1つ目は、
偏差値という「点」で選ぶことです。例えば、ある大学の経済学部より偏差値が低いという理由で商学部を選ぶというようなケースです。この2つの学部は、目指す目標にも実際の研究内容にも偏差値以上に大きな隔たりがあります。
2つ目は、
高校で学んだ知識の「延長線」で選ぶことです。例えば、数学が得意だから数学科を選ぶというようなケースです。もし数学の研究者として博士号を取得するのであれば、現在の学会で探究されているテーマは非常に細分化されていることを、もし教育者になるのであれば人材を育成するという別の能力が問われることを、また金融関係の企業では情報工学系の学部・学科が人気であり、就職実績も高いことなどを知っておくべきです。
3つ目は、
安易に周囲の人の意見で進路を決めてしまうことです。もちろん高校生の限られた知識や経験で、間違いなく後悔しない大学選びができるとは限りません。けれども、自分の人生を自分で決めるという覚悟=人間としての《核》がなければ、ちょっとしたことで挫折したり、他者に責任転嫁したりすることになりやすいのです。これが最も危険なことではないでしょうか。
大学選びは、多次元的に考えなければなりません。それは、偏差値という“ものさし”の目盛りを読み取るだけで終わってしまうような単純なものではないのです。いわば変数が6つも7つもあるような関数の最大値を求めることくらいに難解な問題といえるでしょう。
かつて「一億総中流社会」といわれた日本には、今、格差社会が到来したといわれています。その行き着く先は、年収における貧困層と富裕層の所得格差が15倍前後もあるアメリカ並みの社会です。でも、これはまだ序の口です。世界には年収3万円前後の人々がたくさんいる一方で、年収数億円の年俸でヘッドハンティングされる「人財」がいます。今後、ますます雇用に国境がなくなれば、この格差もまた拡大することでしょう。
お金の問題だけではありません。インドや中国、ブラジルなど経済成長が著しく、また多くの(労働)人口を抱える新興国では、猛烈に勉強して世界に打って出ようとするチャンレンジ精神旺盛な若者たちが、「明日」を夢見て努力を続けています。
国境という防波堤が低くなれば、彼らが競争相手になります。「ただ大学を卒業しただけの大卒」では、やりがいのある仕事であっても高い評価をもらえるとは限りません。これが「グローバリゼーション」といわれるものの実相です。
大学受験を控えた「今」「ここ」で、では、まずどのような“一歩”をふみ出せばいいのでしょうか。それは、
今から入学後の自分の大学生活をイメージすること、さらには卒業後の社会人生活をイメージすることです。皆さんの人生は、大学に入学した時点で決まるものではありません。大学を卒業するまでにどのような力をつけるのかによって決まるのです。
高校までは、一定の決められたルールとごく限られた能力だけで評価が下ります。しかし、大学を卒業したあとの社会では、専門知識の有無や人脈、人を説得するコミュニケーション能力、リスクを負う勇気、人を思いやる度量、決断力、リーダーシップなど、多種多様な力が求められます。それらは、学科試験では測れなかったために、これまでは表面化しなかった力です。また、薬剤師、税理士、建築士などは、資格がなければその分野の仕事をすることはできません。車を買う力はあっても、無免許では運転することができないのと同じです。逆に、努力して資格試験に合格すれば、学歴は関係なく有資格者として堂々たる仕事ができるのです。
皆さんの特権は、将来どんな仕事にも就くことができる可能性を持っていることです。もし大学入学前から明確な目標を持って努力すれば、たいていの仕事に就くことができる力を身につけられるでしょう。逆に考えると、
今からの数年間が人生を分ける岐路になるかもしれないのです。
大学は、目的を果たすための道具に過ぎません。しかし、その大学には皆さんの目標を果たしてくれるあまたの道具と資源(リソース)がそろっています。時代の課題に対応するために積極的に学部・学科の新設や再編成を行う大学、将来に向けて新しい取り組みをしている大学、研究だけでなく教育でも成果をあげようと学生に対する学習・就職支援に力を入れている大学は、決して少なくありません。それらを
「自ら求め、自ら進んで」見つけ出してください。自分の《核》を持って、最大限に使いこなせば、きっと皆さんの「夢」は実現します。
大学は、皆さんが一生の生き方や一生やり続けたいことを見つけ、そのスタートを切るところとなるのです。「人」を決めるのはその人自身が描いた将来像であり、そうした「夢」を描く力です。本書との出会いが、皆さんの「夢」を描く契機となり、
厳しい時代を逞しく生き抜く力を得るために、「志」を持つ一助になることを心から祈ります。
創刊8年目に寄せて――『新大学受験案内』制作スタッフ一同