わが子が特性、個性、能力を発揮し
将来へとつながる
大学入試を考える
少子化の影響で、高等学校等の卒業者数は減少傾向にあります。2000年には132万8,940人だった高等学校等卒業者は、2023年には96万6,957人に減少し、2000年比で72.8%まで減少しました。一方で、大学・短大等の現役進学率は上昇傾向が続いています。2000年の45.1%から2023年は60.9%へ。過去最高を更新しました。
18歳人口は減少したものの、国公立大学や大都市圏の大規模私立大学の人気は依然として高く、多くの志願者を集めています。しかし地方に目を向けると、中小規模の大学で「定員割れ」の状態にある大学も少なくありません。現在の大学受験では、大都市圏の大規模大学に志願者が集中して入学者が定員を超過し、地方の中小規模の大学に志願者が集まらず定員割れとなる、二極化が進行していることがわかります。
このような状況下で、大学も学部や学科を改変したり、入試形式を増やしたりするなど、大胆な改革を進めています。大学受験の目的は、入学することだけではありません。グローバル化・AI化・少子高齢化で大変化する社会を生きるお子様が、人生に夢や志を持って学ぶスタート地点に立つことでもあります。子どものためによかれと、親が先導したり古い価値観で決めつけたりすることのないよう、大学の変化、入試の変化を数字でチェックしてみましょう。
記事の中身をチェック↓
1.親が知るべき大学入試の今
①デジタル・グリーン人材育成強化
2.親が知るべき大学入試の今
②地域格差対策と大学・学部・学科の改編
3.どう見る?「学校推薦型選抜」と「総合型選抜」
親が知るべき大学入試の今
①デジタル・グリーン人材育成強化
東京23区では現在、大学の定員増を原則10年間禁じる地域大学振興法が成立しており、2028年3月末までの10年間は定員の増加が禁じられています。これにより、新しい学部・学科の設立は困難となっていました。しかし、2023年2月に、デジタル系の学部・学科に限り2024年度から定員増が認められることになりました。
デジタル分野の人材不足が指摘されている日本。2030年には先端IT人材が79万人足りなくなるとの予測もあり(経済産業省)、文部科学省では、3000億円の基金を活用して、大学による「デジタル」「グリーン」等の特定成長分野の学部設置等を継続的に支援する事業案を公表しています。理・工・農の3分野を対象に、最長10年間、20億円程度までの支援が予定されたことで、特定成長分野に関連し、デジタル・グリーン分野の人材育成を担う学部・学科の増加が予想されています。
親が知るべき大学入試の今
②地域格差対策と大学・学部・学科の改編
日本私立学校振興・共済事業団の調査で、2023年に定員割れとなった私立大学の割合は、半数を超える53.3%であることがわかりました。これまで、私立大学は入学辞退者が出ることを見越して合格者を多めに出していましたが、2018年度以降は入学者数が入学定員の1.10倍を超過しないよう合格者数を減少させています(収容定員8,000人以上の大学の場合)。
入学者数減と定員割れが続くと、授業料収入が減少し、大学の経営が立ち行かなくなる事態に発展しないとも限りません。2023年12月の学校基本調査では、大学の数は810校で過去最高となる一方、学生の定員に占める在学生の割合を示す定員充足率は3割超が90%を割り込み、そのうちの8割が赤字経営になっているという試算もあります(財務省)。学生を増やす対策を定めない大学の淘汰は、今後、18歳人口の減少の継続とともに避けられない状況です。
大学の取り組みも進んでいます。24年度には東工大と東京医科歯科大の統合による東京科学大学の開設をはじめ、多くの大学で理工系学部や情報系学部の新設が予定されています。なかでも、世界的に遅れをとっている女子の理系人材育成を目的とした女子枠の創設や、理系だけでなく文系の分野からアプローチする文理融合型の学びにも注目です。
入学者は過半数に広がる
「学校推薦型選抜」と「総合型選抜」
「大学入学共通テスト」がスタートし、一般入試は「一般選抜」に、推薦入試は「学校推薦型選抜」に、AO入試は「総合型選抜」に変更されました。様々な方法で受験生の総合的な学力評価を行う大学受験のあり方は、受験生と大学の双方に効果が期待されています。2023年4月入学の大学入学者数62万4,615人。1年生のうち、学校推薦型選抜・総合型選抜で入学した割合は50.7%となり、ついに半数を超えました。
学力試験を課さないケースも多かった推薦入試・AO入試は私立大学では早くから活用されていました。学校推薦型選抜・総合型選抜は国立大学でも広がりつつあります。各大学が実施する評価方法(小論文、プレゼンテーション、資格・検定試験の成績等)か、大学入学共通テストの少なくともいずれか一つによる評価が必須となり、個人の特別な能力や実績だけではなく、大学が求める学力も合わせた多面的な選抜方法によって、何をどのように学んできたか、大学生活でどのように生かしていくかを評価する未来志向にシフトしているのです。
大学にとっては、アドミッション・ポリシーに合ったモチベーションの高い学生を入学させて、教育や研究に好影響をもたらすメリットが、受験生にとっては、長所や能力に合った試験方式を選んだり同じ大学を複数回受験したりするなどの選択肢やチャンスが増えるメリットが。親は過去の推薦入試やAO入試のイメージや経験にとらわれず、大学が工夫を凝らした入試方式の特色や狙いをしっかりと理解することが大切です。
大学入試のスケジュール(2025年入試予定)
※私立大学は大学ごとにスケジュールが異なるため、各校の最新情報を確認してください
各大学は、学力面の選抜に加えて、求める学生像にリーチする独自の選抜方法に工夫を凝らしています。東進では、進学情報をはじめ教育講演会や説明会で、常に最新の情報をお知らせしています。学校推薦型選抜・総合型選抜に挑戦するお子様に向けた対策講座も人気です。コンクールや大会の受賞歴といった特別な実績は問わず、「出願」や「二次選考」それぞれに必要なポイントをフォローし、一人ひとりの実践力を引き出します。
学校推薦型選抜の推薦入試からの変更点
①各大学が実施する評価方法等(例:小論文、プレゼンテーション、口頭試問、実技、各教科・科目に係るテスト、資格・検定試験の成績等)、大学入学共通テストの少なくともいずれか1つによる評価を必須化。
②本人の学習歴や活動歴を踏まえた「学力の3要素」に関する評価を記載すること、大学が選抜でこれらを活用することの両方を必須化。
総合型選抜のAO入試からの変更点
①調査書等の出願書類だけでなく、各大学が実施する評価方法等(例:小論文、プレゼンテーション、口頭試問、実技、各教科・科目に係るテスト、資格・検定試験の成績等)、大学入学共通テストの少なくともいずれか1つの活用が必須化。
②志願者本人の記載する資料(例:活動報告書、入学希望理由書、学修計画書等)の積極的な活用。
もっと詳しく!
「大学入試のしくみ〜特別選抜(学校推薦型・総合型選抜)」