こんにちは、東大法学部第三類三年の平山です。久々の登場になります。

暑い日が続きますが、皆さんいかがお過ごしでしょうか。

 

さて前回、前々回の記事で工学部と医学部が紹介されていましたので、負けじと今回は東京大学法学部について紹介したいと思います。

とは言いましても、普通の法学部紹介では面白くありません。なので今回は"第三類"というマイノリティの視点も交えながら法学部というものを見ていきたいと思います。

 

さて、皆さんは法学部が類に分かれていることをご存知でしょうか。第一類(私法コース)、第二類(公法コース)、第三類(政治コース)に分かれ、概ね一類が司法試験を目指し、二類が公務員試験を目指すというようになっております。コース間の垣根は低く、途中で転類する方も多数います[i]

この三つの類の中で最もマイナーなのが三類です。私の学年には30人程しか在籍していません。高校の一クラスよりも少ないですね。

そもそも政治コースが法学部に存在していること自体おかしいという意見があります。法学と政治学は無関係とは言いませんが、全く別の学問であることは間違いありませんし、政治経済学部のような別個の学部を設置している大学も少なくありません。このことによりどのような帰結が生じているのかも、以下で若干触れることが出来ればと思います。

 

①法学部の授業

 

まずは法学部の授業について概観します。その特徴としては、大教室、一方通行、演習の三つが挙げられるでしょう。

 

まず大教室です。法学部の授業は受講者数がとにかく多い! 法学部には約400名在籍していますが、必修の授業(例えば民法や憲法)では全員強制履修です。単位を落とす方も一定数いますので、履修者数が600名を超える科目もあります。試験の時には巨大な教室の中に詰め込まれることになります。

 

次に一方通行です。法学部の授業の殆どは教授が延々と喋るスタイルです。黒板もそれほど使いません。授業中に質問することも多くの場合難しいです。先生の話を延々と聞いて、評価は試験一発勝負というのが法学部です。

 

最後は演習です。所謂ゼミですね。もちろん演習にも様々な形態がありますが、教授の下で学部生と院生合わせて1020名ほどが議論をしながら勉強していくというスタイルになっています。まるで通常授業の埋め合わせをするかのように、演習では様々なフィードバックを得ることが出来ます。

私自身は法哲学演習に参加していました。英語文献を毎回30ページほど読んできて、担当者が報告を行い、それを基に議論するというスタイルでした。これを通じて実質的な憲法改正についての理論的考察を行ったのですが、知的刺激を多々受けることができました。演習の為だけにでも、法学部に来る価値はあると思います。

 

 

さて、具体的な授業の内容に関してもざっと説明しておきましょう。

法学部の授業は大きく実定法、基礎法学、政治学、経済学に分かれます。

実定法とは民法や刑法のように、法学部と聞けばふつう想像するような科目です。

それに対し基礎法学とは法制史や法哲学といった分野になります。この基礎法学の分野が充実していることも東大法学部の特徴と言えましょう。

政治学は日本政治や比較政治のように所謂政治に関わる学問です。

経済学は経済学基礎や財政学のように経済に関する科目です。経済学部との合併授業なこともあります。数はたいして多くありません。

これから分かる通り、法学部は実定法が中心であっても、案外多岐にわたる授業を行っています。他学部の授業も若干なら単位に含めることが出来る[ii]ということもあって、幅広い勉強をするには意外と法学部は向いているのかもしれません。

三類の学生については政治学系の授業を中心に取ることになります。ただ民法などは必修なので実定法でも取らざるを得ませんし、政治学系だけでは取得単位数が足りないので結局は法学乃至経済学も学ばなければならないということになります。

 

参考までに具体的な授業をいくつか紹介したいと思います。

 

先ずは憲法です。これは法学部生全員が必修なので受講者がとても多い科目になっています。また、大教室で行われるにも関わらず、現在担当されている教授の方[iii]がとても声が小さいため、リスニング能力が試される授業です。因みに三類の私からすると法学なのに必修のため、非常に厄介な科目になっております。常日頃から法律に触れている方々と闘う訳ですから大変です。

 

次に日本法制史です。これは基礎法学の科目です。古代から近世にかけて日本の法がどのように存在していたのかを時代の流れに沿って検証していく授業です。高校日本史の土台に当たるような部分を学ぶことで、歴史理解が深まる授業でした。

 

次に日本政治外交史です。これは三類のみの必修です。幕末から第二次世界大戦に至る日本の政治史を概観するという内容です。知識的には高校日本史に毛が生えたような程度ですが、最新の研究を反映した歴史解釈を知ることが出来ます。例えば高校教科書では日露戦争へ至る過程が[日露協商論―満韓交換論]vs[日英同盟論―満韓不可分論]という構図で捉えられていると思いますが、最近の研究ではどうも違うらしいということが主張されているようです。

 

最後に経済学基礎を紹介しましょう。これは経済学の本当に基礎的な部分を紹介する授業になっています。数式も殆ど出てきませんし、正直簡単なのですが、経済学入門としては優れた授業になっています。

 

思ったより長くなりましたが、授業に関しては以上です。

 

 

②法学部での勉強

 

法学部での勉強は大きく資格勉強、試験勉強、その他に分かれると思います。

 

まず資格勉強です。これは司法試験に向けてと公務員試験に向けての勉強に分かれます。多くの学生がどちらかの受験を考えており、常日頃から勉強しているようです。実際法学部生の勉強熱心さには私自身驚かされます。残念ながら私はあまり詳しくないのでこれぐらいにしておきます。

 

次に試験勉強です。これはとても大変です。シケプリ[iv]400枚を超えることもあります。試験範囲は一科目に付き教科書一冊という感じです。覚えるだけでも相当しんどいです。

また、法学部のほとんどの授業は試験のみで評価が決まります。不可を大量に出す先生もいます。もちろん単位を落としても来年取ればいいのですが、落とし続けると留年です。なので皆必死で頑張ります。

 

さて、実は三類は(あくまで相対的にですが)他の類よりも試験が大変ではありません。というのも政治系の科目の方が分量的にも内容的にも実定法系の科目よりも楽だからです。なので楽だから三類にするという不純な人間も存在します。

しかしデメリットもあります。必修で実定法の科目が他の類より重たくなるのです。具体的には民法です。民法は第一部から第三部まで全科類共通の必修で、普段は法律に触っていない三類の生徒からすればとても困った科目になります。それに政治学と民法は特に関連をもたないので、三類の生徒からすれば兎に角不条理であるということです。

 

最後にその他の勉強です。人によっては資格試験や法学部の試験対策以外にも勉強しています。やる気さえあれば学部試験や資格に関わらない幅広い勉強を行えるところが法学部の最大のメリットであると個人的には思っています。何しろ特に資格も目指していなければ、試験前以外は基本的に余裕があります。授業も出席が必須ではありません[v]。それなら時間は十分ありますし、身近には資料が沢山あります。勉強したい放題ですよね!

ということで具体的には私的な勉強会を行ったりします。1人で勉強するよりみんなで勉強した方が楽しいという訳です。実際、議論を通じて理解は深まるので私もいくつかやっていました。例えばノージック読書会[vi]やアガンベン読書会[vii]です。

ここで察していただけたかもしれませんが、私は所謂政治学とはずれたところに興味関心があります。つまりマイナー中のマイナーなわけですが、そんな人間でも十分やっていけるというのがこの法学部の素晴らしいところであります。もちろんしっかり単位を取得できればの話ですが()

 

以上が法学部での勉強です。他学部に比べると大変らしいです。

 

 

③法学部生の進路

 

これに関しては簡単に紹介します。

まず最近では過半数の学生が民間就職します。なので法学部=法曹or官僚というのは間違いです。ただ民間といっても就職先は多岐にわたります。コンサルや商社、金融などが比較的多いのでしょうか。外資に就職する方もそこそこいます。

次に法曹を目指す方も一定数います。大体100名程度でしょうか。多くは一類の方です。在学中に司法試験に合格される方もいますが、多くは法科大学院に進学します。大学とは別に予備校に通う方も多く、皆さんとても勉強されています。

官僚を目指す方も勿論います。大体780名といったところでしょうか。多くは二類の方です。彼らも国家試験に向けてとても勉強されています。

また研究者になるべく大学院進学[viii]を目指す方もいらっしゃいます。とはいえ他の大学院と比べて狭き門であると専ら言われています。成績が相当良くないと進学できないらしいです。

 

さてマイノリティの三類の方々の進路はどうなっているかというと、やはり多くは民間就職です。ただ公務員も案外います。また、人数の割に研究者志望の人も多いと言われています。

因みに私ですが、絶賛悩み中です。最早悩んでいる場合ではないのですが悩んでいます。「平山さんはこういうの向いてると思う!」という意見がありましたらアドバイスして下さい()

 

 

④法学部の雰囲気

 

最後に法学部の雰囲気を少しばかり伝えたいと思います。

一般によく言われるのは、法学部は砂漠であるということです。確かに人間関係は希薄になりやすいです。基本的に大人数での授業ですし、そもそも授業に来ない人も多いです。新しい友達はなかなかできません[ix]。また、資格試験を目指す人が多く、学部の試験も厳しいため、勉強するのが当たり前という風潮があります。

但しこのような暗い側面ばかりではありません。例えば演習に参加すればゼミコンパなどが開かれ、ゼミ生同士で仲良くなれる可能性もあります(あくまで可能性です)。また法学部には法律相談所や三類懇親会[x]といったサークルが存在します。このような団体に所属すれば交友の輪が広がる可能性もあります。

因みに三類はせいぜい30名程度なのだからみんなと知り合いになれるかといわれると、そんなこと全くありません。類が一緒で必修が被っていても、特に交流はありません。なので結局のところ知り合いを増やすにはそれなりの努力が必要になります。

 

 

 

以上、東京大学法学部について簡単な紹介をしてみました。ところどころで三類視点が混じっていて鬱陶しかったら申し訳ありません。ただここで伝えたかったのは、法学部は確かに試験が厳しく人間関係も希薄になりがちだけれども、意外と自由に振る舞うことが出来るということです。法曹になるべく勉強に邁進してもよければ、三類に進学してのんびり政治学を学んでもいいわけです。法学部の人気が落ちているというような話もありますが、法学部も案外捨てたものではないのではないでしょうか。

 

最後になりましたが、暑い中大変でしょうが、受験勉強頑張って下さい! 夏模試での皆さんの健闘を願っています。



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[i]現在法学部ではカリキュラム改革が行われており、2017年度進学者からコースが再編成されることになります。但し大枠としては変わらないと思われます。詳しくは東京大学法学部ホームページをご覧下さい。

[ii] 現在では12単位まで卒業単位に含めることが出来る。

[iii] 皆さんが進学される頃には退官されていると思います。

[iv] 学生が協同し作成する非公式の試験対策プリント。法学部では講義録の形式で作成されることが多い。

[v] 教授の中には生徒時代授業に出たことがなかったために授業の仕方が分からないとおっしゃる方もいるそうです。

[vi] ノージックの主著『アナーキー・国家・ユートピア』を輪読しました。最小国家の正当化並びにそれを超える国家が正当化できないことを証明しようとした著作です。

[vii] イタリア現代思想を学ぶべくアガンベンの主著『ホモ・サケル』を輪読しました。ホモ・サケルは殺害可能かつ犠牲化不可能な存在です(これ以上説明しません)

[viii] 法科大学院とは別です。総合法政といって研究者を目指す方が進学します。

[ix] 因みに私の場合、法学部進学後友達は一人しか増えていません。まぁ特殊例なのかもしれません()

[x] 因みに三類懇親会は他の類でも所属できます。

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