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トップリーダーと学ぶワークショップ
TOP東進タイムズ 2016年4月1日号

簡単には実現できない
大きな夢に挑もう!

慶應義塾大学 理工学部 教授

小池 康博先生

ビジネスや研究、政治の最前線で活躍する「現代の偉人」を講師に迎えて行っている「トップリーダーと学ぶワークショップ」。今回は「高速プラスチック光ファイバー」のパイオニアとしてノーベル賞候補と言われている慶應義塾大学理工学部教授小池康博先生にご登壇いただいた。世界一速い光通信を可能にするフォトニクスポリマーとは。開発の過程で先生が悩み、至った真理とは。講演後はは「Face-to-Faceコミュニケーション」をテーマにグループで討論。科学技術の可能性について熱い意見が飛び交った。

講演者プロフィール

慶應義塾大学理工学部教授。専門分野は、高速GI型プラスチック光ファイバー・ 高輝度光散乱導光体、ゼロ複屈折性ポリマー、高出力ポリマー光ファイバー増幅器、 レーザー、屈折率分布型ポリマーレンズ等をはじめとするフォトニクスポリマー。 1982 年慶應義塾大学大学院工学研究科博士課程修了、1989 年米国ベル研究 所研究員、1997 年より慶應義塾大学理工学部教授。2000 年(独) 科学技術 振興機構ERATO「小池フォトニクスポリマープロジェクト」総括責任者。2005 年(独)科学技術振興機構ERATO-SORST「Fiber To The Display のため のフォトニクスポリマー」研究総括、2010 年内閣府最先端研究開発支援プログ ラム(FIRST)「世界最速プラスチック光ファイバーと高精細・大画面ディスプレ イのためのフォトニクスポリマーが築くFace-to-Faceコミュニケーション産業の 創出」中心研究者。2001 年第42 回藤原賞受賞。2006 年紫綬褒章受賞。

世界最速のプラスチック
光ファイバーを生み出す

講演テーマにもなっている「フォトニクスポリマー」は私が30年以上取り組んできた研究であり、生きがいそのものです。

「フォトニクス」とは光の研究、「ポリマー」とは高分子、すなわちプラスチックを指します。私の研究は光がポリマーに当たったとき何が起きるのかということなのです。これらの研究を通じて世界最速のプラスチック光ファイバーや、ノートパソコンのディスプレイに搭載されている光散乱導光ポリマーといったものを、世界に先駆けて提案してきました。

闇を抜けるきっかけは
偉大な科学者の公式

光の本質に迫る研究から、私は1秒間に40ギガビットという世界最速のプラスチック光ファイバーを開発することができました。

しかしながら今日に至るまで、さまざまな挫折もあり、思い悩むこともありました。私が28歳のときに研究していたプラスチック光ファイバーは、何メートルの光を通すことができたと思いますか。たったの6メートルです。光が散乱してしまって、遠くまで進まないのです。その状態が8年間も続きました。

そんな暗闇の中で出会ったのが、アインシュタインが1910年に書いた「揺動説理論」の論文です。そこに記された公式に実験素材の値を挿入してみると、驚くことに、理論上は1キロメートル以上の伝送が可能であるという結果が出ました。

当時の私にとって、まさに未来への「光」でした。では、実験値との誤差はなぜ起きていたのでしょう。遠くまで光が進まないということは、光が過剰に散乱しているということです。その原因は何なのだろうと考えました。

ここでヒントをくれたのがドイツの物理学者ピーター・デバイの1949年の論文で、その謎をひも解くかぎがありました。彼らの論文は、今でも私にとっての「バイブル」です。真理は最新の論文にではなく、古典の中にあったのです。

新たな「材料の機能」が
歴史を塗り替える

今、2020年の東京オリンピックに向けて4Kや8Kといったスーパーハイビジョンの開発が進んでいます。

ただし、これは単に大画面による迫力ある映像の実現を意味するものではありません。例えば医療分野。8Kは視力4.3に相当し、これまで見えなかった極めて初期のガン細胞も捉えられるようになります。画面を介することで遠隔手術も可能になるでしょう。あらゆる分野で常識を覆すようなイノベーションが始まるのです。

私どもが開発したプラスチック光ファイバーは既存の光ファイバーの置き換えではありません。現在インフラとして使われているのはガラス製の光ファイバーですが、これを4Kや8Kのテレビで使うには伝送速度が足りません。展示場などで見られるスーパーハイビジョンの裏側は電気ケーブルが10本以上も繋がれているのが実情です。

それに対して、高速プラスチック光ファイバーは伝送速度を決める「材料分散」がガラスより優れているので、高速通信が可能です。近い将来、この革新的な素材を用いた通信回線で大型テレビやタブレットなどあらゆる情報をつなぐ時代がやって来ると確信しています。

皆さんに伝えたいことは、叶えられないくらい大きな夢を持って欲しいということです。己の小ささを感じながら必死に努力するとき、人は最も成長するからです。

ワークショップ 【探る・話す】

テーマは「Face-to-Faceコミュニケーション」

参加者は6人一組でチームを構成。まずは簡単な自己紹介から。その後、進行役や書記を決めて、いよいよ討論がスタート。「今、使っているコミュニケーションツールの不便な点は?」「五感に分類して考えてみようよ」 緊張していたメンバーが次第に打ち解けていく。

ワークショップ 【予選会】

予選に挑む

決勝に進むチームを決める予選会。全22チームをA~Fの6グループに分け、グループ内で各チームの発表者が1分30秒で発表。自分たちと異なる視点の意見に興味津々。最後に最も良かったと思うプレゼンについて挙手で投票し、代表チームが決定。

ワークショップ 【決勝】

予選を勝ち抜いて、いよいよ決勝。

選抜チームによる決勝。代表者1 名がステージに上がり、発表を行った。時間は5分以内。「視覚面や聴覚面はその場にいるのと遜色ないレベルまで実現される」「映像授業と公開授業の違いをヒントにITによるコミュニケーションの意義を改めて考えたい」などの意見が出された。

ワークショップ 【結果】

表彰式

発表ごとに小池先生が講評を行った。自分たちの考えはどこまで通用するのか、世界が注目する科学者の先生からじかに意見を聞けるチャンスとあって興奮気味の発表者たち。「どのグループも私が想像していた以上に深い視点で議論していることに驚きました」と小池先生。見事、栄冠に輝いたのは「今はまだテクノロジーが未熟でコミュニケーションに誤解が生じる段階。それをなくすには“臨場感”がキーになる」と意見を述べたグループ。ひときわ大きな拍手のなか、グループのメンバー全員に賞状が授与され、小池先生と記念撮影を行った。

参加した高校生の

東京都立 八王子北高校 2年

小俣 悠太くん

僕の夢はゲームクリエイターになることです。講演を聞いて、今後のFace-to-Faceコミュニケーションの可能性、中でも視覚面における急速な発展を感じてわくわくしました。「自分の専門分野を二つ持ちなさい」と小池先生がおっしゃっていたので、「イラストとシステム」というように複数の能力を身につけたいと思っています。

東京都 私立 中央大学附属高校 2年

中野 光くん

IT技術についてはいろいろな意見がありますが、僕は人間や機械をより優れたものに変える人類の財産だと思っています。一番印象的だったのはベル研究所の話です。異分野の研究者との交流が思いもよらぬ発想につながったエピソードは感動的でした。科学に興味があるので、小池先生のように世界を舞台に活躍する研究者になりたいです。

埼玉県 私立 春日部共栄高校 2年

木村 優太くん

科学の進歩はメリットも多い反面、画面による会話が増えれば自分を閉じ込める可能性が高くなるのではと少し心配になりましたが、それらの課題についてもお話がありました。現在の日常生活においては技術に依存しすぎることなく、面と向かって話をする機会を意識的に持つことも大事だと感じました。

埼玉県 私立 西武学園文理高校 2年

松本 瞳さん

外科医を目指しています。8Kの大画面を使った手術の話は興味深かったです。また、Face-to-Faceのコミュニケ―ション技術はメールやLINEにも生かされるようになると思います。自分が使う立場として話を受け取れたのがよかったです。ワークショップは自分とは異なる意見をたくさん聞けて勉強になりました。

東京都 私立 穎明館高校 3年

髙橋 月音さん

私は人とのコミュニケーションは面と向かって話すのが一番いいと思っているのでSNSツールを使っておらず、そんな考えを友達も理解してくれています。そんな私と通ずるような考えを科学者である先生から聞けたことが驚きであり、嬉しかったです。進路は思案中ですが、「情報通信の速度を向上させる研究」にも興味が湧いてきました。