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特集 2025年度 共通テストはどう変わる? 新課程入試について 高2生以下対象

現在の高校の授業は2022年度から改訂された新しい学習指導要領に基づいている。したがって、現在の高2生が大学を受験する2025年度入試からは、新学習指導要領で学んだ生徒を対象とした新しい入試が行われることとなる。
今回の特集では、学習指導要領の改訂のポイントと、2025年度入試についてまとめている。高校2年生以下が対象となるので、参考にしてもらいたい。

1.新学習指導要領のポイント

今回の学習指導要領の改訂では「知識の理解の質を高め資質・能力を育む『主体的・対話的で深い学び』」が掲げられ、生産年齢人口の減少、グローバル化の進展や絶え間ない技術革新等により変化の激しい社会で必要となる力を身につけるための「主体的・対話的で深い学びの実現」が目指されている。

また、近年急速に発展する情報技術を適切に選択・活用することのできるIT人材の育成が政府方針で強調されていることなどを背景に、教科「情報」の科目が再編された。

新設の「情報Ⅰ」は全ての生徒が履修することとなり、プログラミングやネットワーク、データベース(データ活用)の基礎的な内容が必須化された。また「情報Ⅱ」では情報システム、ビッグデータなどより多様なコンテンツを扱うとともに、情報技術の発展の経緯や今後の社会との関わりについて考えさせるカリキュラムとなっている。さらに、数学では「数学C」が新設(復活)され、「数学B」から「ベクトル」、「数学Ⅲ」から「平面上の曲線と複素数平面」が移動する。「数学B」では「確率分布と統計的な推測」が「統計的な推測」に名称が変更された。

地理歴史では新たに「歴史総合」が必修科目として追加され、日本史・世界史での出来事が互いに与えた影響や関連などに注目して近現代史について学ぶ。

1-1 表1 教科・科目および標準単位数新旧対照表

表1 教科・科目および標準単位数新旧対照表

2.2025年度以降の共通テスト

2025年度入試からは上記の学習指導要領改訂に対応する。大学入試センターは、2025年度の大学入学共通テスト(以下、共通テスト)についての表2(P2)のように変更すると公表した。
大きな変更点として「情報Ⅰ」が追加されたことが挙げられる。試験時間は60分となっており、試作問題では大問4問から構成された(全問必答)。

「国語」は現代文で大問が1問追加され、それに伴い試験時間が10分延長される。
「数学Ⅱ、数学B、数学C」では「数学B」の「数列」「統計的な推測」、「数学C」の「ベクトル」「平面上の曲線と複素数平面」の4項目から3項目を選択し解答する。また試験時間が10分延長され70分となる。

地理歴史では「地理総合、地理探究」「歴史総合、日本史探究」「歴史総合、世界史探究」「公共、倫理」「公共、政治・経済」「地理総合/歴史総合/公共」の6科目から最大2科目を選択して解答する。このうち「地理総合/歴史総合/公共」は必履修科目を組み合わせた科目となっており、「地理総合」「歴史総合」「公共」の3つの出題範囲から2つを選択して解答する。また、「歴史総合、日本史探究」と「歴史総合、世界史探究」については「日本史(探究)」「世界史(探究)」と「歴史総合」との複合科目として設定され、試作問題では大問のひとつが「歴史総合」の範囲から出題された(歴史総合との共通問題)。

なお、地理歴史、公民では科目選択について表3のような制限がある。2科目を選択し、そのうち1科目を「地理総合/歴史総合/公共」とする場合、もう1科目では「地理総合/歴史総合/公共」で選択したものと同一名称を含む科目を選択することはできない。具体的には、「地理総合/歴史総合/公共」で「地理総合」と「公共」を選択した場合はもう1科目として「地理総合、地理探究」「公共、倫理」「公共、政治・経済」を選択することはできない。また「公共、倫理」と「公共、政治・経済」の2科目を組み合わせて選択することはできない。

2-1 表2 共通テストの出題科目など変更点

表2 共通テストの出題科目など変更点

2-2 表3 地理歴史及び公民において選択可能な組合せ

表3 地理歴史及び公民において選択可能な組合せ

また、2025年度の共通テストについては、2021年度以前に高校に入学した受験生等の旧教育課程履修者を対象に、経過措置として旧課程に対応した試験問題が用意される。「旧〇〇」という形で対応する科目を選択することができるが、試験時間は新課程の試験と同じとなっている。そのため、数学のグループ②で「旧数学Ⅱ・旧数学B」を受験する場合も、試験時間は70分となる(表4参照)。
なお、2022年度以降に高校へ入学した受験生が旧課程の科目を解答することはできない。また、旧課程科目を含む特定科目間内で平均点に大きな差異が生まれた場合は得点調整が行われる予定となっている。

【得点調整を実施する科目】

  • ・地理歴史:『地理総合、地理探究』『歴史総合、日本史探究』『歴史総合、世界史探究』『旧世界史B』『旧日本史B』『旧地理B』の間
  • ・公民:『公共、倫理』『公共、政治・経済』『旧現代社会』『旧倫理』『旧政治・経済』『旧倫理、旧政治・経済』の間
  • ・数学グループ①:『数学㈵、数学A』と『旧数学㈵・旧数学A』の間
  • ・数学グループ②:『数学㈼、数学B、数学C』と『旧数学㈼・旧数学B』の間
  • ・理科:『物理』『化学』『生物』『地学』の間
  • ・情報:『情報Ⅰ』と『旧情報』の間

※「情報」については、受験者数が1 万人未満の場合でも実施する

2-4 表4 大学入学共通テストの旧教育課程履修者等に対する経過措置について

表4 大学入学共通テストの旧教育課程履修者等に対する経過措置について

3.主要大学の2025年度入試

ここでは2025年度入試について各大学が現在までに公表している変更予告を紹介する。
「情報」については、多くの大学で導入が予定されている。現時点ではほとんどの場合が共通テストの「情報Ⅰ」を利用する形であり、個別試験で独自問題を用意する大学は少ない。

国立大学協会の「共通テスト原則6教科8科目」の公表もあり、国立大学では多くの大学が共通テストの受験科目として「情報Ⅰ」の受験を必須としている。
また、多くの大学で「情報Ⅰ」の成績に配点しているが、北海道大のように受験は必須だが基本的に配点は行わないとしている大学もある。

公立大学でも同様に共通テストの科目として「情報Ⅰ」の受験を求める大学があるが、こちらは大学や学部、日程によって選択科目のひとつであったり受験の必要がなかったりといった場合が多い。

私立大学では共通テストを利用する入試方式の中で、選択科目のひとつとして「情報Ⅰ」が追加される形がほとんどである。
地理歴史については、個別試験で課す国公立大学の場合、共通テストと同様に「歴史総合・日本史探究」「歴史総合・世界史探究」のように日本史・世界史のどちらを選ぶ場合にも歴史総合が試験範囲として含まれる大学が多い。
数学については、ベクトルが「数学C」に移動となったものの、文系学部・学科の試験範囲としては引き続きベクトルが出題される大学がほとんどである。

なお、個別試験での経過措置については、2025年度入試については新課程・旧課程の共通範囲から出題するといった形での配慮を行う旨を発表している大学がみられる。旧課程を履修した受験生のための独自問題を用意する大学は少ない。
これらの予告については今後更新される可能性がある。最新情報については大学入試センターや各大学のウェブサイト等からチェックするようにしたい。

3-1 表5 2025年度入試主要国公立大学(一般選抜)共通テスト「情報」利用状況

表5 2025年度入試主要国公立大学(一般選抜)共通テスト「情報」利用状況

3-2 表6 2025年度入試主要私立大学(共通テスト利用方式)共通テスト利用状況

表6 2025年度入試主要私立大学<br>(共通テスト利用方式)共通テスト利用状況
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