■現代文
センター試験の第一問では評論が出題されていましたが、大学入学共通テストでは「論理的な文章」「実用的な文章」、またはこれらの文章を組み合わせた問題が出題される予定です。抽象度が高く、論理力思考力が問われる評論を読み解く力があれば、「論理的な文章」「実用的な文章」の読解は容易です。センター試験の過去問を利用して読解力・論理的思考力を鍛えましょう。また、漢字・語彙といった知識事項に自信が無い人はこれらを固めることが先決です。漢字力・語彙力は、単に漢字問題や語彙問題で点を取れるようになるだけでなく、読解力を根本から支えるものになります。早い段階で漢字と語句の問題集を1冊ずつ仕上げ、それを文章読解の中で理解していく形をとりましょう。
また、「速く、読み・解く力」を付けるためには、まず設問に先に目を通して問われることを予め理解しておき、本文を読みつつ問題がきたら解くという読解法(「読みつつ解く」)を日頃からトレーニングしておくことも重要です。そして、本文を読み進めるときはただ目で文字を追うのではなく、キーワードや筆者の主張に線を引く、関連資料のポイントに印をつけておくなど手を動かすことで解答の根拠をすばやく見つけられるように学習を進めていきましょう。
大学入学共通テストにおいて、センター試験の「小説」にあたる出題は、「文学的な文章」からの出題となります。試行調査では、『幸福な王子』とそれを元にした文章の出題、詩とエッセイの組み合わせ問題が出題されました。「文学的な文章」においても複数の素材の組み合わせでの出題が想定されますが、本文を「客観的」に読むという小説の読解法には変わりがありません。感情移入をして主観的に読んでしまうと得点は安定しませんから、本文を客観的に正確に読み、事実関係と登場人物の心情をとらえきり、選択肢を要素ごとに分けて丁寧に吟味する読解法を身につけていきましょう。
また語句問題は「辞書的な意味」を答える必要があります。日頃から辞書を引く習慣をつけて語彙力を強化するとともに、詩・短歌・俳句の出題に備えて「国語便覧」などを読む習慣をつけましょう。
■古文・漢文
試行調査を見ると古文・漢文の大学入学共通テスト問題は、現代文に比べるとセンター試験との違いは少ないようです。古文や漢文は知識・基本事項の比重が大きく、身につけた知識が点数に結び付きやすい科目です。古文であれば、古典文法・古文単語・古典常識・敬語法を、漢文であれば、返り点・重要句法・漢字の用法や読み・重要語など、土台になる知識の完成度が大きなカギを握ります。これらをできるだけ早い時期にマスターすることが大切です。繰り返し確認をしながら、遅くとも夏休みが終わるまでに知識を定着させましょう。知識を身につけた後は、それを駆使してできるだけたくさんの問題を解き、解法の訓練を重ねることが必要です。安定した土台の上に、全体の時間配分に留意しながら正解を判断するスピードや要領の訓練を重ねることで、常に高得点がとれる力を身に付けることができるようになります。
夏以降は、解法と時間配分の訓練を繰り返して下さい。複数素材を扱った共通テスト対応型の模擬試験は実践演習に最適です。模擬試験は、学習の進捗度・定着度を測定・認識するという意味で大変重要です。自分の学習進捗度合いは計画通りに進んでいるかを客観的に判断するために、「全国統一高校生テスト」を含めて隔月で年6回行われる「共通テスト本番レベル模試」を定期的に受験していくことで、着実に実力をのばしていきましょう。
設問数・マーク数が昨年から1つずつ減った。評論は昨年に比べやや硬質な文章。小説は戦後初期に発表された作品が出題された。古文は過去にも頻繁に出題された擬古物語。漢文は『文選』からの五言詩が出題された。
大問数 | 減少 | 変化なし | 増加 |
設問数 | 減少 | 変化なし | 増加 |
マーク数 | 減少 | 変化なし | 増加 |
難易度 | 易化 | やや易化 | 昨年並み | やや難化 | 難化 |
大問数4題、各大問の配点50点。設問数・マーク数は漢文で昨年より1つずつ減った。
第1問の評論は、「レジリエンス」という概念の現代的意義を論じた文章。設問形式に大きな変更はない。字数は約3200字で、一昨年から減少した昨年(約4200字)より更に減少した。「レジリエンス」という概念に馴染みのない受験生はとまどったかもしれないが、筆者が豊富に具体例をあげており、論旨に従って読み進めれば、十分理解可能な内容である。問5は、生徒の会話に基づいた空欄補充問題だが、実質的には文章の内容合致問題と言える。
第2問の小説は、昨年と同じく戦時下の状況が大きく影響した内容で、病妻と魚屋の若者の死に対する「私」の内面が多く語られている。手紙文の引用をどう読むかが問われているが、慣用句の問題、表現の特徴に関する問題も例年通り出題されている。問題分量は1ページ程度減少している。
第3問の古文は、過去にも頻繁に出題されてきた物語系作品。本文の長さは過去十年の平均より200字ほど少なく、設問形式はほぼ従来どおり。擬古物語で出題されることが多い和歌の問題はなかったが、中盤の尼上の発言内容や後半の人々の様子などを正確に読み取るには精密な読解力が必要である。問2は珍しく二年続けて敬意の方向の問題であった。
第4問の漢文は、単独では古く1992年度の白居易の古詩以来、散文中に詩が入る形でも2007年度以来、久々に漢詩の出題であった。設問形式は、語の読み、返り点のつけ方と書き下し文との組み合わせ、心情説明など、例年と変わりのないものもあるが、詩のきまりの押韻の空欄補入、詩句の表現の問題に加え、図から答を選ぶという珍しい形の出題もあった。設問数は7から6に戻り、マーク数も7になった。
国語全体としては、昨年並み。
年度 | 大問 | 出題分野 | 設問数 | マーク数 | 配点 |
2020 | 第1問 | 評論:河野哲也『境界の現象学』 | 6 | 11 | 50 |
第2問 | 小説:原民喜「翳」 | 6 | 9 | 50 | |
第3問 | 古文:『小夜衣』 | 6 | 8 | 50 | |
第4問 | 漢文:『文選』謝霊運の詩 | 6 | 7 | 50 | |
2019 | 第1問 | 評論:沼野充義『翻訳をめぐる七つの非実践的な断章』 | 6 | 11 | 50 |
第2問 | 小説:上林暁「花の精」(『星を撒いた街』) | 6 | 9 | 50 | |
第3問 | 古文:『玉水物語』 | 6 | 8 | 50 | |
第4問 | 漢文:『杜詩詳註』 | 7 | 8 | 50 | |
2018 | 第1問 | 評論:有元典文・岡部大介『デザインド・リアリティ−集合的達成の心理学』 | 6 | 11 | 50 |
第2問 | 小説:井上荒野「キュウリいろいろ」 | 6 | 9 | 50 | |
第3問 | 古文:本居宣長『石上私淑言』 | 6 | 8 | 50 | |
第4問 | 漢文:李『続資治通鑑長編』 | 6 | 8 | 50 | |
2017 | 第1問 | 評論:小林傳司「科学コミュニケーション」 | 6 | 11 | 50 |
第2問 | 小説:野上弥生子「秋の一日」 | 6 | 9 | 50 | |
第3問 | 古文:『木草物語』 | 6 | 8 | 50 | |
第4問 | 漢文:新井白石『白石先生遺文』 | 6 | 8 | 50 | |
2016 | 第1問 | 評論: 土井隆義『キャラ化する/される子どもたち』 | 6 | 11 | 50 |
第2問 | 小説:佐多稲子『三等車』 | 6 | 9 | 50 | |
第3問 | 古文:『今昔物語集』 | 6 | 8 | 50 | |
第4問 | 漢文:盧文弨『抱経堂文集』 | 7 | 8 | 50 |
過去の平均点の推移
2020 | 2019 | 2018 | 2017 | 2016 |
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116.57点 | 121.54点 | 104.68点 | 106.96点 | 129.39点 |