Q.人の目が気になって仕方がないです。どうしたら人の目を気にせずに自由に生きられるでしょうか?
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筑波大学第二学群人間学類卒業、筑波大学大学院博士課程心理学研究科単位取得退学、博士(心理学)。 茨城大学教育学部講師、准教授、教授を経て、現在は茨城大学大学院教育学研究科教授。 専門は、教育心理学・発達心理学。著書に「TK式コミュニケーション力を高めるワーク」など。
相談者の方は高校2年生なので、思春期・青年期に該当します。心理学では、この時期の発達課題は「アイデンティティの確立」だとされています。発達課題とは、人間が健全に発達するために、各年齢に応じて達成すべき課題のことです。多くの大人のみなさんは思い当たると思いますが、この時期に「自分らしさって何だろう?」とか、「自分のやりたいことは何だろう?」、「将来どうやって生きていこう?」と悩んだ経験があると思います。アイデンティティを確立するには、「自分はこういう人間だ」と自分なりに確信するとともに、その自分らしさを保ちつつ、周囲の人々から認められたり、社会の中に自分を位置づけることが重要です。
自分と深く向き合い、アイデンティティを確立しよう。
アイデンティティを確立するために、自分はどのような人間なのか、自問自答したり、他者から見た自分に関心が向くため、他人の目を気にすることは避けられません。こうした経験は、本人にとって何かとつらいでしょうが、それをないがしろにしてしまうと、アイデンティティが確立できず、やりたいことが見つからない、自分の存在意義が分からないなどの問題が将来にわたって出てくる可能性があります。
相談者の方から見ると、周囲の大人がすべてこのようなつらい体験を経て、アイデンティティを確立したのか、疑問に思えるでしょう。実際には、思春期や青年期に自分を見つめたり、他者から見て自分はどのような人間なのかについて、あまり考えないまま漫然と過ごしてきた大人も少なからずいると思います。しかし、そのような人たちは、自分と深く向き合っていないため、後々「本当にこれで良かったのか」と悩んだり、後悔する可能性が高いのです。
成長にとって必要な過程なのです。
したがって、思春期や青年期は、自分と深く向き合う必要のある重要な時期だと捉え、その一環として他人の目を気にすることはある程度避けて通れないのだと考えて下さい。また、親や教師など周囲の大人は相談者の方のような悩みを持つ人に対して、単に「他人の目を気にする必要はない」などのアドバイスをおくるのではなく、当人の成長にとって必要な経験なのだと理解し、見守る姿勢が必要です。また、時には自己理解を手助けするようなアドバイスをおくることも必要でしょう。
それらの体験を通してアイデンティティが確立できたら、生きる上での自分の価値観を持てることになるので、少なくとも今よりも他人の目を気にせず、自由に生きられるようになると思います。