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TOP東進タイムズ 2018年4月1日号

2040年の世界を考える

東京電機大学 システムデザイン工学部 教授
元NTTコミュニケーション科学基礎研究所 所長

前田 英作先生

各界の第一線で活躍する経済人や研究者を講師に迎えてお送りする「トップリーダーと学ぶワークショップ」。今回は、NTTdocomo の音声機能サービス『しゃべってコンシェル』の開発等を手がけてきた東京電機大学の前田英作先生にご登壇いただき、人工知能の本質についてご講演いただいた。また、その後のワークショップでは「2040 年の世界を考える」をテーマにグループディスカッションを開催。200 名に及ぶ高校生たちが意見を闘わせた。熱気に包まれた当日の模様の一部をお届けする。

講演者プロフィール

1961 年生まれ。東京大学理学部生物学科卒業。同大学理学系大学院生物科学専攻科修了後、日本電信電話(株)(略称:NTT)入社。
言語処理や生物情報処理、統計的学習などについて研究し、過去の新聞記事データから解答をはじきだす質疑応答システム『SAIQA』を開発。こうした技術をベースにNTT docomo の音声機能サービス『しゃべってコンシェル』を開発。ケンブリッジ大学客員研究員、NTT コミュニケ―ション科学基礎研究所人間情報研究部部長、環境知能研究グループリーダー、大阪大学、慶應義塾大学での助教授兼務などを経て、NTT コミュニケーション科学基礎研究所所長を務める。現在は東京電機大学システムデザイン工学部教授、東京大学総合文化研究科で非常勤講師を兼任。

世界は「使われなかった人生」であふれてる?!

皆さんは、今「AI(人工知能)」という言葉があふれ返っているのをご存じかと思います。現在のAIをどのように理解して、これをどうやって扱わなければいけないのか。そのためには何が大切なのか。その根本を理解してほしいと思います。

その前に私が最近、若い人たちにお伝えしている3つのことをお話ししましょう。まずは「この国を創るのは皆さん」だということです。そしてそれを行うために必要なのは「世界を観る眼、考える力」を養うこと。それから「科学・技術の流れを掴む」ことです。今回は、『世界は「使われなかった人生」であふれてる』というテーマですが、人生の長い道のりは選択の連続です。皆さんもさまざまな選択をして、ここにいます。そしてこれからも選択をし続け、人生が決まっていきます。選択肢は無限ですが、その中の一つしか選べません。ですから世界は「使われなかった人生」であふれているわけです。けれども、今から新しい選択をして「使われなかった人生」をもう一回使ってみる、という選択肢は実はあるかもしれません。

未来を考えるための3つのヒントとは?

そのうえで、皆さんの未来を考えるための三つのヒントをお話しします。まず一つ目のヒントは、未来を考えるときには「ありうる未来」「あるべき未来」「ありたい未来」の3つの視点があるということです。「ありうる未来」は、現在の技術を踏まえて、将来はこうなるだろうという技術予測。二つ目の視点は、政治家や役人が世界の将来像を考える「あるべき未来」。そして皆さんに考えてもらいたいのは「ありたい未来」です。これからの20 年は、大変な時代だと思います。ですが皆さん自身で「ありたい未来」を考えていかなければなりません。

さて、二つ目のヒントとしてお伝えしたいのが「人工知能」の話です。現在は、第三次人工知能ブームといわれています。IBMのワトソンやGoogleが進める自動運転技術、それからシンギュラリティ(技術的特異点)という言葉も騒がれています。また「ディープラーニング(深層学習)」や「ビッグデータ」という言葉も、今のAIブームを語るうえで避けて通れないキーワードです。

私たちに見えているのは可能性の一部に過ぎない

未来世界を考えるときには、2つのことを理解しておきましょう。一つは「私たちに今見えているのは、その可能性のごく一部に過ぎない」ということです。情報技術の分野では予想以上の展開が起きています。それからもう一つは「AIと人間は融合に向かう」ということです。私たちの生活や頭の中にまでAIはすでに侵食してきています。

そのためにも、AIを正しく理解する必要があります。AIというのは、音声認識や画像処理といったさまざまな情報技術の積み重ねです。とりわけ近年のブームをけん引しているのが「ビッグデータ」と「ディープラーニング」という二つの要素です。

ビッグデータとは、文字通りデータがたくさん集まっているということです。80年代に進んだデジタル化によってそれらのデータの「複製」が可能となりました。さらにインターネットの普及によってネットワーク化が可能となると「集積」や「配布」ができるようになります。現代は、あらゆるデータが「記録」「複製」「集積」される時代だということです。このビッグデータとセットで覚えてほしいのが「ディープラーニング」です。ここには人間の脳内の神経細胞の構造に似た「ニューラルネットワーク」という情報処理技術が関わってきて、現代では何十層にもわたる複雑なニューラルネットワークを処理できるようになりました。

科学的に正しいことって何だろう?

未来を考える三つ目のヒントは「科学的に正しいことって何だろう?」ということを考えることです。科学というのは、極めて不確実なものです。科学技術の歴史の中で、それまで常識だと考えられてきたことがひっくり返されてきたことは何度もあります。ですから、最後は皆さん自身の眼でちゃんと見て、判断をしないと大きな間違いを起こします。最初に「自分の眼で見て、考える力を養ってください」といったのは、まさにこのことです。

私たちが今理解している世界というのは、小さな世界に過ぎません。科学技術の最先端というのは、私たちの知っている小さな世界を少しでも押し広げようとする取り組みです。ところが、それが本当に正しいものであるかはわかりません。間違いや失敗もたくさんあります。最先端の境界線部分というのは、実は危険な領域で、よく注意して、見識を養って取り組んでいかなくてはいけない世界なのです。

今は何でもできる時代!
だからこそ複数の専門分野を学ぼう!

情報技術は見えないところにいろいろなものが使われています。何が本当のポイントなのかは、きちんと勉強し、ぜひ大学で見る目を養ってほしいと思います。文系に進む人も同じです。法律や経済を考えるときも、何がポイントであるかが見えている人とそうでない人とでは、大きな差が出てきます。

特に、技術に興味のある人にとって今は何でもできる時代です。例えば、ディープラーニングに関しても、A I に一からデータを集めて学習をさせなくても、ネットで公開されているものを持ってくれば、手持ちのノートパソコン程度でいろんなことができます。

ですがそれは逆に、競争の世界でもあります。途上国の人でも、能力とやる気さえあれば、ネットからいろいろな道具を手に入れて、先進国の人たちに追いつくことができるからです。私たちは今後、そうした人たちと切磋琢磨していかなければいけません。私は生物学と工学を勉強してきましたが、複数の分野にまたがっていろいろなことを見ておくことは、これからもっと重要になってくるでしょう。勉強量は増えるかもしれませんが、最後に大きな仕事をする人は、複数の専門分野をきちんと学んでいる人なのです。

ワークショップ【探る・話す】

ワークショップテーマは「2040年の世界を考える」。

「未来社会を予想するのではありません」と前田先生。「奇抜な発想を期待」としながらも「そこに至る根拠なり、説明が必要」と論理的な思考を求めていることを強調。自分の考えを予備シートに記入して、さっそく議論スタート!

ワークショップ【発表する】

総勢200名あまり34チームが競う予選会。

「国が消える」「バーチャルな世界が進む」「他の生物と話ができる」「火星に人が住む」などユニークなアイデアが次々に披露される。図表やイラストを交えたり、声の大きさや調子にも気を配る。聴衆の心に残るプレゼンを行って初めて決勝への道が開かれる。

ワークショップ【本選】

予選を突破した6チームによる決勝戦。

「新しい言語が誕生する」「ハンディキャップがなくなる」「宇宙空間でのAIとの共生」といった良いシナリオの一方で「脳以外のロボット化が進む」「地球が滅亡する」「独裁的な世界が生まれる」といった悪いシナリオも発表された。多彩なアイデアに、前田先生の講評にも熱が入る。

ワークショップ【結果】

表彰式

前田先生の厳正な審査の結果、「法」と「経済」という視点で2040年の社会を考えたチームが栄光に輝いた。「40才の皆さんが活躍している姿を見るのが楽しみです」と前田先生。表彰式と記念撮影の後、今回のワークショップも盛況のうちに閉幕した。

参加した高校生の

東京都 国立 東京大学教育学部附属中等教育学校 1 年

中山 宗弘くん

今回のワークショップでは、柔軟な発想を求められつつも論理的な道筋を立てることも必要とされました。とりわけ、ものごとを考える際の根拠づけや言葉の定義づけを曖昧にしないことの重要性を学んだように思います。天文学が好きということもあり、将来は工学系に進んでロケットエンジンの開発や人工衛星の設計などを手がけたいと思っています。

千葉県 私立 渋谷教育学園幕張高校 2年

熊田 新之介くん

プレゼンやディスカッションを自分がどれくらいできるのか確かめるために今日は参加しました。初参加ながら発表者を務め、チームのまとめ役として意見を集約し、テーマに沿って道筋を整えることはできたと思います。人間とAIが共存していくことが大事だという前田先生のお話は、自分にとってとても新鮮で、これまでとは違う視点を与えて頂きました。大学では社会学を勉強して、将来に役立てることができたらと考えています。

埼玉県 私立 栄東高校 2年

森山 なつみさん

未来の話を聞いたり話したりするのが好きなので、今日の前田先生の講義はとりわけ楽しかったです。生物やコミュニケーション、言語などの研究がすべてつながっている点に、とくに感銘を受けました。ワークショップではまとめ役と発表者を務めましたが、制限時間内でチームの意見を集約して発表することの難しさを痛感しました。将来は農学部でバイオテクノロジーを勉強して、食糧危機の問題やスーパーフードの開発などに携わりたいです。