『文理を超えて時代の課題に挑む!大学の研究最前線』
答えのある教科の学びを身につけるのが高校の学びだとすると、答えのわからない問いを取り上げて探求していくのが大学の学びです。これまでの常識や枠組みが大きく変わる今、大学では予測のできない未来に向けて新しい価値観やシステムの構築に取り組む研究が進んでいます。
さまざまな不都合や制約のある中で、実験や調査に挑戦する。歴史の検証やデータの積み重ねから、新しい思考や発見を得る。それがお子様の人生のビジョンを広げ、未来の社会を作っていく。大学受験を考えるとき、親の世代の感覚で理系・文系に分けたり、成績を前提に絞り込んだりするだけではなく、横断的に学べる学部の取り組みや、研究の先進性・独自性からもじっくり検討してみましょう。
日本の研究力向上に貢献する大学の学部や機関による最新の研究をダイジェストで紹介します。「こんなアプローチがあるのか」「研究っておもしろい」そんな視点から見直してみると、ワクワクするような思わぬ選択肢が見えてきます。気になる研究をお子様と一緒に調べてみては。
人々が相互に関係して作り上げてきた実社会を研究対象として社会の諸事情を系統立て、説明を試みます。政治、経済、法律など、生きていくうえで必要な社会制度を扱い、人々がよりよく共生できる社会を目指します。
名古屋大学●刑事法
「事件から考える『無罪推定』の理想と『有罪推定』の現実」
社会問題を考えるモノサシの一つに「法的視点」がある。法に基づいて物事を捉えると問題点が整理され、感情論では得られない結論が導き出される。実際の刑事事件を題材に、法的視点を通すことで変わる景色とは。
一橋大学●社会学(ジェンダー研究・軍事社会学)
「ジェンダーから問う戦争・軍隊の社会学」
近年、世界中の軍隊で女性兵士の数が増え、その役割を拡大させている。ロシアのウクライナ侵攻でも注目を集めた女性兵士を取り巻くさまざまな困難について、戦争や軍隊をジェンダーの視点から問う。
早稲田大学●法学(民法、家族法)
「同性婚をめぐる法的課題」
現在の日本の法律では、男性同士または女性同士の結婚(同性婚)を認めていない。しかし同性婚を認めることでまた別の問題につながる可能性もあり、最適な解決方法が探られている。同性婚を巡る法的な問題について考える。
早稲田大学●投票行動論、比較政治学
「実証分析から見る政治学」
政治は私たちの生活に大きな影響を与える。しかし、その構造や現象は複雑で、客観的に捉えるのは難しい。そこで役立つのが実証分析。選挙研究とポピュリスト研究を題材に、政治学研究における実証分析を進める。
慶應義塾大学●財政学、公共経済学
「税からみる日本の財政」
テレビやネットのニュースで、物価高が報じられる昨今。給料は増えないのに支出ばかりが多くなり、税金も高くなると嘆いている大人は多い。中でも嫌われがちな消費税は、何のために支払わなければならないのか、消費税はそんなに悪い税なのかを問う。
立教大学●労使関係論
「トラックドライバーの労働実態から日本社会を考える」
スーパーやコンビニに物があるのは当たり前?そんな「常識」が崩れてしまいかねないと懸念された物流の「2024年問題」。調査したトラックドライバーの労働実態を踏まえ、持続可能な物流のあり方を模索する。
「ひと」が生み出した文学や歴史、文化など、人間が現在に至るまでに築き上げてきたものの研究を通じて、「人間とは何か」といった人間の内面的本質を考えます。今後の人間のあり方についても探っていく学問です。
筑波大学●国際関係論
「現在における戦争と平和 ロシアによるウクライナ侵略から考える」
2022年2月、突如始まったロシアによるウクライナへの侵略。これまで複数の国から停戦案が提示されたがいずれも実現に至っていない。ウクライナが望む和平条件を見ながら国際紛争を解決するための考え方を知る。
中央大学●情報ネットワーク、情報と社会のかかわり
「FFと地下アイドルとインターネットで社会構造の変化を知る」
私たちが普段から何気なく触れているゲームやアイドルも、情報技術の進歩とは無縁ではいられない。身近な生活の裏に隠れた、技術と社会の関係性から、テクノロジーと社会の関わりをひもとく。
立命館大学●文化人類学
「他者とともに世界を想像/創造するゆたかさ、おもしろさをめぐって」
文化人類学とは、異文化を通じて自文化を見つめ直し、「今ここにはない」世界を構想する可能性に開かれた学問。20年以上にわたり調査したタンザニアの人々の様子から、不確実な未来にどう向き合えばいいのか、ヒントを探る。
数学や物理学のように自然界の事物や自然現象を観察し、そこに流れを見つけることで真理を探求する学問から、自然科学で発見された法則を基にして現実の社会に役立つような技術を研究する学問を包括します。
東京大学●分子生物学
「生物はなぜ死ぬのか」
人はだれでも、年齢を重ねると共に老いていき、いずれ寿命を迎える。老化や死を止められないのはなぜなのか。死は生物学上の大疑問であり、そこには何か理由があるはず。老化から死に至るメカニズムとは。
東京大学●海洋生物学、共生生態学
「海のプランクトンから考える地球環境変動」
食物連鎖の起点となるプランクトンは海の生態系を支えている。プランクトンは気候変動の影響を受けやすく、化石から過去の地球環境がわかるため、環境変動を知るための重要な役割を果たす。プランクトンが示す、私たちの日々の食卓に迫る危機とは。
東京大学●情報通信、情報科学
「未来社会を支える次世代サイバーインフラ」
2030年に向けて、モバイル通信が5Gから6Gへ進化しようとしている。どのような方向に、どう進化すればいいのか?その鍵を握るローカル5Gとは?多くの自治体や企業と共同研究を進め、日本の情報通信を牽引する。
東京大学●都市計画、都市防災
「『レジリエント』な都市のつくりかた」
都市は富・人・知識を集中させることでイノベーションの源泉となり、「学び」という人類の強みを拡大する。その反面、災害が起これば被害は甚大なものになる。さまざまな情報を分析し、都市災害リスクの解決方法を研究するのが「都市防災」という分野である。
東北大学●核融合学、原子力学、材料工学
「核融合エネルギーの実現に向けて~材料工学からのアプローチ」
地上の太陽とも呼ばれ、理想のエネルギーとして期待される核融合。核融合発電が実現すれば、人類はエネルギー不足を心配する必要はなくなり、CO2排出問題も解消される。核融合のメカニズムと構造材料の役割とは。
大阪大学●認知神経科学
「自己の顔に取り憑かれる脳の仕組み」
鏡やカメラの登場によって、私たちは自分の顔を常に見つめ、自己表現の対象とするだけでなく、さらには自己イメージまで変化させるようになってきた。最新の脳の研究を元に「現代人が顔に魅了される仕組み」を解明。
九州大学●光電気化学
「属ナノ粒子で目指す太陽光エネルギーの有効活用」
太陽から地球には膨大な光のエネルギーが降り注がれている。そのエネルギーを十分に活用できれば、全世界のエネルギーをまかなえるほどの量だ。それを使いこなせば地球を救えるのでは?その壁を破る方法を研究する。
東京科学大学●化学工学、電気化学、エネルギーシステム論
「エネルギー変換の化学と未来のエネルギーのすがた」
世界中で大きな問題になっている気候変動。その進行を止めるには、化石燃料を中心とする現在のエネルギー消費を変える必要がある。水素やアンモニアをエネルギーキャリアとする、燃料電池を活用した新たなエネルギー循環の仕組みとは。
一橋大学●計算言語学(自然言語処理)
「大規模言語モデルが世界を変える」
人間が使う自然言語を自在に繰る人工知能。翻訳や要約、問い合わせ対応などを器用にこなす。この能力はどのように育成されてきたのか?鍵となったのは何だったのか?自然言語処理の発展の歴史からわかることとは。
広島大学●天文学
「暗黒物質と暗黒エネルギーが作る宇宙」
宇宙のエネルギーの約95%は人類の知らない「暗黒物質」と「暗黒エネルギー」からできている。これらの暗黒成分の解明を目指す研究は、今の天文学でもっともホットなテーマの一つ。宇宙創生の秘密を探求する天文学の最前線に挑む。
命を救う科学と技術を修得する医学、身体全体の問題として歯を研究する歯学、最先端の医薬品開発や医療現場での医薬品活用を目指す薬学、人間と自然をつなぐ農・獣医・水産・栄養学。連携による研究も進みます。
京都大学●医生化学、細胞生物学
「体の中からいらないものを除去する -秘密は細胞膜にあった-」
私たちの体を構成する細胞。その一つひとつが正常に働くことで、私たちの健康は保たれている。働きを終え、死んだ細胞はどのように除去されるのか。死んだ細胞とその働きを助ける細胞膜の遺伝子のメカニズムを探る。
京都大学●薬科学
「患者を助けるファーマドリームを志して」
一人の医師が一生で治せる患者の数には限りがある。だが、画期的な新薬をつくりだせば、一度に大勢の患者を助けることができる。生物の「体内時計」の仕組みに注目し、大勢の患者を救うべく、新薬の開発に挑む。
九州大学●精神医学、精神分析、脳科学、精神免疫学
「こころの不調の正体を探る:脳内免疫細胞が人間のこころを操る?」
精神科医の仕事は、苦悩する人々の心と脳を理解して治療すること。私たちの心は意識と無意識の世界から成り立っているが、では心は一体どこにあるのだろうか?心と脳の接点を探る研究。
北海道大学●獣医学
「動物も人間もがんから救える時代を目指して」
細胞が本来の制御を外れて自己増殖し周囲の組織を駆逐することで死に至らしめる「がん」。それはヒトだけの病ではない。動物のがん治療薬研究の先に見据えるヒトと動物の枠を超えた様々ながん治療を探る。
人間と社会に関わる多様な問題にあらゆる観点から目を向け、人間支援のあり方を模索する学問系統です。教員養成、教育学、心理学、社会福祉学などがこの系統に含まれます。
京都大学●犯罪社会学、教育社会学
「犯罪・非行からの立ち直り~犯罪社会学の知見から~」
「近頃は凶悪犯罪が増えている」「日本の治安は悪化している」などと思ったことはないだろうか。犯罪を語る言葉の大半は印象論に基づき、実情とは大きなズレがあることが多い。研究を通じて、自分の思い込みや偏見に気づいていく。
日本を代表する大学の最先端の研究について第一人者である教授の講義を体験できる人気イベント。世界をリードする研究からここでしか学べない研究まで、大学で何を学び、人生をどう生きるか、高校生、中学生のお子様と考えるまたとない環境を提供します。