Q.自分を偽らずにコミュニケーションをとる方法とは?
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早稲田大学大学院文学研究科心理学専攻後期課程退学。博士(文学)早稲田大学。帝京科学大学理工学部専任講師、同助教授、早稲田大学教育学部助教授、同教授を経て、2016年度より早稲田大学大学院教育学研究科高度教職実践専攻教授。『紛争解決の社会心理学』(共著:ナカニシヤ出版・1997)、『中学・高校版「総合的な学習の時間」教材研究』(分担執筆:学文社・2006)、『人間関係の心理学』(共著:誠信書房・2007)
あなたは、今はいじめられてはいないのでしょうし、今の友達はいじめなどしない人でしょう。それなら、最初は少し怖いかもしれませんが、今の友達を信頼して自分の意思や考え、感情を少しずつ現してみましょう。今はまだ、どこか安心感が持てないのだと思います。でも信頼しないままでは、いつまでも先に進めません。少しでもよいので踏み出してみましょう。自己主張をしても受け入れられることに安心できたら、大丈夫です。
人の反応を完全に予測することはできない
質問文中に猫をかぶってしまう、とありますが、最初にこれがどういう状態を指すのかを明確にする必要があります。これは、相手に合わせようと、自分の言動を決める基準を相手の反応に置いたことで、自分の意思や考え、感情で相手とやりとりできなくなってしまった状態と考えることができます。コミュニケーションには、自分を表現し、それによって自分を確認していく場であるという、大切な側面があります。
ただし、あなたの場合、過去のいじめられた経験がベースにあるので、その点を考慮する必要があります。いじめられたことのある人は、どうしても人とのやり取りに慎重になり、相手の反応が気になって、過度に相手に合わせようとしがちになります。相手の期待に合わせることを第1に考えると、相手に振り回され、疲れてしまいます。なぜなら、相手に完全に合わせたり、相手の反応を完全に予測したりすることなどできないからです。それが負担となり、人と接触すること自体を避けるようになることもあります。
いじめはいじめる側が悪い
ここで、はっきりさせておくべきことは、過去にいじめられたのは、あなたが悪かったからではないということです。いじめられた人は、しばしば自分にも原因があったのかもしれないと考えます。そう考えるには理由があります。人は自分を取り巻く世界(状況)をコントロールする必要があるからです。もし自分に落ち度があったのなら、それを修正すればいじめを受けないで済むことになります。猫をかぶって無難にやり取りするというのは、そうした中で身につけたあなたなりの対処法とみることができます。
ただし、この対処法が適切なのは、原因に関する判断が正しかったときだけです。いじめの場合、この判断は間違いです。仮にあなたの言動がきっかけだったとしても、その後のいじめは、到底それに釣り合いません。いじめは、些細な違反を口実に勝手に重い刑を科すようなもので、科すほうが明らかに悪いのです。