データで見る大学受験
多様化する大学入試に備えたいこと
少子化の影響で、高等学校等の卒業者数は減少傾向にあります。2000年には132万8,940人だった高等学校等卒業者は、2024年には92万3,800人となり、2000年比69.5%までに減少しました。一方で、大学・短大等の現役進学率は上昇傾向が続いています。2000年の45.1%から2024年は62.0%へ。過去最高を更新しました。
18歳人口は減少したものの、国公立大学や大都市圏の大規模私立大学の人気は依然として高く、多くの志願者を集めています。しかし地方に目を向けると、中小規模の大学で「定員割れ」の状態にある大学も少なくありません。このような、大都市圏の大規模大学に志願者が集中して入学者が定員を超過し、地方の中小規模の大学に志願者が集まらず定員割れとなる二極化は、大学受験の課題となっていました。
その対策として、2016年から私立大学が入学定員よりも多く入学者を受け入れる状況を正すための補助金不交付措置の厳格化、2018年には東京23区の大学の定員増を原則10年間禁じる法制化などが図られました。しかし、2024年には私立大学における定員割れが過去最高の59.2%に。募集停止や閉鎖を決める大学も出てくるなか、2023年にはデジタル・グリーン分野の学部設置の継続的な支援の本格化が始まるなど、大学を取り巻く環境は変化し続けています。
このような状況下で、大学の大胆な改革も進んでいます。親の世代にはなかった新しい入試形式によるマッチングのチャンスや学部や学科を横断する多様な学び方などが、さまざまな大学で導入されています。古い価値観やイメージのままでお子様の大学選びに介入せず、お子様の関心や意欲ファーストの観点から、大学や学部の取り組みや変化を広く客観的にチェックしてみてください。
記事の中身をチェック↓
・親が知るべき大学入試の今
①デジタル・グリーン人材育成強化
・親が知るべき大学入試の今
②地域格差対策と大学・学部・学科の改編
・どう見る?「学校推薦型選抜」と「総合型選抜」
親が知るべき大学入試の今
①デジタル・グリーン人材育成強化
東京23区では現在、大学の定員増を原則10年間禁じる地域大学振興法が成立しており、2028年3月末までの10年間は定員の増加が禁じられています。これにより、新しい学部・学科の設立は困難となっていました。しかし、成長分野の人材育成を目指して、2024年度からデジタル系の学部・学科に限り定員増が認められることになりました。
デジタル分野の人材不足が指摘されている日本。2030年には先端IT人材が79万人足りなくなるとの予測もあり(経済産業省)、文部科学省では、3000億円の基金を活用して、大学による「デジタル」「グリーン」等の特定成長分野の学部設置等を継続的に支援する事業案を公表しています。理・工・農の3分野を対象に、最長10年間、20億円程度までの支援が予定されたことで、特定成長分野に関連し、デジタル・グリーン分野の人材育成を担う学部・学科の増加が進んでいます。
親が知るべき大学入試の今
②地域格差対策と大学・学部・学科の改編
日本私立学校振興・共済事業団の調査で、2024年に定員割れとなった私立大学の割合は、過去最高の59.2%であることがわかりました。収容定員8,000人以上の大学で入学定員超過率1.10倍以上となった場合は補助金が受けられないという措置は、入学者の二極化を避けるために2018年度からより厳格化されていましたが、2023年度以降は入学定員超過率の基準が廃止となり、収容定員超過率のみで判断されることになりました。
2024年12月の学校基本調査では、大学の数は813校で過去最高となっています。しかし今後も入学者数減と定員割れが続くと、経営が立ち行かなくなる事態に発展する大学が出ないとも限りません。学生の意欲に応える対策を定めない大学の淘汰は、今後、18歳人口の減少の継続とともに避けられない状況です。その対応や取り組みも大学選びの重要な視点と言えるでしょう。なかでも、世界的に遅れをとっている女子の理系人材育成を目的とした女子枠の創設や、理系だけでなく文系の分野からアプローチする文理融合型の学びなど、多くの大学で予定されている理工系学部や情報系学部の新設はしっかりチェックを。成長分野で学ぶ機会をお子様と検討するのも良いでしょう。
入学者は過半数に広がる
「学校推薦型選抜」と「総合型選抜」
「大学入学共通テスト」がスタートし、一般入試は「一般選抜」に、推薦入試は「学校推薦型選抜」に、AO入試は「総合型選抜」に変更されました。2024年4月入学の大学入学者数は61万3,453人。1年生のうち、学校推薦型選抜・総合型選抜で入学した割合は51.0%となり、昨年に続き半数を超えています。
学力試験を課さないケースも多かった推薦入試・AO入試は、私立大学では早くから活用されていましたが、学校推薦型選抜・総合型選抜は、各大学が実施する評価方法(小論文、プレゼンテーション、資格・検定試験の成績等)か、大学入学共通テストの少なくともいずれか一つによる評価が必須。個人の特別な能力や実績だけではなく、大学が求める学力も合わせた多面的な選抜方法によって、何をどのように学んできたか、大学生活でどのように生かしていくかを評価する未来志向にシフトしていることがわかります。選抜時期の柔軟化やオンライン面接の活用も進み、国公立大学での地域枠や学校推薦枠導入も広がりつつあり、国公私立大学全体で増加傾向となりました。
大学にとっては、アドミッション・ポリシーに合ったモチベーションの高い学生を入学させて、教育や研究に好影響をもたらすメリットが、受験生にとっては、長所や能力に合った試験方式を選んだり同じ大学を複数回受験したりするなどの選択肢やチャンスが増えるメリットが。親は過去の推薦入試やAO入試のイメージや経験にとらわれず、大学が工夫を凝らした入試方式の特色や狙いをしっかりと理解することが大切です。
国公立大学 総合型選抜 募集人員年別推移
私立大学 総合型選抜 志願者数推移
大学にとっては、アドミッション・ポリシーに合ったモチベーションの高い学生を入学させて教育や研究に好影響をもたらすメリットが、受験生にとっては、長所や能力に合った試験方式を選んだり同じ大学を複数回受験したりするなどの選択肢やチャンスが増えるメリットが。様々な方法で受験生の総合的な学力評価を行う学校推薦型選抜・総合型選抜のあり方は、受験生と大学の双方に効果が期待されています。
各大学は、学力面の選抜に加えて、求める学生像にリーチする独自の選抜方法に工夫を凝らしています。大学入試=一発勝負ではなく、日頃の学習・生活・取り組みが生かされるものと考えて、お子様の強みや興味に関心を。もちろん、コンクールや大会の受賞歴といった特別な実績がすべてではありません。東進では、進学情報をはじめ教育講演会や説明会で、常に最新の情報をお知らせしています。学校推薦型選抜・総合型選抜に挑戦するお子様に向けた対策講座も人気です。「出願」や「二次選考」それぞれに必要なポイントをフォローし、一人ひとりの実践力を引き出します。
学校推薦型選抜の推薦入試からの変更点
①各大学が実施する評価方法等(例:小論文、プレゼンテーション、口頭試問、実技、各教科・科目に係るテスト、資格・検定試験の成績等)、大学入学共通テストの少なくともいずれか1つによる評価を必須化。
②本人の学習歴や活動歴を踏まえた「学力の3要素」に関する評価を記載すること、大学が選抜でこれらを活用することの両方を必須化。
総合型選抜のAO入試からの変更点
大学入試のスケジュール(2026年入試予定)
※私立大学は大学ごとにスケジュールが異なるため、各校の最新情報を確認してください
もっと詳しく!
「大学入試のしくみ〜特別選抜(学校推薦型・総合型選抜)」