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TOP東進タイムズ 2021年11月1日号

夢は「世界一」のエジプト考古学者

東日本国際大学総長
早稲田大学名誉教授
工学博士 (早大)

吉村 作治先生

今回は東日本国際大学で総長を務める吉村作治先生をお招きして「夢は叶う~君たちのエジプトを見つけよう」をテーマに講演いただいた。

【ご講演内容】

吉村先生は早稲田大学在学中の1966年に、アジア初のエジプト調査隊を立ち上げて現地に向かい、それから半世紀以上も調査・研究を続けてこられました。74年「魚の丘遺跡」の発見により一躍注目の的となり、その後もエジプト考古学史上に数多くの足跡を残されています。近年は電磁波探査レーダー、人工衛星の画像解析など最先端の科学技術も駆使した調査に取り組み、数多くの成果を挙げている吉村先生。その研究者生活の原点は、小学生のときに出会った1冊の書物でした。これを読んで芽生えた夢を実現するため、エジプト考古学という新たな学問領域まで創設したのです。そんな吉村先生が、夢を叶えるための心構えなどを話された、オンライン講義とワークショップの様子をお伝えします。

偉人伝100冊目での運命の出会い

皆さんの夢は何ですか。私の夢は、世界一のエジプト考古学者になることです。日本一じゃなくて世界一、ここが大切です。

そもそもなぜエジプトに興味を持ったのか。きっかけは、小学校時代のいじめでした。背が低かったために、いじめグループに目をつけられて逃げ込んだ先が図書室、そこで司書さんに全部100巻ある世界の偉人伝シリーズを読むよう勧められたのです。

一冊目のエジソンから始まりキュリー夫人などを経て、99人目がトロイを見つけたシュリーマン、そして最後の100冊目で出会ったのが、ツタンカーメンの王墓を見つけたハワード・カーター『ツタンカーメン王のひみつ』でした。驚いたことに、このカーターは小学校しか出ていない。それでも世界的な大発見をしている。小学4年生だった私は「僕もがんばればエジプトですごい宝物を見つけられるかもしれない」と思ったのです。

担任の先生に「宝物を見つけにエジプトへ行きたい」といったら、「それなら考古学だ、日本で学べるのは東大か京大だけだぞ」と教えてもらいました。先生にサポートしていただき中学受験をして合格、将来のエジプト行きに備えて体を鍛えたりもしました。ところが現役で東大に不合格、一方で演劇にも興味があり受けた他大学の芸術学部に合格。役者をやりたいと母親に訴えたところ「学者は役者をやれるけれど、役者が学者になるには改めて勉強をしないといけない。だから、まずは学者になって、それから役者をやりなさい」と諭されて諦めました。

結果的に浪人して早稲田大学に進みます。そして、大学1年生のとき運命の扉が大きく開き、夢に向けて一気に具体的に動き始めたのです。

資料1

資料1

目指せエジプト!
夢に向けて一直線に突き進む

大学1年生の新入生歓迎会では、みんながそれぞれに将来の夢を話しました。私が語ったのは「エジプトでツタンカーメンを超える王墓を発掘して、世界一のエジプト考古学者になる」でした。突拍子もない夢物語など誰も相手にしないだろうと思っていたら、これが大違い。話を聞いたクラスの半分ぐらいが「吉村くん、僕も連れて行ってくれ」「私も一緒に行きたい」と集まってきたのです。

それならとエジプト研究会のサークルを立ち上げ、渡航のための資金づくりを始めました。いろいろな事業に手を出し、航空会社や客船会社にタダで乗せてもらえないかと交渉したり......。そんな中で大協石油の社長さんにお願いする機会に恵まれて思いの丈をぶつけると「よしわかった、君たちの意気に感じた。タンカーに乗せてあげよう」と仰っていただいたのです。

1966年にアジアでは初となるエジプト調査隊として現地に入り、約6カ月かけて2000キロほどジープで遺跡を回りました。翌年いったん帰国して、すぐにもう一度エジプトに行きました。エジプトの全遺跡をまわった人物は、おそらく世界でも数人しかいないでしょう。王家の谷に行き、ツタンカーメンの墓も見ました。そこで決めたのです、私はピラミッドで有名なクフ王の墓を見つけてやるんだと。

この間ずっと私を支えてくれた恩師が、シュメール研究の専門家だった川村喜一先生です。当時の日本にはエジプト考古学はまだなく、川村先生にお願いして調査隊の隊長になっていただきました。

こうして生涯の目標となったのが「クフ王の墓」の発掘です。実現できれば、世界一のエジプト考古学者になれる。大学卒業後の1971年から、現地での発掘調査に本格的に取り組み始めました。

人生は探検です。冒険ではなくて、あくまでも探検。発掘調査も探検、ですから私は自分たちを発掘隊ではなく、探検隊だと言っていました。

研ぎ澄まされた感性でハイテクを駆使する

探検を重ねる中で1974年に見つけたのが「魚の丘遺跡」です(資料1)。第18王朝のファラオ、アメンヘテプ3世の祭殿は、美しい絵が施された階段が印象的でした。この発見が世界中のマスコミに取り上げられ、日本でも全新聞が記事で紹介してくれました。そこで一躍、有名人になってしまった。新聞に出たのを当時の早稲田の総長がとても喜んでくれ、川村先生と立ち上げていたエジプト調査室を応援してくれました。

続いて1982年にはカイロから700キロ離れたルクソールを調査します(資料2)。ここは王家の谷のあるところで、私たちが探ったのはその反対側にある貴族の谷。200体ものミイラを発掘し、また新聞各紙に載りました。

やがて単に掘り返すだけではなく、調査に最新のテクノロジーを活用するようになります。1992年に電磁波探査レーダーを使って見つけたのがクフ王の「太陽の船」、今から4500年前に造られた全長42メートルもある巨大な船です(資料3)。太陽の船はすでに1948年に一隻見つかっていました。その遺跡に初めて調査に行った私はピンときた。直感的に「おかしい」と感じたのです。

なぜなら最初の船が見つかったのは、ピラミッドの東側でした。古代エジプト人の美意識では左右対称が尊ばれます。だから東側にしか船がないのは明らかにおかしい。日本からレーダーを持ち込んで調べたところ思ったとおり、反対側に船の部材が見つかった。実際の発掘に至るまでには時間がかかりましたが、2011年から作業を始めて、来年2022年4月からいよいよ組み立てを開始します。

今はエジプトの5カ所で発掘を行っています。ピラミッドのまわりにドローンを飛ばして、内部を電磁波でスキャニングしたり、宇宙線のミューオンまで使って透視したりするのです。ピラミッドが王の墓ではなかったと証明するため、ピラミッドの内部を調べています。一方で探しているのが、クフ王の墓です。これもほぼ当たりはついています。

資料2

資料2

夢を叶える5つの原則
「あ・い・う・え・お」

エジプトで夢を叶えるために、これまでの人生を歩んできました。とはいえやみくもに突き進んできたわけではありません。夢を叶えるためには、それなりの原則がある。「あ・い・う・え・お」を守るのです。

「あ」は愛です。自分がやりたいことや夢に対して、愛情を持つのが大前提。次の「い」は意志、やりたいことをとことん貫き通す決意ですね。そして「う」は運、こればかりは自分で作るわけにいかない。けれども、努力が運を呼ぶ。努力は裏切りません。

「え」は縁です。縁はとても大切です。最後の「お」は恩です。恩義を忘れては絶対にだめ。学問に携わっているなら、学恩に報いなければならない。自分を教え導いてくれた先生を、人生の最後まで尊敬し続ける。私は、今でも川村先生から受けたご恩を忘れることはありません。

「あいうえお」を守れば、夢の実現に向けて大きく踏み出せる。そのうえで大切なのは、誰もやらないことをやるのではなく、誰もやりたくないことをやる心構えです。誰でもできそうだけれど、つまらないと思って人がやらないこと、これがとても大切です。

皆さんも、自分がやりたいことや夢を持っているはずです。その夢を実現するためには、途中でめげないでください。一度やると決心したら、その決意を貫き通す。失敗したって構わないじゃないですか。そもそも何もかも成功できるはずもなく、誰でも失敗します。私だってたくさん失敗しています。けれども、成功の輝きが失敗を消してくれる。

「あ・い・う・え・お」を大切にして、加えて3つ心がけてください。それは「絶対にめげない、自分を信じる、予測予断を捨てる」です。私はこれで生きてきました。

こんな人生を送ってきて、79歳になった私は今、エジプト考古学者で世界のナンバー3にまでたどり着きました。あと5年ぐらいのうちに、必ずナンバーワンになります。世界一のエジプト考古学者になる夢を叶えるのです。そのためにもクフ王の墓を見つけなければならない。今はその目標に向かって集中しています。

私がここまで来られたのは最初から「世界一」を目指したからです。「日本一」を目指したのでは「世界一」にはなれない。皆さんも、ぜひ「世界一」の夢を持って、その実現に人生をかけてください。

資料3

資料3
ワークショップの写真

ワークショップ【探る】

テーマは【「行きたい」大学を考える】

吉村先生の講演後は、それぞれのチームにわかれてワークショップを開始。吉村先生から与えられたテーマは【「行きたい」大学を考える】。講演内容を基にメンバー一丸となって考え、発表を行った。ここでは、優勝したチームのプレゼン内容を紹介します。

ワークショップの写真

ワークショップ【優勝したチームのプレゼン内容】

長所と短所の両方を考える視点

まず大学に入るデメリットとメリットを考えました。デメリットは、その大学の考え方にとらわれてしまう、受験という同じボーダーを超えた人としか出会えない、入ることが目的になり大学に入学して満足してしまうなどです。一方でメリットは、やりたいことをできる、好きな学びに夢中になれる、他者とさまざまな価値観を共有できるなどです。そのうえで、私たちが求める大学のあるべき姿とは、自分の興味分野とはまったく別の分野に触れる機会があることです。やりたいことは、コロコロ変わるのが当然だと思います。だからこそ、可能性を無限に広げてくれる大学こそが「行きたい大学」だと考えました。

ワークショップの写真

ワークショップ【講評】

吉村先生の講評

どのチームの発表も高校生とは思えない素晴らしさでした。なかでも優勝チームは、まず大学のデメリットをきちんと踏まえた上でメリットを整理している。単なる学校歴と学歴の違いを理解していて優れていると評価しました。

スゴイ大先輩に学ぼう

タイトル

ナガセの教育ネットワーク

教育力こそが、国力だと思う。