全体概観
設問数・マーク数が昨年から1つずつ減った。評論は昨年に比べやや硬質な文章。小説は戦後初期に発表された作品が出題された。古文は過去にも頻繁に出題された擬古物語。漢文は『文選』からの五言詩が出題された。
大問数 |
減少 | 変化なし | 増加 |
設問数 |
減少(-1) | 変化なし | 増加 |
マーク数 |
減少(-1) | 変化なし | 増加 |
難易度 |
易化 | やや易化 | 昨年並み | やや難化 | 難化 |
大問数4題、各大問の配点50点。設問数・マーク数は漢文で昨年より1つずつ減った。
第1問の評論は、「レジリエンス」という概念の現代的意義を論じた文章。設問形式に大きな変更はない。字数は約3200字で、一昨年から減少した昨年(約4200字)より更に減少した。「レジリエンス」という概念に馴染みのない受験生はとまどったかもしれないが、筆者が豊富に具体例をあげており、論旨に従って読み進めれば、十分理解可能な内容である。問5は、生徒の会話に基づいた空欄補充問題だが、実質的には文章の内容合致問題と言える。
第2問の小説は、昨年と同じく戦時下の状況が大きく影響した内容で、病妻と魚屋の若者の死に対する「私」の内面が多く語られている。手紙文の引用をどう読むかが問われているが、慣用句の問題、表現の特徴に関する問題も例年通り出題されている。問題分量は1ページ程度減少している。
第3問の古文は、過去にも頻繁に出題されてきた物語系作品。本文の長さは過去十年の平均より200字ほど少なく、設問形式はほぼ従来どおり。擬古物語で出題されることが多い和歌の問題はなかったが、中盤の尼上の発言内容や後半の人々の様子などを正確に読み取るには精密な読解力が必要である。問2は珍しく二年続けて敬意の方向の問題であった。
第4問の漢文は、単独では古く1992年度の白居易の古詩以来、散文中に詩が入る形でも2007年度以来、久々に漢詩の出題であった。設問形式は、語の読み、返り点のつけ方と書き下し文との組み合わせ、心情説明など、例年と変わりのないものもあるが、詩のきまりの押韻の空欄補入、詩句の表現の問題に加え、図から答を選ぶという珍しい形の出題もあった。設問数は7から6に戻り、マーク数も7になった。
国語全体としては、昨年並み。
年度 | 大問 | 出題分野 | 設問数 | マーク数 | 配点 |
2020 | 第1問 | 評論:河野哲也『境界の現象学』 | 6 | 11 | 50 |
第2問 | 小説:原民喜「翳」 | 6 | 9 | 50 | |
第3問 | 古文:『小夜衣』 | 6 | 8 | 50 | |
第4問 | 漢文:『文選』謝霊運の詩 | 6 | 7 | 50 | |
2019 | 第1問 | 評論:沼野充義『翻訳をめぐる七つの非実践的な断章』 | 6 | 11 | 50 |
第2問 | 小説:上林暁「花の精」(『星を撒いた街』) | 6 | 9 | 50 | |
第3問 | 古文:『玉水物語』 | 6 | 8 | 50 | |
第4問 | 漢文:『杜詩詳註』 | 7 | 8 | 50 | |
2018 | 第1問 | 評論:有元典文・岡部大介『デザインド・リアリティ−集合的達成の心理学』 | 6 | 11 | 50 |
第2問 | 小説:井上荒野「キュウリいろいろ」 | 6 | 9 | 50 | |
第3問 | 古文:本居宣長『石上私淑言』 | 6 | 8 | 50 | |
第4問 | 漢文:李『続資治通鑑長編』 | 6 | 8 | 50 | |
2017 | 第1問 | 評論:小林傳司「科学コミュニケーション」 | 6 | 11 | 50 |
第2問 | 小説:野上弥生子「秋の一日」 | 6 | 9 | 50 | |
第3問 | 古文:『木草物語』 | 6 | 8 | 50 | |
第4問 | 漢文:新井白石『白石先生遺文』 | 6 | 8 | 50 | |
2016 | 第1問 | 評論: 土井隆義『キャラ化する/される子どもたち』 | 6 | 11 | 50 |
第2問 | 小説:佐多稲子『三等車』 | 6 | 9 | 50 | |
第3問 | 古文:『今昔物語集』 | 6 | 8 | 50 | |
第4問 | 漢文:盧文弨『抱経堂文集』 | 7 | 8 | 50 |
過去の平均点の推移
2020 | 2019 | 2018 | 2017 | 2016 |
---|---|---|---|---|
116.57点 | 121.54点 | 104.68点 | 106.96点 | 129.39点 |
設問別分析