この記事はToshin Times 2000年 WINTER号のものです。

五歳のときから通っていた水泳教室。 水泳をはじめたころは「あまり行きたくなかった」という記憶ぐらいしか残っていないという。
水泳がおもしろいと思うようになったのは、小学校高学年のときだった。仲のいい友達ができて、プールに行くと友達がいる。
「友達がいるから。」誰でも経験したことがあるのではないだろうか。塾やお稽古ごとなど、習うものごとそのものよりも、友達がいることのほうが大切、という思い出。こんなありふれた思い出話から、世界屈指のスイマーが誕生する物語が始まった。
今回の強者(ツワモノ)は本郷高等学校3年、北島康介君。シドニーオリンピックで一際輝いていた高校生だ。
北島 康介君(きたじま こうすけ)
1982年9月22日生まれ、東京本郷高校3年生。東京SC所属。5歳で水泳をはじめ、中学3年で全国制覇。今年4月には日本選手権で100メートル平泳ぎを初制覇。シドニーオリンピックでは17歳で4位入賞。
日本の男子水泳界をリードしていく存在として期待されている。

 緊張はしません、と言い切る。
  「どんなに緊張しても、それをやる気とか、負けたくないって気持ちに変えられるんで、緊張で自分の力がだせないということはないんです。水泳に関しては、落ち込んだり悩んだりってことはないですね。悪かったところは認めて、それをどう克服するかが大事だと思っています。」
 毎日の厳しい練習も、きちんとこなす。学校が終わるのが3時でそのあと学校の近くにあるプールで8時半頃までが練習時間だ。決して練習が好きだというわけではないが、それを乗り越えてこそ結果につながると考えているという。調子が悪かったときは落ち込むよりも何故悪かったかを分析し、改善に努力する前向きな性格である。自分の非はしっかりと受けとめ、それを乗り越える努力は惜しまない。
 同世代で金メダルをとったイアン・ソープ選手については「あれだけの大舞台で注目を浴びながら、それに違わない記録を残せるというのはほんとうにすごいと思うし、
見習いたいと思う。」と話す。人の良い面、自分の悪い面。なかなか認めるのは難しいものである。しかしこのように口にすることができる素直さも、その強さの秘訣ではないだろうか。

 父はあまり口出しはせず、母は黙って見守るタイプ。しかし、オリンピック出場を一番喜んだのも、ご両親だった。
  「オリンピックいけるなんて思ってもなかったんじゃないんですか(笑)。それだけにものすごく喜んでたし、応援も熱心にしてくれました。今までは黙って見守る派だった父親も、最近ではいろいろとアドバイスしてくれるようになったんですよ(笑)」
 地元を挙げての大応援は、マスコミにもとりあげられるほど。盛大な周りの応援に対して、気恥ずかしくはなかっただろうか。
 「初めは『こんなにしてもらわなくてもいいのになあ』なんて思ってたけど、沢山の人にみてもらう中で泳ぐのは嬉しいし、頑張ろうと思いました。」


 北島君は、大学進学を希望。4年間、水泳に集中したいという。勉強のほうは?という問いかけには、「やっぱり、水泳を活かした勉強をしたいと思います。スポーツを別の側面から考えることにも興味があるんで。」と答える。
  17歳のファイナリストは、このシドニーオリンピックで18歳の誕生日を迎えた。
 「まだ水泳の試合が終わってなかったときだったんですけど、
終わってからみんながカードを書いてくれて。すっごい嬉しかったです。シドニーで誕生日を迎えられて、いい思い出になりました。」
 9歳のとき、オリンピックに高校生で出場していた林選手に憧れて水泳を続けてきた。林選手を尊敬し、目標として頑張ってきた。しかし、このシドニーで林選手も引退。誕生日に、林選手からは「これからも頑張れ」という内容のメッセージをもらったそうだ。
  今度は僕がみんなの目標になってこの水泳界を引っ張っていきたい。そして大学では4年間水泳を集中して出来る環境に身をおいて、4年後のアテネでは、メダルを狙います。」
(写真提供:共同通信社)
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