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トップリーダーと学ぶワークショップ
TOP東進タイムズ 2017年3月1日号

入れ替わっている私たちの体
特にオートファジーについて

東京大学大学院医学系研究科 教授
日本生化学会 会長

水島 昇先生

今回「トップリーダーと学ぶワークショップ」にご登壇いただいたのは東京大学大学院医学系研究科教授の水島昇先生。水島先生は、昨年ノーベル生理学・医学賞を受賞した大隅良典先生の愛弟子として、細胞内のリサイクルシステム「オートファジー」の研究に尽力している。今回のワークショップでは、ノーベル賞受賞研究の内容をわかりやすく解説していただくとともに、グループワークでは基礎研究の支援のあり方を討議した。その一部をご紹介する。

講演者プロフィール

1991年東京医科歯科大学医学部卒。同大学院博士課程修了。医学博士。97 ~ 2004年基礎生物学研究所(愛知県岡崎市)の大隅良典教授の研究室でオートファジーに没頭し、ほ乳類、ヒトへ対象を広げた。99 ~ 05年に科学技術振興事業団さきがけ研究員を兼任。04年に東京都臨床医学研究所室長、06年に東京医科歯科大学教授、12年に東京大学大学院医学系研究科教授。13年トムソン・ロイター引用栄誉賞『オートファジーの分子メカニズムおよび生理学的機能の解明』を大隅教授と共同受賞。またオートファジー研究に対し大隅教授に16年ノーベル生理学・医学賞が贈られた。14年フロンティアサロン永瀬賞特別賞など多数受賞。

私たちの体は毎日
2%入れ替わっている?!

私は昨年ノーベル生理学・医学賞を受賞した大隅良典先生と長く共同研究をしてきました。そして現在も、ノーベル賞の受賞対象となった「オートファジー」の研究を続けています。

私は高校生の頃から「体がどのように入れ替わっているのか?」ということに興味を持っていました。私たちの体は200種類以上の細胞でできています。細胞は生命の最小単位です。これが一日2%ずつ増える一方で、同じぐらい減っています。つまり、皆さんの体は一日2%ずつ入れ替わっているのです。

ですがすべての細胞が入れ替わってしまうわけではありません。細胞の寿命はまちまちです。白血球の寿命は数日ですが、脳の神経細胞は一生入れ替わることがありません。

では、脳の神経細胞は古くなっていくだけかというとそうではありません。「細胞の中身」がきちんと入れ替わっているのです。

ノーベル賞受賞研究
「オートファジー」とは?

細胞の中というのは、タンパク質がひしめき合っていて、さらにミトコンドリアといった細胞小器官なども多数存在しています。人で埋め尽くされたプールのようなものです。

そうすると、悪い人やサボる人が出てきたり、ゴミが溜まったりします。寿命の短い細胞であれば天寿を全うするので問題ないのですが、一生入れ替わらない脳の神経細胞では深刻な問題です。細胞がうまく機能しなくなるからです。

そこで細胞が行っているのが「オートファジー」という分解作用です。細胞内の一部をオートファゴソームという袋で包み込み、そこにリソソームという細胞小器官が融合すると袋の中身が分解されて、タンパク質であればアミノ酸になります。

それがまた細胞内に戻されてリサイクルされ、古いものが新しくなる。あるいは別なものに変化します。また、飢餓になるとオートファジーが起きます。例えば受精卵や新生児はオートファジーによって栄養を維持していることがわかっています。

酵母研究がオートファジーの
新たな扉を開いた!

実はオートファジーという現象は50年以上前に見つかっていましたが、突破口を開いたのが大隅先生です。

オートファジー研究に遺伝学を導入し、酵母もオートファジーを起こすことを発見しました。酵母の遺伝子にランダムに傷をつけることで、オートファジーのできない酵母を見つけることに成功します。どの遺伝子に傷がついているかを調べれば、それがオートファジーに必要な遺伝子ということです。

オートファジー研究に遺伝学を導入し、酵母もオートファジーを起こすことを発見しました。酵母の遺伝子にランダムに傷をつけることで、オートファジーのできない酵母を見つけることに成功します。どの遺伝子に傷がついているかを調べれば、それがオートファジーに必要な遺伝子ということです。

世界中の誰も知らないこと、考えもしなかったことに最初に触れるチャンスがあるのが研究の醍醐味です。ですが研究というのはすぐに世の中の役に立つとは限りません。

勉強も同様で、今の段階で役に立つかどうかはわかりません。「役に立つ」「立たない」という基準で決めるのではなく、さまざまなことを吸収していってください。

ワークショップ 【探る・話す】

テーマは「国は「役に立たない」研究をどのように支援すべきか?」

「オートファジーの研究は現段階ではまだ社会の役には立っていません」と語る水島先生。ではすぐに私たちの生活に「役に立たない」研究に対してどのような支援の仕組みを考えたらいいのか。それが今回のワークショップのテーマだ。6名1チームとなり、まずは自分の意見を予備シートに記入してから討論スタート!

ワークショップ 【練る】

「「役に立たない」研究の支援」について考える

「もう少し具体例を挙げてみて」「あなたはどう思う?」――お互い初対面ながら活発な議論が飛び交う。制限時間は60分。予選会の発表に向けて各自の意見を整理し、チームとしての主張を絞り込む。図表を使ったり、文字の大きさなどにも気を配りつつワークシートへ記入。準備万端整えていざ予選会へ!

ワークショップ 【発表する】

予選に挑む

総勢35チームが6つのグループに分かれてしのぎを削る予選会。2分という短い持ち時間の中でいかに自分たちの主張を効果的に伝えることができるかが鍵となる。「研究省を作る」「クラウドファンディングを活用しよう」――ユニークなアイディアが提案される中、各グループから選出された6チームが決勝戦へ。

ワークショップ 【決勝】

予選を勝ち抜いて、いよいよ決勝。

いよいよ決勝戦。予選突破チームの代表者が壇上に立ち、水島先生と参加者全員の前でプレゼンを行う。「SNSを使って研究過程の“見える化”を促進する」「日本でもノーベル賞のようなイベントを」――激戦を勝ち抜いてきた6チームだけあって、いずれの提案も具体的で説得力のあるものばかりだ。

ワークショップ 【結果】

表彰式

「非常に難しい問題に対して多角的な視野で考えてくれてとても感銘を受けました」と水島先生。厳正な審査の結果、最優秀に輝いたのは「小中高でも研究授業を積極的に行う」という教育改革にまで踏み込んだチーム。水島先生を囲んで笑顔で記念撮影を行い、会場は盛大な拍手に包まれた。

参加した高校生の

千葉県 私立 渋谷教育学園幕張高校 1年

佐藤 百美佳さん

私は臨床系の医師を目指しているのですが、自分自身の興味関心を追求していくことで、結果的に社会の役に立つ成果をあげている水島先生の姿にとても感銘を受けました。もし自分が臨床医になることができたら、基礎医学の研究者を応援する活動をしてみたいと強く思います。ワークショップにはほんとうに多様な考えの人たちがたくさん参加していて、自分にはない広い視野を持つきっかけになりました。

東京都 私立 成蹊高校 2年

高瀬 郁洋くん

水島先生の講演で印象に残ったのは「ヒトの仕組みがよくわかるようになったのは、実は病気の存在があったから」という言葉です。病気を知ることで初めて正常な機能が理解できるという視点はとても新鮮でした。ワークショップのテーマに関しては「役に立たない」研究があるからこそ「役に立つ」研究が輝くことができると考えます。将来は食品関係の仕事に就きたいと思っています。機会があればぜひまた参加したいです

東京都 都立 日比谷高校 1年

滝貞 真胤さん

以前参加した「女子生徒のための生き方を学ぶ講座」がとても楽しかったので今回も参加しました。オートファジーについては学校でも勉強していて関心があったので、水島先生からさらに詳しいお話が聞けてとても嬉しかったです。グループワークでは「研究省」という新しい機関の創設を提案しました。発表者を務めた予選会ではとても緊張しましたが、逆にそれを楽しむことができたと思います。夢は薬剤師になることですが、今日のお話を聞いて研究職にも関心が出てきました。

神奈川県 私立 麻布大学附属高校 2年

岡井 亮賢くん

小さい頃から動物や昆虫が好きで生物に興味があったので参加しました。ワークショップでは「役に立たない」研究の支援のやり方を考えましたが、そもそも役に立たない研究というのは世の中にはないと感じます。もし自分が研究者になって悩むときがあったら、今日の水島先生の講演を思い出したいと思います。グループワークではもっと積極的に発言できるようになりたいです。

東京都 私立 昭和女子大学附属昭和高校 2年

山﨑 はるかさん

私は文系志望なので内容をよく理解できないかもしれないと思ったのですが、大学ではディスカッションする機会も多いし、多様な人たちと今のうちから触れ合っておいたほうがいいと思い、今回参加しました。普段は自分から発言するほうではないのですが、グループワークでは積極的にメンバーに声をかけるようにしました。せっかく同世代の人たちと議論を交わす機会に恵まれたのだから、自分から行動しないともったいないと思ったからです。今は小学校の先生を目指しています。