トップリーダーと学ぶワークショップ
TOP東進タイムズ 2020年8月1日号

「クリエイティブAI」 で新たな価値を創造する

デロイトトーマツコンサルティング合同会社 執行役員
R株式会社メルカリ 4Dアドバイザリーボード
東北大学 特任教授

森 正弥先生

講演者の写真

研究やビジネスの最前線を走る“現代の偉人”を講師に迎える「トップリーダーと学ぶワークショップ」。今回はデロイトデジタルで執行役員を務める森正弥先生をお招きし、「データとAIの最新活用事例」をテーマに講演いただいた。
森先生はコンサルティングを手掛けるデロイトグループで、ビッグデータやAIなどを活用した企業・産業支援に従事しています。現時点でAIがどれだけの能力を持っているのか、さらに進化を続けてAI自らが新たなデータやコンテンツを創造するようになった「クリエイティブAI」とはどのようなものなのか。 オンライン講演とワークショップの様子をお届けする。

AIとは何か

AIは最新の用語と思われがちですが、初めて使われたのは今から半世紀以上も前の1956年のこと。 「ダートマス会議」におけるジョン・マッカーシーの提言「我々は今後Artificial Intelligence究していく必要があるが始まりです。

ではArtificial Intelligence、AIとは何を意味するのでしょうか。 一般には 「人間の脳が行う知的作業をコンピューターで実現することを目的としたソフトウェアやシステムのことであり、 具体的には、 環境や物体の認識、人の使う自然言語の理解や論理的な推論、経験からの学習を行うプログラム」とされます。つまり考える、推論する、言葉を理解し人間にしかできないと思われていたレベルの「情報処理」を実現するソフトウェアがAIです。

そのために使われている技術が、自然言語処理パターン認識、画像処理機械翻訳、ロボティクスなどで、これらの技術を、活用できるようになった結果、人の代わりに作曲するAIや、ドローンを使った商品の自動配送システムなどが実現しています。

50年以上も前から言葉としては存在していたAIですが、実は社会に影響を与える技術として注目されるようになったの15年ぐらい前からのこと。インターネットの普及とそれに伴うビッグデータの誕生により、急激に進化し始めたのです。

第3世代に到達し急激に進化したAI

AIはこれまでにもブームになっていて、実は現在が3回目のブームです。第1世代のAIは推論をするAIでした。すなわち「AはBであり、BがCであるなら、AはCである」と答えてくれるようなAIです。ただし人間が推論のお膳立てをする必要があるため、答えられる問題が限られていました。

1980年代にブームとなった第2世代は、ルールベースのAIです。専門家の知識をルールとしてコンピューターに覚え込ませておき、個別の問題に対処します。ただ現実の問題をすべて事前にルール化しておくことなど不可能なため、すぐに限界を迎えました。それ以降AIは長い冬の時代に入ります。

ところがインターネットの普及とビッグデータの誕生に伴い、第3世代のAI、機械学習ベースのAIが登場しました。これがすさまじい勢いで進化し続けているのが現状です。

AIを使った翻訳サービスDeepLを使えば、 次のような翻訳も一瞬にして正確にできてしまいます。
「First, a clarification. AlphaGo is a computer program that plays the board game Go. It was developed by DeepMind technologies.」

機械学習ベースのAIを、ひと言で表現するなら「学ぶAI」です。トレーニングデータを与えることにより、インプット→アウトプット (正解)の関係をAIが学習します。やがて学習を何度も繰り返したAIは、新たなインプットに対して学習成果を生かして、正解と思われるものを答えるようになります。

ここで忘れてはならないのが、AIが出すアウトプットには、必ずいばくかの誤差が含まれているということ、いわば「あてずっぽう」 の答えなのです。ただし学習量を膨大な数に増やせば、あてずっぽうとはいえ、その精度は高まります。学習量に決定的な影響を与えたのが、インターネットがもたらすビッグデータです。膨大なデータを学習できるようになり、誤差が激減しました。

AIのアウトプットとは

資料1

高度なAIは何ができるのか

2015年10月、あるニュースが世界中を驚かせました。ディープマインドテクノロジーズ社が開発した囲碁のAI・AlphaGoが、史上初めてプロの棋士を破ったのです。それも相手はLEE SEDOL、 囲碁の世界では伝説的な達人、人類史上最強の棋士とまで呼ばれた王者です。

なぜ、そんな奇跡が起こったのか。AIの「あてずっぽう」の精度が限りなく高まったからです。AlphaGoは、膨大な量の棋譜データを読み込んで学習を重ねました。ある局面でAlphaGoは、対戦の解説をしていたプロの棋士たちが一様に「無意味だ」と評価した手を打ちました。ところが対局が終盤に近づくと、その一手こそが決定的な勝負手だったとわかった。AIによって編み出された打ち手は、人間の理解をはるかに超えるレベルに達していたのです。

こうした第3世代のAIを支える破壊的技術がDeep Learning、 データ量が増えれば増えるほど性能が劇的に向上します。Deep Learningはすでにさまざまな分野で活用されています。例えば、お客様の顔から年齢や性別、さらには感情などを理解しおすすめ商品をピックアップするサービスや、あるいは牧羊犬ロボットとして羊たちの面倒を見て、農場の管理をしてくれるAIも誕生しています。

AIはさらに進化し、AlphaGoの後継版AlphaZeroでは、過去の棋譜データをほとんど使わなくなりました。それでいてAlphaGoとは比べ物にならないレベルの強さに達しています。AlphaZeroは何をどのように学習したのか。AlphaGo同士による対戦を学習したのです

これがCollaborativeAIs、 AIが協力し合って性能を劇的に向上させる、次のブレイクスルーです。その結果、翻訳AIの性能も飛躍的に高まっています。Google翻訳が2017年にDeep Learningによって高度化され、DeepLが2018年に登場しました。DeepLはGoogle翻訳の性能の10年先そのと評価されたのですが、DeepLのさらに20年ぐらい先へ進化を遂げているのがBack-Translation、Facebookが開発した翻訳AIです。このBack-TranslationもCollaborative AIsの賜物であり、単純に翻訳データを大量に集めて性能を高めているのではありません。複数の翻訳AIを組み合わせて相互に学習させることで翻訳精度を高めているのです。

AIが創造性を発揮する世界

進化し続けるAIの最先端に位置づけられるのが 「クリエイティブAI」です。ある映画の予告編をAIが創作しました。対象となる映画を学習し、予告編の概念を学習した結果、映画のプロで1週間ぐらいかかる予告編を、AIはわずか1日で完成させてしまったのです。ほかに小説を書くAIも誕生するなど創造性を発揮するAIは、さまざまなジャンルで活躍し始めています。

「クリエイティブ」 であるためには、次の3つの条件を満たす必要があります。第1には毎回違うものをつくり、第2には専門的な知識体系に基づいてつくり、第3には経済的価値のあるものをつくる。実際に、これらをクリアするAIが誕生しているのです。

クリエイティブAIを支える技術の一 つがGAN(Generative AdversarialNetwork:敵対的生成ネットワーク)です。仮に何かの偽物をつくろうとする場合、偽物づくりのAIと偽物を見抜くAIが協力し合い 、 お互いにレベルアップしていきながら創造性を発揮し、最後には本物に至るのです。

クリエイティブAIはビジネスにも応用されていて、中国のECサイト『アリババ』 では、 アクセスユーザーの属性データに応じて、表示する背景、表示される要素、各要素のレイアウトや色、そして商品などが最適化されて表示されます。今ではアリババでは1日に4億パターンもの広告を自動的に作成しています。

このようにAIの進化で勝手に囲碁以外、たとえばオンラインゲームの能力を身につけたりなどはできません。AlphaZeroが自分は、人間の創造力さえも凌駕しつつあるのが現状です。ただしどれだけAIが進化するとしても、その進化は人間が定めた枠組みの中に限られています。

枠組みを決め、新しい枠組みを創るのは、人間にしかできない作業です。どんな枠組みを発想できるのか。そこにこれからの人間の価値が求められます。

ワークショップの写真

ワークショップ【探る】

テーマは「クリエイティブAIを使った新しいビジネスやサービスを考える」

森先生の講演後は、それぞれのチームにわかれてワークショップを開始。森先生から与えられたテーマは「クリエイティブAIを使った新しいビジネスやサービスを考える」。講演内容を基にメンバー一丸となって考え、発表を行った。ここでは、優勝したチームのプレゼン内容を紹介します。

ワークショップの写真

ワークショップ【決勝】

テレビやYoutubeの視聴者に合わせた広告を、クリエイティブAIを活用しフリーの画像素材などを編集して制作する

テレビやYoutubeなどの視聴者の属性に最適化された広告を、フリーの画像素材などを活用してAIが制作して提供します。ただし制作にかかる前の調査は人間が担当します。完成した作品が既に存在するものかどうかや、人道的に問題のない表現となっているかなどの最終チェックも、人間がやるべき作業として考えます。

ワークショップの写真

ワークショップ【講評】

森先生の講評

まさにAI活用の王道といえる提案だと思います。広告の妥当性チェックなども、すでに現実の広告業界で始まっていますが、倫理面のチェックなどが悩ましい問題として意識されています。また創造性についても、AIに与えるデータによりバイアスが出てしまう懸念があります。仮に特定の人種のデータだけを与えた場合に、それ以外の人種には不興を買うようなコンテンツを自動生成するおそれが指摘されています。
いくらAIの性能が高まったとしても、人間の尊厳に関わる部分は、人間が判断すべきだとの指摘も評価しました。

スゴイ大先輩に学ぼう

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ナガセグループ

教育力こそが、国力だと思う。