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東進タイムズ2009年10月1日号

みなさん、こんにちは。世界史講師の斎藤整です。突然ですが、皆さんの好きな偉人は誰ですか?考えたことすらないって人も多いんじゃないでしょうか。ミュージシャンやスポーツ選手に夢中になるのもいいけれど、歴史をつくった人物も負けないくらいチャーミング!このコーナーでは、私、斎藤整が歴史をつくった人物から「これぞ!」という偉人を厳選し、興味深いエピソードとともにご紹介します。お気に入りの偉人を見つけて「心の友」にできれば、人生が何倍も充実すること間違いなし!です。

斎藤 整(ひろし) 先生[世界史]
東大を含む上位クラスからベーシッククラスまで、幅広い層の信頼を集めるスーパー講師。論述対策まで視野に入れた先生の授業は、世界史を単なる受験科目としてではなく、生徒の知的好奇心を呼び起こす"奥の深さ"を感じさせてくれることだろう。
ルイ・パストゥールってどんな人?
近代医学の土台を築いた微生物学者

パストゥールはその人生において偉大な仕事を2つやり遂げた。

1つ目は「低温殺菌法」の開発だ。これは熱を利用して殺菌を殺すことで腐敗を防ぐ方法。牛乳やビール、ワインなどをおいしく飲めるのは彼のおかげなのだ。当時はお酒の中の小さな塊がまさか生きているとは誰も想像しなかった。パストゥールの酵母菌の発見は微生物という学問の始まりでもあった。

2つ目は、晩年の「ワクチン接種」の発明である。当時、流行していた炭そ病という病気から人々を救うために、弱められた病原体を利用して強力な病原体に抵抗する力をつけるやり方を研究。さらにニワトリコレラワクチンや狂犬病ワクチンを開発し、「免疫」という考え方を確立させた。

突如登場した新型インフルエンザはこれからピークと言われる。現代を「人間とウイルスとの闘いの時代」と見なす人もいる。パストゥールは150年以上も前にそれを予見し、希望の光を灯してくれた人類の恩人と言えるだろう。


本心に忠実に生きる!

少年時代のパストゥールは平凡な子供だった。小・中学校での成績は真ん中くらい。それが「人類に貢献できる教師になる」と決意した高校生の頃から次第に変化してくる。猛勉強の末、パリ高等師範学校(現在の国立難関大に相当する)への進学を果たす。

このときの興味深いエピソードがある。。実は入学試験を2回受けているのだ。といっても最初の試験に失敗したからではない。「10番以内で入る」と決めていたのに15番目の成績だったので入学を見送ったのだ。翌年の試験では見事5番目の成績で入っている。

この話は彼の意志の強さを示す例として語られる。しかし、私のとらえ方はちょっと違う。「意志の強さ」というとプライドや意地で強引にやり遂げるイメージがある。そうではなく、彼は単に「自分の欲求に忠実」だったのだ。それが「本心からやりたいこと」だったから、他人には理解できない挑戦に迷うことなく突進できたのだ。

ちなみに彼の目指す職業は画家、教師、研究者と次々と変わっている。このことからもパストゥールが自分の気持ちに忠実な人間だったことがわかる。

幸運を受け取る準備をする!

パストゥールの人生は、結果から見ると必要なことがちょうどよいタイミングで起こっている。例えば1865年、彼は突然、カイコの伝染病研究の依頼を受ける。それまでは発酵の研究をしていたわけだから畑違いの分野だ。

しかし、彼は嫌がらない。全力で取り組み、病気の原因である微生物の正体を突き詰める。そして、このときに得た知識や体験が次の大発明、ワクチン開発へとつながっていくのだ。

また、その際、カイコ不足で困っていたらたまたま日本から皇帝にカイコの卵が贈呈され、分けてもらったというラッキーな話も残ている。
なぜ彼はグッドタイミングで必要な出来事を引き寄せることができるのか。

その答えとなる彼の言葉がある。「偶然は準備された精神にしか微笑まない」だ。私たちは毎日さまざまな偶然に遭遇する。それを幸運につなげるには「準備」が必要だというのだ。

ここでまた疑問が残る。「準備する」とはどういうことなのか?

それは「目の前のことに打ち込む」ことだと私は思う。カイコ研究の依頼の際、もしも彼が「専門外だから」と嫌々取り組んでいたらどうだったか。十分な成果は得られず、その後も違った展開になっていただろう。

挫けそうになったらパストゥールを思い出そう。「今やるべきこと」に集中したら必ず道が開けてくる。

超ビッグサイズの野心を持つ!

最後に私の大好きなエピソードを紹介しよう。低温殺菌法にしろ、狂犬病のワクチンにしろ、彼の発明は画期的なものばかり。その特許による収入は計り知れない。彼が大富豪になったことは容易に想像できる。

ところが、彼は養育費など家計の負担が増す一定期間だけ特許をとると、あとは全部公開してしまう。大金持ちになる権利をあっさり手放してしまうのだ。

彼はなぜこんな大胆な決断ができたのだろう。無欲だったから?私はむしろその真逆だと考える。

彼はきっと欲望が大きすぎたのだ、と。

普通なら損得を判断するとき、自分のことかあるいは家族くらいまでしか頭にない。しかし、彼の望みはフランス国民、世界のすべての人々、さらには未来の人類全員が「得すること」だったのだ。

そんな望みを叶えた至福感は豪邸に住んだり、贅沢三昧できたりするよりも何十倍、何百倍、何千倍も強烈なものだった違いない! 人生一度きり。どうせ持つならできるだけ大きな夢を持ちたいものだ。