トップリーダーと学ぶワークショップ
TOP東進タイムズ 2019年12月1日号

公務員40年を振り返って

一般社団法人生命保険協会副会長
元内閣官房副長官補
TPP 政府対策本部国内調整総括官

佐々木 豊成先生

講演者の写真

研究やビジネスの最前線を走る“現代の偉人”を講師に迎える「トップリーダーと学ぶワークショップ」。今回は、元内閣官房副長官補として40年間日本を支えてきた佐々木豊成先生をお招きし、「公務員40年を振り返って」というテーマで講演いただいた。新幹線の整備やTPPでの合意形成など、数々の大プロジェクトを成し遂げてきた経験から、大組織で働く醍醐味やトップになる人材像などについて語ってくださった。普段なかなか知ることのできない「国家公務員のリアル」に、多くの高校生が聴き入った。そんな、当日の様子をお伝えする。

進路を決めた父の一言

私が国家公務員を志したのは、父の言葉がきっかけでした。高校で文理選択する際に進路を考え始めたのですが、私が通った高校は医師を目指す同級生が多く、母は医者になることを勧めました。しかし父は、肝硬変を患って入院していたにもかかわらず、「医者になるよりも、国のために何か大きな仕事に就いたほうがいい」と言うんですね。いまだにその理由はわかりませんが、「男としてのやりがいを目指せ」と伝えたかったんじゃないかと思います。そういう時代でした。結局、高度専門職である弁護士と、国家公務員が目指せる法学部に進学することにしました。

ただ、大学に入ってすぐの頃はなかなか法律科目に馴染めず、「進路選択を間違えた」と思うほどでした。大学2年の頃に、やっと「法律とは何か」がわかり始め、専門課程に進んでからは夢中になって勉強しました。その結果、司法試験と国家試験の両方に合格。どちらの進路を選ぶか迷った末、より多くの人々の生活を支える仕事であることに魅力を感じて、官僚になる道を選びました。

自由闊達な大蔵省に憧れて

国家公務員の採用は、試験を受けて終わりではなく、合格後に各省庁で面談を受けて配属が決まります。そんな中で受けた、大蔵省(現・財務省および金融庁)の面談のときのことです。私は田舎者でしたから、大蔵省がどういうところかがわからず「大蔵省のカラーって何ですか」と尋ねました。すると、「既存のカラーに自分を合わせていくのではない。カラーは、自分でつくるものだ」と言われました。この先輩の言葉を聞いて、ぜひ大蔵省に入りたいと憧れたものです。

日本が初めてリーダーシップをとった
TPPにおける多国間の合意到達

公務員として仕事をしてきた40年間は、非常に刺激的でした。なかでも、環太平洋パートナーシップ協定(以下、TPP)における、国内調整の仕事は記憶に残っています。これは、私の公務員として最後の仕事になりました。

TPPとは、環太平洋地域の国々による関税の引き下げやルールの統一化を目的とした経済協定のことです。内容や合意の過程については各所で報道されているので割愛しますが、あまり知られていないことが一つあります。それは、日本における対外交渉を一元化する試みだった点です。TPPができる前の通商交渉は、経済産業省、農林水産省、外務省の三つの省庁が関わっており、交渉の席にはその3大臣がついていました。そのような国は日本以外にはなく、通常は一カ国一大臣で交渉をすすめていました。三省に権限が分散していると足並みの乱れを突かれやすく、国益を図るのが難しいという問題があったため、T P Pにおいては海外交渉を一元化し、内閣官房にその本部を置いて交渉体制を作りました。具体的な組織はこのとおりです(資料1)。

資料1

資料1

内閣官房にTPP政府対策本部を作り、その本部長として甘利経済再生担当大臣(当時)が一人で背負って交渉しました。その下に、私が務めた国内調整総括官、そして首席交渉官という次官クラスのツートップ体制があり、全省庁を調整して交渉に臨みました。

TPPは当初12カ国で進めていましたが、途中でアメリカが離脱して11カ国になりました。その後は日本が主導して交渉を進め、残りの11カ国で合意に到達しました。それまで、日本が主導して多国間の通商交渉をまとめた事例はなかったので、非常に画期的なことでした。

脱皮と変態を繰り返して
成長し続けることが大切

皆さんは、将来の進路を考える中で、自分の適性や性格などを考える機会があると思います。ここで一つお伝えしておきたいのは、「人の資質や適性は経験によってかなりの程度変えたり、補ったりすることができる」ということです。

仕事もできて社交的な人たちに幼少期の性格を聞いてみると、意外と「内向的だった」という人が少なくありません。一般的に、強気で前向きな人がリーダーに向いていると思われがちですが、弱気な人にも長所があります。それは、例えば周りをよく見て他人の性格や才能を読み取る力に長けていることが挙げられます。

レイモンド・チャンドラーの小説に出てくる主人公の有名な言葉に、「強くなければ生きていけない。優しくなければ生きていく資格がない」という言葉があります。強さだけではなく、さまざまな能力が総合されて人間の価値が決まっていくと私は考えています。

これからAI時代を迎えて技術がどんなに進歩したとしても、さまざまな物事に関する基礎知識や、基本的な考え方を身につけておくことは非常に重要です。それに加え、環境の変化に対応できる柔軟な思考力があれば、どんな時代になっても大丈夫です。ぜひ、若いうちによく学び、自分の適性に自信を持って進路を選んでいただきたいと思います。

ワークショップの写真

ワークショップ【探る】

テーマは「これからの日本の社会で何が一番問題になるか またそれを解決するには具体的にどうすればよいのか」

まずは自分の考えを予備シートに記入してからディスカッションスタート。「農業における人手不足」「教育格差」「テロと兵器」など、それぞれのチームが課題に対する自分たちの方針を明確にして、予選会に挑む。

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ワークショップ【話す・発表する】

予選会

いざ予選会。自分たちの意見をしっかりと伝えるために口調やスピード、声の大きさにも気を配る。口頭で説明する箇所と図で示す箇所を整理するなど、ワークシートの書き方にも工夫が必要だ。

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ワークショップ【本選】

決勝プレゼン

決勝戦。予選を勝ち進んだ5チームが壇上でプレゼンを競う。「村の過疎化」「年金問題」「AIと人の共存」など、多種多様で個性的な意見が出そろう。

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ワークショップ【結果】

優勝チーム集合写真

いよいよ、優勝チームの発表。「どのチームも世の中のことをよく考えている。」と語る佐々木先生が選んだのは、AIの活用、税制の見直し、研究者への資金援助によって、労働力不足や収入格差、優秀な人材の海外流出、産業の空洞化を解決できると提案したチーム。

参加した高校生の

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東京都 私立 国学院大学久我山高校2年

米嶋 香保さん

先生の講演を聞いて、何を選択するにしても自分のことを理解して判断しないといけないのだと思いました。ディスカッションでは普段話をする機会のない男子や帰国子女の自分とは違った考えを聞くことができてとてもおもしろかったです。

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埼玉県 私立 開智高校2年

中村 朋滝くん

佐々木先生が東北の県庁の仕事に就かれていたときのお話が印象に残りました。震災後、東北へボランティアに参加していたのですが、先生は農林水産の分野からお話をされていて今までとは違った視点が持てました。

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東京都 国立 筑波大学附属駒場中学 中学2年

東山 秀行くん

TPPなど国際会議で議論をまとめるのはとても大変で国家公務員の仕事の重大さがよくわかりました。自分の置かれたポストに応じて自分を変えるということをおっしゃっていて、自分も学校で役割を持ったときにどうあるべきかを考えさせられました。

スゴイ大先輩に学ぼう

タイトル

ナガセグループ

教育力こそが、国力だと思う。