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トップリーダーと学ぶワークショップ
TOP東進タイムズ 2022年2月1日号

リーダーをめざすなら、まず起業
やりたいことは20代で実現できる!

フューチャー株式会社会長兼社長
グループCEO

金丸 恭文先生

今回はITコンサルティング企業、フューチャー株式会社の金丸恭文先生をお招きして「Challenge to Innovation」をテーマに講演いただいた。

【ご講演内容】

金丸先生は1989年にフューチャーシステムコンサルティングを創業し、ITの知見を生かして経営戦略とIT戦略を両輪で捉える、斬新なコンセプトに基づいたコンサルティングを行ってきました。

前例のないコンサルティングスタイルで道を切り拓いてきた金丸先生が、これからの日本を担う若者たちに、何より求めるのが“アントレプレナーシップ”です。自ら新しい価値を生み出し、起業家の精神を持って行動できる若者が活躍する時代であり、そんな人材が日本の未来のために必要だからです。テクノロジーをベースにイノベーションを起こす、革新的な活動に取り組んできた金丸先生の、オンライン講義とワークショップの様子をお伝えします。

なぜ、わずか30年で日本は落ちぶれてしまったのか

皆さんが生まれる前、1989年には世界の時価総額トップ企業20位以内に日本企業が14社も入り、世界1位はNTTでした(資料1)。ところが2019年のランキングでは、日本企業はトップ20に一社も入っていません。なぜ、これほどまでに日本企業は衰退してしまったのでしょうか。

その理由は日本企業が、リアル経済圏でのビジネスを志向してきたからです。日本はずっと、目に見えるモノを競争相手より安価につくるビジネスモデルにこだわってきました。一方でこの間に世界は、サイバー経済圏で競うようになったのです。

1995年頃からインターネットが普及し始め、2005年からはスマホの時代です。この間に最初はインターネット上の書店としてAmazonが登場し、検索エンジンのGoogleが誕生しました。ネットで使える検索エンジンを作ったらさぞかし便利だろう、そう考えた人は世界中にいたはずです。それを実際に自分たちで作ったのがGoogleでした。あるいはネット上に同窓会名簿があれば楽しいと考え、そのプログラムを世界中に広げたのがFacebookです。サイバー経済圏では何かアイデアを思いついたら、それを実現するプログラムを書けばよいのです。

Amazon、Google、Facebook、そしてiPfoneのAppleを創ったスティーブ・ジョブズも含めて、創業者たちはだいたい20代で起業しています。21世紀になって20年が経ち世界は変わりました。これからの主役は若い人です。皆さんには将来の選択肢として、ぜひ起業を考えてほしい。先進国のエリートたちの多くは、起業家を目指しているのです。

資料1

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経営とITのデザインで起業

私が起業したのは、少し遅くて35歳のときでした。経営とITを表裏一体に考える、そんなビジネスモデルで会社を興したのです。私たちの会社は、データに基づいて経営の舵取りのサポートをしています。具体的な納品物としてお客様に提供するのは、最先端のテクノロジーに裏づけられたプログラムであり、これによりお客様の仕事を大幅に効率化しています。

例えば、配送伝票の手書きを入力する作業を、ディープラーニングを活用して自動化しました(資料2)。従来のOCR技術では正確に読み取れなかった手書き文字を、AIに読ませて自動でデータ化します。人間の目の精度を上回るAIのおかげで、人は過酷な作業から解放され、より創造的な仕事に取り組めるようになりました。まさに働き方改革の好例です。

プロ野球チームの強化にも、AIを活用してお手伝いしています。相手ピッチャーの全投球を、コースごとにマッピングして審判のクセを見抜いたり、打球と突き合わせたデータを選手に提供して活用してもらったりしています。パ・リーグでは先発投手が予告されますから、その投手のこれまでの全投球を見て対戦に備えたりもしています。

コンビニに置いてあるLoppiは、ソフトプログラムはもちろんハードウェアの設計から私たちが手がけました。私たちは「経営とITをデザインするフューチャーアーキテクト」です。お客様に自分たちの知識やテクノロジーを提供するだけにとどまらず、自分たち自身で新しいサービスを創造し、提供してもいます。

これからの人生にITは必要不可欠

2020年から日本でもようやく、プログラミングの義務教育化がスタートしました。このプロジェクトの実現には、私も政府の委員の一人としてかなり力を注ぎました。ただし北欧や東欧諸国では、すでに2000年頃からナレッジで勝負する国家戦略を掲げていて、小学校低学年からコンピュータに慣れ親しむ教育を行っています。

一例を紹介すれば、デンマークの小学校では、キーボードの文字配列をジャンプしながら体で覚えるデジタルターザンプログラムを実施しています。その狙いは、英語がわかりプログラミング言語もできて、IT知識を持つ賢い子どもたちを育てることです。エリートに育った彼らが、それでも国を愛し続けるようにデンマーク語や歴史もきちんと教えています。国の文化を大切に守りながら、国際競争力を高めるためデジタル力を強化しているのです。

私が見学に行ったのは10年以上前の話ですから、このときに学んでいた小学生たちは、もう社会に出ているかもしれません。こうした流れを背景に、世界では大きな変化が起こりつつあります(資料3)。

いま世界のテクノロジーカンパニーはどうなっていて、どの企業が優れた研究開発力を持っているでしょうか。日本ではいまだに、大手のコンピュータメーカーこそがテクノロジーカンパニーだと考えられています。けれども、それらメーカーをはるかに凌駕しているのがGAFAです。この4社は、表面上はネットサービス企業に見えますが、実態は完全なテクノロジーカンパニーです。AIのエンジンもこれらの企業が開発している。

ところが、GAFAの先を行く個人の集団が登場しています。その一つGitHubは、世界中の優秀なプログラマーたちが、自分の作ったソフトウェアを自由にアップするサイトです。サイトアップするや否や、今度は世界中のプログラマーがよってたかって評価してくれる。世界のどこに暮らしていようと関係なく、自分のプログラムだけで勝負できる。優れたプログラムさえ作れば、それに見合う世界レベルの収入を得られるのです。GitHubには世界中のプログラマーがアカウントを開いていて、GAFAの研究開発スタッフといえども、GitHubのメンバーに質量ともに敵わないような状態です。

このワークショップに参加している皆さんも、プログラミングを勉強してGitHubにアカウントを開けば、世界を相手に勝負できます。仮に自分でプログラムを書けなくても、GitHubにあるプログラムを活用してビジネスを立ち上げれば、イノベーションを起こす可能性は十分にあります。

同じように研究者たちが、自分の論文をアップするサイトがarXivです。自分の研究成果に自信があれば、ここに論文を出して、世界中の研究者から評価を受けることができる。優れた研究者が、大企業の中に埋もれている必要などまったくなくなります。

今は第三次AIブームといわれていますが、そのスタートは2015年ぐらいからです。この間に最も積極的にAIを活用したのがGoogleで、日本企業はほとんど使わなかった。そのためわずか6年の間に大きな差がついてしまった。中国は人工知能教育を高校生の必修としています。皆さんはこれからの国際社会で、そんな相手と競争しなければならないのです。ITと無縁の人生を送るのは難しいと思います。

資料2

資料2

20代で主役をめざせ

皆さんはぜひ、自分たちが20代で主役になると決意してください。なぜ日本がダメになってしまったのか。若い人たちに、自分が主役になるという自覚が欠けていたからです。世界では能力の高い20代が、どんどん起業し、ダイナミックな新陳代謝を起こしている。そんな世界で、これから自分が生きていくのだと覚悟しましょう。

そこで大切なのはアントレプレナーシップ、新しい事業の創造意欲に燃え、高いリスクに果敢に挑む姿勢です。リーダーをめざす人は、ぜひ起業に挑戦してほしい。能力の高い人が挑戦すれば、成功する確率は高くなります。

それでも起業して成功するのは1000社に3社だけなのです。逆に考えれば、3社が成功してイノベーションを起こすためには、残り997人の挑戦者が必要だということ。挑戦して失敗した人を称賛し、再度挑戦できるように支援する体制も求められます。

まずは小さな挑戦でいいから、とにかく始めましょう。毎日、どんな些細なことでもいいので挑戦を続けて、少しずつ取れるリスクを大きくしていく。若い頃からの失敗と成功の蓄積が、いざというとき必ず役に立ちます。

進路は本当に好きなことをやれる大学、学部、学科を選んでください。好きで得意な道で勝負し、20代での起業を目指す。そのためにできれば理系に進み、プログラミングも身につけておきましょう。世界中で行われている、好きで得意なものでの競争に、ぜひ皆さんも飛び込んでください。

資料3

資料3
ワークショップの写真

ワークショップ【探る】

【常識にとらわれず課題を発見しよう、そして新しい価値を創造しよう】

金丸先生の講演後は、それぞれのチームにわかれてワークショップを開始。金丸先生から与えられたテーマは【常識にとらわれず課題を発見しよう、そして新しい価値を創造しよう】。講演内容を基にメンバー一丸となって考え、発表を行った。ここでは、優勝したチームのプレゼン内容を紹介します。

ワークショップの写真

ワークショップ【優勝したチームのプレゼン内容】

芸術とAIの融合

高校で芸術の授業を選択するとき、なぜ一つに絞らなきゃいけないのかと思います。もちろん高校生は忙しく、やることがいっぱいある。国語、数学、英語、理科、社会、全部やらないといけない。芸術なんかにそんなにかまっていられない。これからは机上の勉強だけではない能力が問われます。美術、音楽、書道はそれぞれ養える能力が違う。それを一つに絞らせることはおかしいです。

私だけかと思って、ネットの知恵袋で調べてみました。「芸術選択迷っている」カテゴリーで調べると、9,037件もヒットしました。これは解決すべき課題だと思いました。芸術で養える能力の最大化を目標として、解決法を二つ考えました。第1は、何がなんでも一つに絞らないといけない場合には、個人の能力をITで分析して、選択を最適化させます。第2は、全科目を選択できる場合、履修科目をITで細かく分析し、例えば絵を描いて得られる能力、彫刻による能力、音を奏でる能力などに細分化します。そのうえで、個々に彫刻と音などといった具合に選択させるのです。これは「つまみ食い方式」と名づけました。

ワークショップ【講評】

プレゼンテーションが上手で熱意があるという点を差し引いても、しっかりデータを取っていることや身近で、当たり前と思われている事柄に疑問を持ち、解決策がしっかり考えられていて、秀でていました。

未来発見サイト

タイトル

ナガセの教育ネットワーク

教育力こそが、国力だと思う。