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TOP東進タイムズ 2020年2月1日号

将来のため今考えてほしいこと

元駐米大使 日米協会 会長

藤崎 一郎先生

研究やビジネスの最前線を走る“現代の偉人”を講師に迎える「トップリーダーと学ぶワークショップ」。今回は、外交官として日米外交を支えてきた藤崎一郎先生をお招きし、「将来のため今考えて欲しいこと」というテーマで講演いただいた。真の国際人、国際交渉とは何か。本当に「世界で通用する」英語力とはどのようなものか。多くの高校生が熱心に聴き入った、当日の様子をお伝えする。

人生は不公平なものだが、
「人生は一度きり」という点では公平である

もし、皆さんが「1回しか映画を見ちゃいけない」と言われたらどうしますか?SFでも恋愛ものでも、恐竜映画でもなんでもいいんですが、決めるときには調べたり人に聞いたりして、自分が「一番好きなもの」を観たいですよね。「どうでもいい映画を観よう」とは思わないでしょう?

それは、人生も同じだと思うんです。自分の時間を大切に生きたいと思ったら、さまざまな方法で調べながら、よりよい方法を模索する必要があります。

「人生が公平か不公平か」という議論はよくあります。大秀才もいれば、ほどほどの秀才もいるかもしれない。それはある意味、不公平なことです。

でも、ひとつだけ公平な点がある。それは「人生は一度きりしかない。そして後戻りできない」ということです。

そうなると、人生において「仕事の選択」はどうでもよくはありません。やっぱり、「やりたいこと」をやるべきだと思います。ですから、親の希望や親の仕事、偏差値など、外の価値観で将来の夢を決めないでほしい。本を読んだり、人に聞いたり、できればインターンに参加したりして仕事の現場を実際に体験してみて、自分が強く「やってみたい」と思えることは何かを探ることが大切だと思います。

「英語よりも中身が大事」にだまされるな

よく「英語なんてツールだ。それよりも中身が大事」と言われることがあります。それを聞いて、「私は英語は嫌いだから安心しました」と思うのは大きな間違いです。そういう物言いにだまされてはいけません。

今、世界で70億人の人がいますよね。日本語を話す人は1億人。英語を母語とする人は5億人程度で、英語を公用語とする人たちを合わせると20億人ぐらいになります。中国語を話す人口は14億人くらいですが、それを安直に「英語よりも中国語を勉強した方がいい」と結論づけるのはちょっと待ったほうがいいと思います。

知っておいてほしいのは、世界の中枢の人たちはみんな英語を使っているということです。習近平国家主席はアメリカのアイオワに留学していますし、安倍首相も英語ができます。これは政治だけでなく、ビジネスや学問の世界でも同じです。どの国の人とも世界共通語である英語でやればいいのです。考えてみてください。少し学んだからと言ってスペイン語が母国語の人とスペイン語で交渉したりロシア語が母国語の人とロシア語でやりあって得でしょうか。第二語学以下は大事ですがあくまで友達づくり、楽しみと割り切った方が良いと私は考えます。

国際社会で通用する英語力とは

では、国際社会で通用する英語力とは、どのようなものでしょうか。

例えば、「聞く力」については、テレビでCNNのニュースを見て8~9割わかるレベル。「書く力」は、手紙を書いたら一つか二つ定冠詞か冠詞を間違えるかもしれないが、あとは文法の間違いがないレベル。「読む力」は、新聞・雑誌が2~3時間、本は2~3日で読めるレベルです。日本語でも、1冊の本を3ヵ月読んでいる人はいませんよね。新聞なら、30分から1時間で読むでしょう。つまり、国際社会で通用する英語力とは、日本語と同じくらいのスピード・量で読み書きをこなせることを意味します。

ちなみに、お勧めする「耳の鍛え方」は、オバマ元大統領やクリントン氏の演説を繰り返し聞くことです。映画やドラマは意外と難しいこともありますが、演説の英語は一番わかりやすいんです。なぜなら、選挙のスピーチは、町の人など「誰にでもわかる」ように練り上げられている言葉だからです。

世界を舞台に仕事をするうえで、
知らないと恥ずかしい「日本」

よく、若い人から「私は日本の文化を知らないから、日本の文化を知ってから海外に行きたい」という話を耳にすることがあります。これは、大きな間違いです。

日本の文化、例えば歌舞伎や能や茶道をすべて知ろうとしたらキリがありません。それらは趣味の世界として、年を取ってからでも学ぶことができます。極論すれば、若い人は知らなくていい。それよりも、一刻も早く日本を飛び出すべきです。

では、世界を舞台にして仕事をするならば今知っておきたい、いや、「知らないと恥ずかしい」日本のこととは何でしょうか?例えば「東日本大震災が起こる前は54個だった日本の原発は、今いくつぐらい稼働しているでしょうか?」ということは知っておいたほうがいいと思います。ちなみに、正解は9個です。あるいは、「日本には難民はどれくらいいるか」「日本は外国人を入れない社会だというが、それはなぜか」このようなことは、説明できたほうがいいと思います。

地球全体が抱える課題は、「環境問題」と「難民問題」です。これらの問題について、「日本はこういう状況で、私はこう考えています」と話せることが大切です。

「国際力」とは何か

「国際力」を磨くための要素は、三つあると思っています。一つは専門性を持つこと。もう一つはプレゼン・コミュニケーション。三番目は自主性・独自性です。

まず専門性については、「10年後でも役に立つかどうか」「世界のどこでも役に立つか」。この二つが専門を選ぶ物差しだと私は考えます。

例えば、習近平の政治や、現在の難民問題をテーマにするとします。でも、それらが今おもしろいテーマだからといって、10年後もそうとは限りません。例えば、法律や経済であれば、仕組みや考え方はどこもあまり変わりません。数学や工学などの理数系は、どんどん研究が進む分野ではありますが、基礎を学ぶことは役に立つでしょう。次に世界のどこでも役に立つということですが、外国の語学や文学を学んでもその国の人にはなかなか太刀打ちできません。学者や通訳や翻訳家になるなら別ですが、どこでも役に立つ専門にはなかなかなりません。

二つ目のプレゼン・コミュニケーションにおいては、「早く」「短く」「自分の考え」を話すことが重要です。日本人は、国際会議などの議論の場で、なかなか意見を言わないことが多いです。しかしそれは、国際社会では一般的に通用しません。できるだけ早い段階で自分の意見を言って、あとからみんなに「○○さんはこう言ったけど、それに賛成だ」「反対だ」と言われていくことが大切です。また、そのときに「キッシンジャーはこう言ってました」「『ニューヨーク・タイムズ』にこう出てました」と引用するだけではいけません。人の意見を踏まえて、「自分自身の意見」を言うことが大切です。

三つ目の「自主性」は、自分で決めること。何かを選択したとしても、違うと思ったらやり直してもかまわないので、自分自身で選ぶことです。「独自性」は、「みんなと一緒」を目標にしないことです。だって、みんなと同じ意見なのであれば、自分の意見を聞いてもらう必要はありませんよね。

最後に、「夢は見るものではなく、実現するもの」が私の持論です。「数学が苦手だから医学部をあきらめる」そんなことにならないように早くから数学を集中的に勉強すればいいんです。「どうせ~だから」と、自分で自分を枠にはめ込む必要はありません。世の中は、そんなに狭いものではありません。夢を持ったら、諦めずに続けていくことが大切です。

持論ですが、私は「才能・環境×努力+運」で結果に結びつくと考えています。持って生まれた才能や環境による差は、確かにあります。大秀才はそこそこの努力で結果が出せるかもしれない。しかし、大秀才でなくてもそのぶん努力すれば結果は出せるものです。

外務省でも、ものすごく優秀な人がいたりしました。でも、その人が怠けていたら、努力を続けている間に追いつくことができる。他人の才能や環境と比べて落ち込んだりする人もいるかもしれませんが、諦めないでコツコツやってるうちに道は開けるものです。社会は人間関係で成り立っていますから、努力を続けるうちに、いい人に巡り合ったりする。その出会いから、たちまち運が開ける。そんなことが、本当にあるものなんです。

ワークショップ【探る】

テーマは「あなたは日本をどんな国にしたいですか」

まずは自分の考えを予備シートに記入してからディスカッションスタート。役割分担を行って各自がチームへの貢献を意識する。「男女平等」「経済格差の是正」「移民の受け入れ」など、それぞれのチームが課題に対する自分たちの方針を明確にして、予選会に挑む。

ワークショップ【話す・発表する】

予選会

リハーサルを済ませてから、いざ予選会。原稿を作成し、自分たちの意見をしっかりと伝えるために口調やスピード、声の大きさにも気を配る。口頭で説明する箇所と図で示す箇所を整理するなど、ワークシートの書き方にも工夫が必要だ。

ワークショップ【本選】

決勝プレゼン

決勝戦。予選を勝ち進んだ5チームが壇上でプレゼンを競う。「超福祉国家」「教育先進国」「国際社会で戦える国」など、多種多様で個性的な意見が出そろう。藤崎先生は、さまざまな着眼点を評価しつつ、プレゼンに対する疑問を投げかけた。

ワークショップ【結果】

優勝チーム集合写真

いよいよ、優勝チームの発表。「どのチームも大変よかったので甲乙つけがたい」と語る藤崎先生が選んだのは、日本を質の高い教育が受けられる国にしたいということを提案したチーム。議論の論理が明確で、具体性のあるプレゼンが評価を得た。表彰式と藤崎先生を囲んでの記念撮影のあと、全体講評を頂戴してワークショップは締めくくられた。

参加した高校生の

東京都 国立 筑波大学付属高校2年

中下 璃乃さん

国際的な活動に興味があり、実際に世界で活躍している方のお話を伺いたくて参加しました。「国際力」というお話では他者との差別化によって自分のアピールを最大限にすることが必要なのだとインスピレーションを受けました。

東京都立 立川高校2年

小林 洸星くん

「英語が大事」と先生がしきりに仰っていたのが印象に残りました。グローバルに活躍するためには多言語が必要だと考えていましたが、各国のトップが集まって議論するには国際語である英語力を磨くことが重要なのですね。

埼玉県 私立 開智高校1年

牧 拓望くん

将来の夢を見つけるにはどうすればよいかと先生に質問したのですが、一生続けられるくらいに好きなことをやっていくのが良いと返答いただきました。医学の道か科学の道か迷っていたのでどちらを選ぶか見えてきました!